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〔畜産人寸描〕

惣津畜産課長の巻

○…よくタバコを喫う御仁である。
  十分そこそこの話の間に2本も3本も喫うことはザラ。ただし“きんし”である。
  “きんし”だからいくらでも喫うんだという見方もあるが,とこには別の抽出しから“ピース”か“ヒカリ”がお見得したりするから「カラクリ上手」というのかも知れない。

  とにかくこの御大にとってタバコを喫うことはテレかくしの一つになっているのだ。
  草生改良を必要とする頭に島打帽子をかぶること,ポケットへ手を突っ込んだまま歩くこと,みんなテレかくしなのだ。

○…だが,このハニカミ屋の御大もひとたび激するとユデダコのようになって叱りとばす。
  滅多にみられないことである。
  むしろ平常は万面朱を浴びてカラカラと肩をゆすって笑うのが印象的。

  ワイシャツ襟の白さ,ネクタイの好みなど紳士的だが,寒いときだれでもするように火鉢の縁に足を乗せたまま話をするのは庶民的。

○…若いときは自分でもいっているように放浪癖があった。
  金光中学から医者になろうと思って広島高校理乙に入ったが,在校中熱帯農業にあこがれてとうとう九州帝大農学部へ進んだ。
  卒業後も縁のないメン羊を11年間北海道でやったのち昭和18年には寺内元帥輩下の南方総軍陸軍技術中佐として活躍した。

  メン羊のおかげでアメリカ,ニュージーランド,豪州,中華民国,南洋諸島など
  大平洋沿岸諸地域をクマなく旅行した県庁きっての洋行組である。
  井の中のカワズではない。

  笠岡市出身 48才。