ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和30年9月号 > 農業経営改善の第一歩は草地改良から

農業経営改善の第一歩は草地改良から

和気郡吉永町 高取正行

一.草地改良を始めた動機

 毎月開催している吉永町農事研究会に出席していろいろと討論研究しているうちに,有畜農業経営の必要性を認識し,有畜農業経営の必須条件の一つである飼料の自給確保が問題点となり,一般農家の飼養家畜の飼料自給を図る目的で,狭い土地における山野,河川敷,採草地の高度利用に着手した。従来これらの土地は自然のまま放任されているので,会員共同で昭和28年秋から優良牧草導入により草地改良を実行することとし,町費の補助を得て,北海道から4万余円の牧草種子を共同購入し,採算予定地約4反歩を3人で改良することに着手した。

二.事業の推進

 採草地は吉永町中央を流れる八塔寺川辺りで,自宅より約300m,細い竹が2−3mもの高さに繁り,一見した所竹の刈取,整地は容易でなかったが,同志3名,毎朝午前5時作業開始4時間作業とし,9時には暑さのため作業を中止した。8月24日整地を完了する迄1反歩当り実労働68時間を要したが,これを7人役と見積もった。刈取した竹は焼却して加里肥料の一助とした。
 土質は砂壌土、酸度検定の結果pH5.5,この土地の中和を計るため9月4日反当り消石灰30貫を散布した。

三.管理と採草量

 9月10日反当り,レッドクローバー1升,ラジノクローバー2合を混播し,下種後竹箒で軽く鎮圧した。肥料は反当り1月20日過燐酸石灰8貫,3月1日尿素2貫,5月25日尿素1貫500匁,7月8日尿素1貫500匁をそれぞれ施肥した。
 採草地の刈取は4月1日から開始し,10月20日終わったが,この収量を月別にみると次のとおり。

月   別 収   量 1日平均収量
4 月  255貫    8.5貫
5 月 775 25
6 月 540 18
7 月 465 15
8 月 341 11
9 月 300 10
10 月 160 8
2,836  

四.経営の概況と効果

 家族構成人員は9名(農業従事者2名),耕作反別は水田6反,畑2畝で,乳牛1頭,和牛1頭,山羊1頭,鶏120羽を飼育している。
 以上の草地改良による反当り効果を計算してみると次のようになった。

収入の部
 牧草代14,180円(生草2,836貫,1貫当り5円)
支出の部
 整地費2,100円 (1日300円,7人役)
 種子代620円 (レッド1升,ラジノ2合)
 肥料代1,900円 (尿素5貫,過石8貫,消石灰300貫)
  計 4,620円
差引収益金9,560円

 クローバー生草1貫当りの生産費は1円63銭となり,前記収支によると反当り収益金9,560円で,支出の整地費の2,100円は初年度に自家労力費を見積って計上しているが,次年度からは不要となるので,従って貫当り生産費はなお低廉となる。
 牧草の収量が十分効果を現わさなかったのは7月中旬より8月に至る旱魃により,枯死状態となり減収となったが,本年は旱魃対策を考えている。又消防の放水試験等の場合には特に採草地への放水を願っている。夏における旱魃対策を完全に行うことにより反当数千貫の収量をあげうると確信している。
 初春採草したものはサイロに詰込み,又はそのまま家畜に給与した所、乳牛の発育促進,山羊の泌乳量増加,和牛の肥育等に好成績をあげた。これにより年3回にわたる収入の増加と鶏の緑餌として夏期の不足時に,これをおぎなうことができ,又栄養価も高い自給飼料の影響で,自給肥料の増加をみ,本年度の稲作購入肥料は昨年の6割に節減することができた。
 地力の増進とともに米麦の増産と実に一石三鳥の効果をあげることができ,従来の自給飼料不足は解消した。草刈も毎朝10分程度でできるようになり,出勤前の三男の受持つ仕事となり,私達一家そろって農業経営の合理化に努力している。