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五月の飼養管理

乳牛

 滴るばかりの新緑と陽気を浴びて,乳牛にとって最適な月である。古毛を脱いで水々しい衣裳換えがなされる。此の時期には若草を充分給与し,兎角不足がちな鉱物質は草の中に適当な成分で含まれているし蛋白質も可成り含まれているので充分に給与しなければならない。
 農繁時期で乳牛が省みられない場合があると思うが油断は禁物です。又気候の変換時期でもあり充分な栄養を保持し体の抵抗力を附与しておかないと,種々な伝染病や疾病に侵れ易くなる。飼料の配合は其の個々の成分を検討し不足しないように考慮する必要がある。農繁期で乳牛を役利用に使う場合は和牛に準じて行うのであるが,鞍や腹帯などの装具は完備したものを選び,使役中に腹帯がゆるんで鞍がずる様な場合は,無駄な力が要り疲労が大となるので,特に注意が肝要である。
 尚使役殊に水田耕起の場合は唯肢を前に出す丈けでなく,泥から肢を抜上げる必要があるので水田の場合は引綱は肩端より10p上において腹帯に結びつける等の工夫を講ずる必要がある。
 乳牛を実験的に1日2時間づつ60sの砂嚢を引かせて(畑地耕起程度の力)5日間連続使役した結果で,泌乳の最盛期を過ぎて1日1斗程度の乳量のものでは殆んど差異が認められない。然し乍ら夏季に於ては疲労が甚だしく食欲も減退するので使役の季節を考慮する事が大切であるが仔牛の頃から馴らしておけば疲労の程度も軽減される。

養鶏

 3,4月適切な飼養管理を実施されて居れば特別な衰弱鶏も見られないのでありますが,休産鶏を見出した場合は飼養管理特に飼料の質,量を検討して見て,一時的の休産鶏か,衰弱か,或は病鶏かを見極め,不良鶏は速かに淘汰する事が必要である。
 今月は産卵に影響の大きい鶏の寄生虫について述べて見ます。之を徹底的に駆逐して鶏を好条件下に置いて産卵を促進させましょう。
 鶏の寄生虫には外寄生虫と体内寄生虫とがあり外寄生虫としてワクモ,と羽虱があり,ワクモはその繁殖力が非常に大であり,好条件に恵まれると1週間位の放任でもって莫大な数になるものでありまして,冬の間柱の割目,板の間節,棲架の割れ目等にひそんで居たワクモが気温が高くなり又適度の湿度下に於て繁殖,活動を始めるものであります。
 ワクモの害は襲来による安眠妨害,之の結果として食滞し易く餌の摂取量は減じ,又昼間休眠し活動は衰え,吸血により栄養障害を来し,産卵率の著しい低下を来します。又体の衰弱は内部寄生虫,羽虫の繁殖を助長するものであります。
 此の様に直接,間接に大いに害を与えるものでありますが,名の示す如く,湧雲の様に繁殖してからの根絶は中々困難であります。先ず発生しない内に予防手段を講じ,又発生した場合は早期に発見して根絶する事が必要であります。予防処置としては鶏舎の採光,通風乾燥について万全を期しクレオソート,石油の混合液を噴霧して置く,若し,発生した場合は鶏舎の掃除を実施し,クレオソート,D・D・Tの混合液を前記の隙間に十分浸透する様噴霧します。
 次に羽虱でありますが鶏に寄生する虱は数種あって形状は種々あり,黄色,灰色であり,吸血は特に行わないが,頸腹部,肛門周囲の軟羽の基部に寄生し,羽根,羽枝を食い荒し鶏に不快感を与え,寄生が激しいと鶏は落着かず,衰弱し産卵が減少します。
 尚その卵は寄生部の羽毛の軸に沿って生みつけられて居るものであります。駆虫としてはリンゾール,D・D・T,BHC,硫酸ニコチン等を以て出来ますから,個体検査を実施して寄生して居る場合は速かに駆虫しましょう。駆虫上の注意としては羽虱の卵は1週間前後で孵化しますから第1回駆除の時に卵が羽軸に生みつけてある時は第1回駆除後10日前後を経て更に個体検査を行い,駆除を繰り返す必要があるか否かを判定します。羽虱が認められる場合はその羽虱の産卵前に駆除を実施する必要があります。
 次に体内寄生虫としては蛔虫,条虫,盲腸線虫が主なものであります。本項に於ては蛔虫について述べます。蛔虫は幼雛,中雛,成鶏に寄生し成虫の大きさは2−2.5寸太さはマッチの軸位の虫であり,腸管に寄生し腸壁を刺激し,消化吸収を妨げ食物の栄養を奪取し鶏体を衰弱させ,又毒素を排出し鶏の健康を害します。蛔虫は一般に成鶏よりも飼養管理不良の中雛に多く被害も成鶏よりも大であります。雛の症状は食欲がある割合に元気が無く体重が段々と減じて来,腸壁の障害の為下痢症状を呈したり,所謂肉様便を排泄します。成鶏は比較的強いのですが,多数寄生の場合は食欲がある割合に栄養が悪く産卵率の低下を来します。駆虫剤としてはヘルミノック,フェノヂン等がありますから定評のあるものを選択使用します。中,大雛に於ては80日前後1回,産卵前1回駆虫を行い,成鶏に於ては少くとも年4回駆虫を実施する必要があります。
 次に鶏痘予防接種でありますが
 蚊の発生する前に鶏痘予防接種について前以て準備する事が必要であります。接種は鶏痘の発生期前約1ヵ月に施行するべきでありまして之は予防液を接種して善感した場合に於ても鶏痘に対する完全な免疫性獲得は接種後約3週間を要すると見るべきであるからであります。鶏痘予防液の必要量は成鶏0.2t,雛0.1tでありますから,羽数によって必要量を計算し必要量を連合会又は其の他の機関を通じて製造元に早目に注文して置く事が必要であります。鶏痘予防液は有効期間内のもので適切に貯蔵されたものであれば使用法を誤らぬ限り接種によって鶏痘の自然感染を有効に予防出来るものでありますから副業養鶏の方も共同購入によって接種して置きましょう。

養豚

 「目に青葉山ほととぎす初鰹」5月は青葉が目にしむ季節で4月同様家畜の飼育にはよい時です。
 農家では次第と忙しくなってきます。麦の手入,蔬菜類の手入等県北では下旬には麦刈りが始ります。そうなりますとつい忙しさにおわれ豚のことは放任され勝になりえさをやる時間もまちまちになったりします。農作で身体が疲れるでしょうが家族の一員であります豚の飼養管理はおこたらずいたしましょう。
 本月は育成仔豚の離乳時期ですし又種付によい時です。
 今種付しますと丁度9月に仔豚が生れる算様となりますので仔豚の発育や母豚の健康の上からいってよい結果となります。若し種付が暑くなってからですと寒い時分に仔が生れ育てるのに非常に手数がかかりますし,青草がないのでうまく育ちにくいものです。
 離乳は,離乳前には母豚のえさを少しずつ減らしています。仔豚を母豚から離した後仔豚の発育に大いしたさわりがないよう自然に離してやることです。そして早く餌にならし喰い込みを充分させると共に仔豚の好むえさを腹をこわさないように調理してやることです。特に蛋白質,カルシウムの不足をさせぬよう配合に注意してやりましょう。青草緑餌の多い時期ですからこれを欠がさぬように常に与えることが肝要です。気候の良い時期ですから適当の日光浴,運動を与え健康ですくすく育てることです。
 肥育用の豚を他から求めるにも本月は適当な時です。購入時よく下痢を起し易いものですから初めは餌をひかえ目にし出来ますれば購入先と同じようなえさをやり自信がついてから自分の思うえさに移してゆくことです。
 蛔虫がはびこる時ですから駆虫をいたしましょう。種付母豚も種付前に一度駆虫しておくことです。駆虫には市販のフエノチアジン製剤のヘルミノック体重1sについて0.5gをえさとねって与えると効果があります。
 自給飼料としての馬鈴薯の手入をおこたらず,又澱粉質飼料として馬鈴薯と同様豚によい甘藷苗を畠に挿し,しっかり収穫をあげましょう。