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巻頭言

草の旬間に寄せて

惣津律士

 本年の暑さは格別であった。目下の所,台風の危険が少いようだから,このまま推移すると近年稀な豊年型になりそうである。昨年不順な天候にわざわいされて,農家の収入が減少し,それにデフレの波がひたひたと押し寄せて,未だかつてない程の深刻な世相を示している時であるので,今夏の酷暑は誠に有難い事だと思わざるを得ない。 台風と言えば先般ある人と話し合っていたときに,毎年この恐るべき台風がくる事が解っているのに,何故これに対処すべく日本人は農業経営を改変しないのであろうか。米作一辺倒の経営から脱皮して草資源を大いに培養して畜産物を安価に豊富に供給するようにしたらどんなものであろうかとの話があったが,台風対策論としての素人の考えとして一寸面白く感じさせられた。  9月5日から14日まで草の旬間が実施される。昨年から行き悩みの畜産界を見るにつけても,草の問題がひしひし身にせまる想いがする草資源に恵まれた日本で何故草が強く取りあげられねばならないのか,草に対する認識とその改良と利用が低位にある事は実になさけない限りである。  畜産経営の向上には種々条件が挙げられるけれども,重要な要素は勿論優良なる草資源の高率的利用でなければならない。  公共牧野の改良が予算化されて,毎年その実施面積が拡大されて来ているが,その後の管理の不良の為後退している牧野がないとは言えない,家畜の主たる粗飼料の在り方を忘却しては断じて畜産は発達するものではない事はげに永遠の真理である。  私達はこの週間に於て草の問題がもっともっと掘り下げて研究されると共に,草資源開発の重要性が国民一般に強く再認識させられて,国民運動として展開せられん事を切望して止まない。