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時報

風知生

試験調査

 2月12,13日の2日間に亘って,中国ブロック各県種畜場,農業試験場に於ける飼料作物,畜産に関する試験調査の成績(昭和29年実施済のもの)並びに昭和30年に実施予定している試験調査の設計の発表打合会が,中国農業試験場畜産部で開催された。
 幸い今回の会議にも農業改良局の加唐企画官が参加せられて,種々指導を賜わったことは,有難いことである。
 本会議は各県で実施せられる試験調査の重複を避け,その試験成績の正確度を高める為に,その設計を充分検討すること,亦発表した試験成績について相互に批判し,その普及化,応用化の価値あるものは,各県で推進する等の目的で例年開催せられるものである。
 要するに多大な経費と労力を要する試験調査の効率を昂める目的であって,地方種畜場の如く,試験調査を第二義的仕事としている立場としては,斯様な会議で特に試験調査の設計について,種々御指導を頂けることは,又各県の試験成績を批判し質疑を許され,自分のものにし得ることと併わせて,誠に有意義なものがある。
 さて当場で発表した試験成績は次のものであるが(四)以外のものは全て,本誌を通じて,既に御照会済みであるからその内容は割愛して,(四)の泌乳牛に対する尿素糖蜜併用効果に関する試験の成績を次号に登載して御参考に供します。

(一)人工乳に依る仔豚育成試験
(二)市乳処理工程中に於ける大腸菌並びに一般細菌の消滅に関する調査
(三)海水処理液の種鶏に対する効用試験
(四)泌乳牛に対する尿素糖蜜併用効果に関する試験(次号登載)
(五)青刈燕麦の早播2回刈栽培について特に初回年内刈取期に関する試験
(六)C・O・Oの直播,移植栽培における収量差に関する調査
(七)青刈玉蜀黍に対する混作荳科作物に関する調査
(八)青刈玉蜀黍に対する青刈大豆の混播比率に関する調査
(九)青刈玉蜀黍の畦巾が雑草繁茂に与える影響に関する調査
(十)小麦の実収,青刈兼用栽培に関する調査
(十一)秋冬作根菜類に関する調査

昭和三十年度試験調査の設計成る

 次は昭和30年に実施予定している各種試験調査の設計は次の通りであります。
 これだけの試験調査を実施するのに,これに対しての予算は特に裏付けされていません。従って乏しい他の経費の,しかもその一部を割愛して,実施する訳ですから,読者各位の御後援と御指導を鶴首しています。
 昭和30年畜産並びに飼料作物に関する各種試験調査の設計概要

(1)人工授精供用種雄牛に対する酵母給与試験

 当場で現在供用中のホルスタイン種種雄牛2頭を用い精液採取頻度が比較的多く体力の消耗を現わす2−4月の3ヵ月間を試験期間として下記飼料成分を有する酵母を供試し,これが大豆粕の代替的効果を験知する。尚試験は試験区と対照区を2回反転して実施する計画である。

供試酵母の飼料成分

水   分 粗 脂 肪 可溶無窒素物 粗 灰 分 粗蛋白質 純蛋白質
4.55% 0.75% 42.66% 6.94% 45.10% 42.26%

(2)去勢牛の経済的肥育試験

 本県南部地帯に於ては春季農繁期修了後生後18ヵ月程度の去勢牛が相当数市場に出荷されるからこれらを短期間経済的に肥育してから出荷すれば農家はより有利となるものと考えられるから当場はこれら去勢牛4頭を供試し8月下旬より12月下旬まで120日間尿素糖蜜酵母等の特殊飼料を以って大豆粕の代替として供用し飼料費の節減を図る目的で本試験を実施する。

(3)種鶏に対する酵母給与試験

 本試験は当場2年鶏以上の種鶏を100羽供用し2月−4月の3ヵ月間を試験期間として試験区には酵母を対照区には大豆粕を添加し産卵率,授精率,孵化率等を調査し酵母の大豆粕の代替的効果を知ることを目的とする。

(4)抜雄の経済的育成試験

 抜雄をブロイラーとして育成する場合に可及的生産費を節減する為に短期廃温(給温日数20日間)し幼雛バタリーに移し温源費を節約すると共に育成飼料中の高価な魚粉を生魚屑及酵母を以って一部若くは全部を置換し飼料費を節約する。供試羽数は300羽としてこれを対照区1区(慣用飼料区)と試験区2区(1区は生魚屑酵母を以て大豆粕魚粉の一部を代替し他の1区は全量を代替する)に別ち孵化後8週間を試験期間とする。

(5)多産鶏の産卵時刻に関する調査

 当場過去検定修了鶏中250卵以上の産卵鶏の産卵時刻を調査し統計処理を行い多産性と産卵時刻の相関について検牽を進めて行く調査羽数は約300羽を予定している。

(6)種雄鶏の交配日数が授精率に及ぼす影響に関する調査

 単交配で種卵採取の場合優秀なる種雄鶏を極度に利用する為には鶏の人工授精と言うことは当然考慮されるが一般種鶏家でこれを実際に応用することは事実不可能な現況であるから一群の配雌日数を適宜短縮し他群雌に配することは考慮されるべきものと思われるから当場で種卵採取最盛期たる春期8週間5群50羽の雌と雄2羽を用いこれを1週間区(1週間配雄し2週間雄を分離する)に別け夫々これらの授精率及孵化率を調査する。

(7)酸乳飲料の製法に関する試験

 酸乳飲料製造に当り購買力の関係から可及的に販売価格を低廉せしめねばならないので相当量の人工甘味剤を使用せねばならないがこの際往々製品にカゼインの凝固を来たし商品価値が落ちるから使用する原料脱脂乳の稀釈割合及び最少限度の砂糖添加量並に粘調度の強化等を究明することが必要になってくるので本試験は稀釈の為に加水する割合を原料脱脂乳の10%,20%,30%の3区に別ち各区に対する砂糖添加量を加水脱脂乳量の30%,40%,50%として粘調度賦与の為には馬鈴薯澱粉とゼラチンを夫々単用若くは混用し製品の品質を比較検討する。
 尚糖度は原料加水脱脂乳量の150%として糖度の不足は勿論人工甘味剤で補充する計画である。

(8)燻製鶏の簡易製造方法に関する試験

 最近農村に於いて燻製鶏の製造を希望するものが急増し当場においてはこれが実地指導に当っているが製造工程は時間的に亦施設の点に相当変更を制肘する欠点があるからこれらの簡易製造方法たとえばピックル液の濃度を高め漬込時間の短縮或は燻煙設備の簡易化及燻煙時間全温度の問題等改善の余地が多々あると認められるからこれらの点を種々検討して行きたい。
 尚併せて夏期に於ける製品の貯蔵についても究明して行く計画である。

(9)青刈玉蜀黍と青刈大豆の間作に関する試験

 本県南部地帯に於ける飼料作物としては青刈玉蜀黍と青刈大豆は特に重要なもので従来広く混作栽培が行われているが両作物の刈取適期から見ての生育日数は略15日程度大豆が長く且つ生育過程において大豆は旺盛な生長力を持つ玉蜀黍に圧倒され勝ちで反当栄養収量が低下すること等が混作の場合の欠点と認められるからこれらの欠点を間作栽培によって是正せられるのではないかと思われるのでホワイトデントコーン黒千石を供試し,畦巾を2.0尺,2.5尺,3尺として別ち1区2坪4区制で間作と混作の栽培試験を夫々行い両者の優劣を比較検討する。

(10)青刈大豆(三度刈大豆)の播種期並びに再生力に関する試験

 当場生産の青刈三度刈大豆は白色花系と紫色花系の2系統に分離されるからこれらの両系統について畦巾を2.5尺に別け播種期を4月15日,4月30日,5月15日とし1区2坪3区制18区で両系統の播種適期並に再生力に関する比較試験を行う。

(11)蕪菁の後作として青刈イタリアンライグラスの播種期に関する試験

 青刈イタリアンライグラスは青刈燕麦と共に当場では主要な秋冬作飼料作物として栽培しているが柔軟な茎葉は良く家畜の嗜好に適するから蕪菁の後作としてこれを栽培し相当の収量を挙げ得れば耕地の利用度を向上する為にも亦粗飼料の補充関係是正の点から見ても意義があるものと思われるから1区2坪2区制で12月15日から15日おきに2月28日迄6回に別けこれが播種適期を調査する。

(12)蕪菁の播種適期に関する調査

 前述の試験成績に小岩井蕪菁,紫丸蕪菁,桜島大根,聖護院蕪菁についての収量比較調査結果を記載したがこれは9月5日播種1月18日収穫の成績であるが後作前作の関係からして播種期の巾を拡張し各播種期別に病虫害の発生程度収量等の差異を究明することは必要と認められるから8月1日から15日間おきに4回に播種で畦巾を2.0尺として供用品種としては小岩井蕪菁,紫丸蕪菁,聖護院蕪菁の3種として1区2坪3区制で本調査を実施する。

産卵能力集合検定

 「石の上にも三年」という諺もありますが,当場産卵能力集合検定も,御蔭様で本年は一流水準の成績が挙げられる想です。と申しましても,これは検定開始以来2月末までの4ヵ月間の既往の成績から推測したに過ぎないものですから,今後の産卵如何によっては淡い一抹の幻影に過ぎない結果になるかも知れませんが,ともあれ今までの成績は本県養鶏の将来に取って愉快な話であります。
 何か都合で退庁時間後遅くまで執務をしていますと,私の部屋のつい鼻先にある道を検定鶏舎の管理者である中島君と栗山君が,軽い足取りで,明るい声で談笑しつつ宿舎に帰っている姿を窓越しに見ますと,管理者の労苦に対して,言いしれない感謝の気持が胸内に湧いて来ます。何時とはなしにペンを置き,椅子に身を深く沈め,御預かりしているこれらの検定鶏が,将来本県種鶏の改良に演んずる華々しい姿を思い浮べ,管理の苦労は決して無駄にならないと,また本県養鶏の将来はと,とりとめのない思いにふけっている自分を見出すことが際々あります。
 産卵能力集合検定事業と言うものは,産卵を抑制する環境条件を可及的に矯正,是正して,鶏の奥深く潜在している産卵性能を充分に表現せしめる為に,たとえ経済的に見れば意味のないことかも知れませんが,贅沢な飼養管理をなし,管理者の精神的,肉体的消耗を御願いすることになります。しかしその産卵成績が交配上の最も大きな指標の1つであり引いては種鶏改良の根幹の1つである事に,思いをいたすなればここに大きな意義のあることを知ります。種鶏家の中にも,この集合検定を産卵競技会的な観察をくだして,その無意味なことを述べている1−2人の方がありますが,これの方は経済的な飼養管理と言う点に重点を置いてこの仕事を見ているのではないかと存じます。多難な養鶏の将来,種鶏県として進まねばならない本県養鶏の在り方等を考えますれば,集合検定事業は益々拡充せねばならないと思います。
 さて筆は随分長いこと横路に這入りましたが,本筋にもどして,今回の産卵成績と前回のものを比較して見ますと,次の通りであります。

昭和28・29両年度に於ける産卵成績の比較

年度別 昭 和 28 年 度 昭 和 29 年 度
種類別 単冠白色レグ
ホーン種
横斑プリマス
ロック種
単冠白色レグ
ホーン種
横斑プリマス
ロック種
総数 検定羽数 179 20 199 249 40 289
産卵箇数 11,557 1,397 12,954 18,492 2,627 21,119
産卵率 70.2 71.8 70.5 82.9 68.8 79.4
95%以上
産卵鶏
該当羽数 18 2 20 56 9 65
総羽数に対する% 10.1 10 10.1 22.5 22.5 22.5
産卵箇数 1,538 170 1,708 4,817 780 5,597
85%以上
産卵鶏
該当羽数 38 3 41 119 5 124
総羽数に対する% 21.2 15 20.6 47.8 12.5 42.9
産卵箇数 3,133 249 3,382 9,836 1,260 11,096
85%未満
産卵鶏
該当羽数 123 15 138 74 26 100
総羽数に対する% 68.7 75 69.3 29.7 65 34.6
産卵箇数 6,886 978 7,864 3,839 687 4,426

 以上の成績の内容を検討すると単冠白色レグホーン種に於ては,今回のものは前回に比較して,3ヵ月間に於ける産卵率は12.7%優れて,85%以上の産卵鶏は総羽数に対して47.8%で実に約半数がこれに該当し,前回に比較し略2.2倍の増加を示していることは,誠に心強いことであって,これが主因と見られることは,出品者に於て交配が非常に巧く行われたことと,育雛技術が向上したこと等が指摘せられます。と同時に検定依頼者で組織されている研究会の積極的な本事業に対する御支援が,力強い主流となっていることを特記せねばならないと存じます。