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牛乳の生産費調査結果公表

 昭和28年を中心にした経験ある酪農家の1ヵ年間の牛乳生産の記録を集計し,ここにその結果を公表し,参考に供したい。この種の資料としては,岡山県で始めてであるが,その為,いろいろ不完全な点も多い。29年からはもっと一般的な農家を選び,調査方法を整備して発表できる予定である。
 ここ2,3年来本県でも乳牛飼養頭数は著しく増加したが,既に昨春以来,乳価は頭打ちから最近では下落していることは周知のとおりである。酪農政策が更めて検討を余儀なくされている時,正しく調査統計に基づいて吟味することが必要であろう。
 この資料が酪農経営合理化の参考の一助ともなれば幸甚である。なお,繁煩な調査に快よく御協力頂いた関係各位並びに2調査農家の方達に厚く御礼申上げる次第である。

一.調査要領

1.調査対象農家

邑久郡長船町(旧国府島)M氏
久米郡中央町(旧三保村)K氏
 M氏は県南部の水田地帯,K氏は県北部の津山市に隣接し,採草地を有し,両氏とも多年の経験を有する酪農家である。両氏の経営概況及び家族構成は「第1表」のとおりである。

(第1表)経営概況及び家族表

区 分 M   氏 K   氏
水田 15反 16反
1.2 3.5
山林 8 30
採草地 な   し 2
飼養家畜 乳牛 成牛1頭
  子牛2頭
乳牛 成牛2頭
  子牛1頭
鶏      100羽 鶏      20羽
農業従事者 経営主,妻,父,母 経営主,妻,父,母
酪農従事者 経営主,妻,父 経営主,妻,父
子供 4人 4人
2.調査期間及び方法

 満1ヵ年間(分べんより1ヵ年間)の簿記記帳である。
M氏 自27年10月1日
   至28年9月30日
K氏 自27年7月21日
   至28年7月20日

3.調査範囲

 成牛1頭とその仔牛1頭による収入及び費用
M氏の場合 高等登録牛 体重160貫
            仔牛 5産牝
K氏の場合 普通登録牛 体重130貫
            仔牛 3産牝
 実際は「第1表」に見られるように,M氏は成牛1頭,仔牛2頭,K氏は成牛2頭,仔牛1頭,和牛3頭を飼育しているが,牛乳生産費調査の便のため,調査範囲として成牛1頭と,その仔牛1頭に分離した。

4.算出上の主な約束点

(イ)自給飼料の評価―大部分のそれは,その生産に要した生産費を基礎にした。
(ロ)家族労働費の評価はその地域の雇用労賃を基礎にした。
(ハ)成牛の廃棄価は枝肉として体重当り45%と見積った。

二.調査成績

1.収入の部

 成牛1頭,仔牛1頭でM氏の乳牛は41石5斗3升,K氏の乳牛は26石4斗8升を生産し,厩肥の生産されたものは全部自給肥料に向けられている。仔牛の生産額は,K氏のものは28年1月に兵庫県の家畜商に6万円で販売し,M氏は調査期間末の見積販売で計算したところ,収入は「第2表」のようになった。

(第2表)収入内訳表

区   分 M 氏 K 氏
 
主産物 牛乳生産額 201,056 119,553
副産物 厩肥生産額 26,805 27,050
仔牛生産額 100,000 60,000
合   計 327,861 206,603
2.費用の部

 費用の総合計を「第3表」でみると,M氏は25万4,630円,K氏は17万9,543円で,その内現金支払はM氏6万743円,K氏4万4,773円であり,自給飼料代,乳牛減価償却額,家族労働費等の費用を多く要していることになる。更に乳牛価額が高いので資本利子も高くなっている。問題は約50%を占める飼料代で,この2農家は支払が約30%で,自給飼料を多く採り入れているが(後述の飼料給与量を参考とされたい。)一般的には更に自給化の方向が必要であろうと考える。

(第3表)費用内訳表

区   分 M   氏 K   氏 備      考
支払
飼料代 45,669 25,704 別表参照
自給 86,455 59,747
132,124 85,451  
用具費 償却 4,322 1,837 M氏動力耕運機使用
建物費 償却 4,137 3,535  
家畜保険料 支払 2,565 6,400  
種付費 支払 1,950 3,200  
衛生費 支払 2,950 1,900  
光熱費 支払 620 2,112  
蓐草給与額 自給 17,640 9,513  
乳牛減価償却額 償却 34,000 17,600  
酪農組合費 支払 3,449 1,715  
家族労働費 自給 31,010 31,815 M氏 886.1時間,動耕34時間
K氏 908.3時間,能力換算なし
地代 211 311  
資本利子 16,112 10,412  
税金 3,540 3,742  
合計 254,630
(100%)
179,543
(100%)
 
内現金支払額 60,743
(24%)
44,773
(25%)
 
3.牛乳生産額

 M氏の場合実に41石5斗の生産を挙げ,その73%を販売して,14万7,805円の収益をあげ,自家飯用にも6石に近いものを利用している。一方K氏の場合は22石の一般的な生産量であり,しかも販売先(主として立地の影響)によって価格も1升当約4円安いので収益は約10万1,000円となっている。これらを販売用,哺乳用,自家用にわけてみると「第4表」のようになる。
 1升当の販売価額はM氏48円94銭,K氏45円3銭であり,K氏の販売先は津山市の東洋乳業になっている。

(第4表)牛乳の用途別生産額

区  分 M   氏 全乳量に対
する割合
K   氏 全乳量に対
する割合
販売用 数 量 20石2斗0升 73% 22石6斗6升 86%
価 額 147,805円 101,041円
仔牛哺育用 数 量 5石3斗7升 13 2石3斗5升 9
価 額
(見積)
25,239円 18,512円
(自家飲用を含む)
自家飲用 数 量 5石9斗6升 14 1石4斗7升 5
価 額
(見積)
28,012円 (乳牛哺育用に含まれている)  
総 計 数 量 41石5斗3升 100 26石4斗8升 100
価 額 201,056円 119,553円
4.牛乳1升当生産費

 「第5表」をみると,終局の牛乳1升当りの生産費(不差引副産物)はM氏が61円31銭,K氏が67円80銭を要しているので1升当年間平均販売価格,M氏48円94銭,K氏45円3銭では引合わないことになるが,厩肥と仔牛の販売の副産物価額を差引くと1升当生産費がM氏30円77銭,K氏34円93銭となる。従って相当の黒字純収益をあげていることになる。

(第5表)牛乳1升当の生産費

区     分 M      氏 K       氏
金   額 同 割 合 金   額 同 割 合
    円 銭 円 銭
飼料代 支払 11.00 17.9 9.71 14.3
自給 20.81 33.9 22.56 33.3
31.81 51.8 32.27 47.6
用具費 償却 1.04 1.7 0.69 1.0
建具費 償却 1.00 1.6 1.33 2.0
家畜保険料 支払 0.62 1.0 2.42 3.5
種付料 支払 0.47 0.8 1.21 1.8
衛生費 支払 0.71 1.2 0.72 1.0
光熱費 支払 0.15 0.2 0.8 1.2
辱草給与額 自給 4.24 7.0 3.59 5.3
乳牛減価償却額 償却 8.19 13.4 6.65 9.8
酪農組合費 支払 0.83 1.3 0.65 1.0
家族労働費 自給 7.47 12.2 12.01 17.7
地代   0.05 0.1 0.12 0.2
資本利子   3.88 6.3 3.93 5.8
税金   0.85 1.4 1.41 2.1
合計   61.31 100 67.8 100
1升当生産費
(差 引 副 産 物)
   30.77   34.93  
1升当実販売価額
(年 間 平 均)
  48.94   45.03  
5.飼料給与額

 成牛1頭,仔牛1頭の飼料給与額は「第6表」のとおりであるが,飼料年間の給与状態を自給と購入にわけてみると,購入飼料にM氏は4万5,669円,K氏は2万5,704円を要しておる。両氏の特徴としては,専用畑1反の輪作栽培と水田裏作に紫雲英と麦を栽培し,なお紫雲英を中心にサイロ詰めとしている点である。さらに主なる両氏の相異点としてはM氏は「ワラ」を給与しないで濃厚飼料の大豆粕等を給与しているが,K氏は採草地よりの生草と「ワラ」甘藷,大豆等に依存していることである。従ってM氏が35%,K氏が30%の購入飼料の価額%となって現われている。

(第6表)飼料別給与量と金額

自 給
購入別
飼 料 名 貫当単価 M     氏 K     氏
数  量 価  額 数  量 価   額



 
紫雲英(乾燥)









10 300 3,000 168 1,680
同サイロ詰 5 766 3,830 425 2,125
乾草 10 145 1,450 75.1 751
生草 3 218 654 899 2,697
青刈大豆 7 148 1,036 75.8 530.6
同えんどう 7 195 1,365
同とうもろこし 7 549 3,843 249 1,743
同えんばく 7 332 2,324
カブラ 10 115 1,150 185.1 1,851
大根葉 5 42 210
甘藷蔓 7 152 1,064 182 1,274
南京 10 17 170
ワラ






14 239.2 3,348.80
なたね 250 29 7,250
120 286.8 34,146 183.95 22,074
甘藷 38 126.15 4,793.70
大豆 300 12.54 3,762
なたね粕 120 4.3 516
脱脂乳 410升 仔牛飼育用
生乳 537升
86,455
(65%)
59,747
(70%)



大豆粕 90
麦ヌカ,米ヌカ 158.6 170.4
フスマ 217.5 110.1
大麦 2.5
食塩 5.28
コロイカル 3.205
配合飼料 13.8
ヤシ粕 1
45,669
(35%)
25,704
(30%)
合  計     132,124
(100%)
  85,451
(100%)
6.参加資本額

 資本の中心は乳牛であるが,流動資本も飼料購入をはじめ相当の資本を必要とし,この資本がなければ酪農経営も簡単にできないわけである。これら参加資本は「第7表」のとおりである。

(第7表)参加資本額内訳表

区     分 M     氏 K     氏 備     考
土地 5,850円 8,600円  
建物 71,937 23,400  
大農具 18,810 21,642  
大動物 200,000 138,000 成牛
296,629 191,642 利子率年4分
流動資本額 212,326 137,316 利子率年2分
資本合計額 508,955 328,958  
7.自給飼料の価値計算

 一般的に自給飼料の価値計算は「第8表」のとおりピイターソンの方法によったが,平均単価が8倍近くになり,相当高いので生産費計算でその原価を採用したわけである。(岡山県農政課調査資料による。)

(第8表)自給飼料における飼料価値額と費用投下額

自給飼料名 生産費を基礎
とする単価
ピイターソン方法
による単価
紫 雲 英(乾燥) 10 136
同(サイレージ) 5 11
乾草 10 67
青刈大豆 7 26
同とうもろこし 7 32
同えんばく 7 22
カブラ 10 12
大根葉 5 138
甘藷蔓 7 117
平均単価 8 62