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岡山種畜場講座

副業養鶏(八)
育雛(2)

川崎技師

四.育雛の準備

 1.育雛器の点検

 新しい育雛器を使用する場合は勿論のことでありますが,育雛器をはじめ育雛に必要な器具類を予め十分点検し破損の箇所を完全に修理し,温度の出工合を調査し,又希望する温度に調整が可能であるかどうかを試験して置く事が大切であります。育雛器に雛を入れて温度が上らなくてあわてる事がない様に周到な点検が必要であります。

 2.育雛器の消毒

 前年育雛した育雛舎,育雛器を使用する場合に注意を要する事は病毒の潜在であります。従って育雛舎,及び育雛器は十分水洗の上完全に消毒する必要があります。水洗しない消毒は消毒効果を低下させますから十分水洗する事が必要であります。そして消毒は育雛開始10日前に終了して準備する事が大切であります。
 消毒薬としてはクレゾール石鹸液(約30倍)クライト(1,000倍)等が一般に使用されて居ります。

五.飼料の準備

 育雛飼料は育雛開始1週間前に確保準備する様にし,又その量は1ヵ月間所要量を準備し途中で品切れになりあわてる事のない様にする事が大切であります。今100羽の育雛を基準とすると育雛配合飼料1ヵ月間に12−13貫,単味で準備する場合は玉蜀黍2.5貫,小米2貫,小麦2貫,麩3貫,米糠3貫,無機物0.5貫を必要とします。

六.育雛の基礎知識

 1.温度

 育雛に於て適切な温度を保持する事は大変必要な事であります。
 而して此の温度について考えて見ますと所謂絶対温度即ち寒暖計の示す温度と,雛自体の感ずる体感温度があります。此の体感温度が重要なのであります。
 育雛に於ける寒暖計の示す温度即ち絶対温度は大体下温度を標準とします。

 孵化後1週間   華氏95度
    2 〃 迄   〃 90〃
    3 〃 〃   〃 85〃
    4 〃 〃   〃 80〃

 次に体感温度でありますが之は換気の状態温度その他の環境条件により左右されるものであります。故に一度は温暖計により標準を知り体感温度としての良い温度は雛の状態により知るべきであります。雛は非常に鋭敏に温度を感ずると同時に反応をそのまま状態に現わすものであります。此の夫々の状態を詳細に説明する事は紙面の都合上困難でありますが要約しますと次の如くであります。
 適温の場合夜間は雛は適宜に散在し如何にも気持良くのびのびと腹部を床にくっつけて首を投げ,体を伸長し両脚を十分伸ばして丁度搗き立ての餅を千切って投げた様な状態を呈して居り,特にぐっすり寝て居る場合は一寸の物音や,明りでは起きない場合もあります。
 温度が低すぎる場合は雛はねむそうにして居るが腹を床につけず落ついて居ない。更に温度が低いと雛はお互に集って暖を取ろうとし互に潜ろうと争い,ピイピイと鳴きます。空腹の場合はピーピーと強くつづけて鳴くが温度の低い場合は如何にも寒そうに淋しそうにピイピイ弱そうに鳴くものであります。
 温度の高過ぎる場合は温源部より遠く離れて不安の状態を呈し,甚しい場合は口を開いて喘いで居ります。

 2.湿度

 温度の項にも述べました様に体感温度は湿度が非常に影響するのであります。
 育雛の場合温度に就いては過度に神経質に考えられて所謂絶対温度に拘泥し過ぎ易いのでありますが,湿度は育雛に於て非常に重要な意義を有して居るのでありまして,湿度を考慮しなくては雛の体感温度は成り立たないと考えて良いと思います。
 育雛に於て特に餌付後10日間位は湿度が不足すると発育に支障を来たします。雛は孵卵器内では70−75%位の湿度の下に発生し而して移された育雛器内の湿度が50%以下では環境の激変により体の失調を来たしますのは無理からぬ事であります。湿度が非常に不足し乾燥に過ぎる場合は呼吸器を犯され気管支カタールを起し,遂には肺充血を呈して斃死します。
 温度,飼料,換気等に不適な事が無いのに雛が落つかずそわそわとして脚は白っぽく,艶がなくなり,発育,肉付が悪く中には茫然とした雛が居り所謂肩で息をして居り呼吸困難の状態を呈して居る雛が居り,雛の餌付後の斃死は特別に失敗の無い限り餌付後10日以内に一時終るものでありますが10日を過ぎても次々とボロボロ後を絶たずに斃死雛が出る場合は乾燥に過ぎて居る場合が多いのであります。乾燥の過度は寒い時期の育雛に多く,又育雛器を2度続けて使用する場合に往々にして起るものであります。
 10日以降になると狭い器内に多数の雛を収容して居る場合は排糞,飲水のコボレの為めに過湿になり易く病菌の繁殖を促し悪性ガスを発生さし雛体の失調を来します。その状態は雛が朝より何んとなく元気が無く食欲が減退し,心配して居ると午後からは大分元気を回復し食欲も出て来る。しかし又翌日も同様の状態を呈する事があります。之は過湿と悪性ガスの影響と更に之と関聨性のある換気不良に原因するのであります。

 3.換気

 成長中の雛は特に新鮮な空気を多く必要とするのであります。而るに育雛には温度を保持する必要上育雛器を密閉し勝ちとなり換気不良になり易く之が為に雛の発育を害し或は極端な場合はガス中毒を起して斃れる場合があります。故に温度を損失しない程度に又寒冷な外気が直接雛体に当らぬ様に換気を行う事が大切であります。
 換気不良に因る失敗は外気温と育雛器内温度との温差が少い時期即ち晩春の候の育雛に多いのであります。
 換気不良の徴候としては給温,湿度,飼料その他に落度が無いにも拘らず食欲無く,不安の状態を呈し雛に活気が無く発育不良を示し前項に述べた様に午前中の状態が特に不良であります。

 4.日光浴

 雛の発育上日光々線特に紫外線はビタミンDの活用上,骨組織造成上非常に重要であります。しかし幼雛の間は過度の日光浴は刺激が強過ぎて有害であります。大体生後10日以後より最初20分位より始めて行きます。発生後3,4日以降は日光浴は絶対必要でありますから万難を排して適度の日光浴を行う様に致しましょう。しかし此の場合日射病にかからぬ様に必ず日蔭を作って置く事が必要であります。

 5.育雛飼料

 育雛用飼料は現在完全配合としてチックフードの名を以て各メーカーより売出されて居りますが信用あるメーカーの製品を厳選して購入給与すべきであります。
 育雛用飼料としては良質で栄養的に十分であること,消化の良いこと,雛の嗜好に適合して居ること,更に雛が経済動物である以上経済的な飼料であること,之等の条件を具えて居る事が大切であります。
 雛の飼料には十分の栄養がなければならぬと言うのみでは漠然とした事でありますが,雛体の肉,皮膚,羽毛,血液等その大部分は蛋白質であります。そして雛を育成して行くは所謂発育飼料として蛋白質を含む飼料が主に必要になって来ます。しかし之のみでは不備であり其の他炭水化物,無機物,ビタミンも非常に大切なものであります。
 次に夫々の栄養素を含む飼料の主なものを挙げますと
蛋白質を多く含む飼料(魚粉類,大豆粕,脱脂粉乳)
炭水化物を多く含む飼料(玉蜀黍,小麦,粟,麩,米糠,麦糠)
無機物を多く含む飼料カルシウム剤(カキカラ,食塩)
ビタミンを多く含む飼料(緑餌,肝油)
 次に育雛の飼料標準を示します。

A.幼雛の飼料標準(鈴木博士標準)
(イ)蛋白質は20%位とし,少くとも18%以下であってはならない。
(ロ)ビタミンA,Dが不足せぬ様注意すること。
(ハ)無機物の不足を補うことを忘れてはならない。
B.中雛の飼料標準(鈴木博士標準)
(イ)蛋白質の含有量は15%位で足りる。
(ロ)ビタミンA及びDが不足しない様注意する。
(ハ)無機物の不足を補うこと。

 次に飼料配合上の注意としましては
(1)可及的多種類の飼料配合すること。
 之により単味の飼料の特徴により他飼料の欠点を相互に補う必要があります。
(2)各種栄養分の均衡を保つこと。
 蛋白質,無機物等育雛飼料標準に則り過不足のない様にすること。
(3)飼料配合割合を急変しないこと。
 雛の成長は早い為に飼料の配合割合を発育に従って逐次変更して行く必要がありますが,配合割合を急変すると雛の発育を阻害するから配合割合は徐々に切替えて行く必要があります。
(4)雛の嗜好に適すること。
 前にも述べましたが,雛が好んで食べるものでないと適当な飼料とは言えず雛の嗜好に適合した種類,形態のものを用いることが大切であります。

(表)森本博士による週別の標準

週   別 1 2〜3 4〜5 6〜7 8〜10 11〜15 16〜20 20週後
飼料給与量 9g 17g 30g 45g 60g 80g 90g 100g
粗蛋白質含有率 20% 20% 20% 18% 18% 15% 15% 15%
養分総量(T.D.N.) 62%以上