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蒜山地方における秋冬作飼料作物の栽培

中福田家畜保健衛生所

 秋冬作のうちでもカブは8月に入れば早速播種しなければならない。9月,10月に入って播種する作物にしても,種子を外部から購入する場合は,早手廻しに用意しておかなければならない。従って秋冬作の準備は今から急いで行わなければならない。心ある農家の方々は今年の春夏作の作付設計の際後作としての秋冬作が計画されていることと思う。
 個々の作物の作り方については,少くとも酪農家は昨年1ヵ年の経験で色々と,ああすべきであった。この点は今年も益々のばすべきである。等と考えているだろうが私自身も昨年の見聞から色々と気付いた点があり後進者のシルベにもなればと,以下秋冬作飼料作物について記すことにする。
 蒜山地方と言ってもこれを構成する5ヵ町村は夫々気象条件を異にしておりその結果同一作物でも播種期,収穫期に著しい差異がみられる。従ってここでは便宜上この地方を南部と北部に分け北部は川上,八束,中和の各村,南部は湯原町とし二川村はこの両者の中間とする。
 さて,いよいよ秋冬作の個々の作物についての栽培法を述べる順序と成ったが,稿の都合上最初に各作物の栽培一覧表を表示することとする。

カブ

 秋冬作の皮切りは根菜類=カブ,ルタバガ(スエーデンカブ)=である。このうちでも一番早く播種するのはルタバガである。
 話は多少横道にそれるがこのルタバガカブは何れもアブラナ科(十字科)のアブラナ属であるがルタバガの形はカブとちがってむしろナタネやキャベツに似ており根の肉色はカブは白いがルタバガは黄橙色を帯びておる,根の形はカブはやや扁平な球形だがルタバガは花ビン形でクビがついている。ルタバガはカブより水分が少くて飼料価値が高く寒さにも強いという特色をもっているが反面生育期間がカブよりも1ヵ月位長い欠点を持っている。我々の経験からすればこの地方の寒さに決して負けないで十分な生育をする小岩井カブ,下総カブ等のカブをすすめたい。従ってルタバガについては触れないことにする。
 カブの栽培で一番に問題になるのは播種期の早晩である。播種期がおくれると如何程肥培管理に注意しても多収穫はのぞめない。その適期は8月中旬でおそくても8月下旬までであるが,南部では9月上旬までである。
 次いでの問題は間引きである。間引きを適切に行わないとカブの肥大がさまたげられる。いくら適期に播種しても間引をせずに放任しておくと播種量によって違うけれど親指から鶏卵大のカブが連鎖状となり多収穫は望まれない。少くとも本葉2−4枚の頃間引して1本立とし株間は7寸位にする。
 カブの多収穫のコツは株間を1尺にして大きな根をねらうよりは株間を7寸位にせまくして根と根の間隙がないまでにビッシリと肥大させることであると私は思っている。播種量を多くすると間引の労力が大変であるから反当り2合位の薄播として発芽を完全にさせ幼苗時代の病害虫に注意することが必要である。害虫(キスジノミムシ,サルハムシ,ヨトウムシ,アオムシ,カブラバチ)の防除は双葉の頃は0.5%,本葉1−2枚以後は1.0%のB・H0・Cがよい。

秋冬作飼料作物栽培概要

作  物  名 播   種   期 収穫期(利用期間) 播種量
(反当り)
収 量
( 〃 )
施   肥
北  部 南  部 北  部 南  部 硫安 過石 塩加 厩肥
            s
カブ 8/中―8/下 8/下―9/上 11/中−4/上 11/中−3/下 2−3合 4,000 4 6 2 500
ナタネ 9/上―9/中 9/中−9/下 4/中−4/下 4/上−4/下 3合 2,000
3,700
5 6 1 500
イタリアンライグラス 9/中−9/下 9/下−10/上 4/中−7/上 4/上−7/上 8升
5合
1,500
2,500
3 4 1 500
青刈ライ麦
ヘアリーベッチ
9/中−11/中 9/下−11/下 5/上−5/中 4/下−5/中 5−6升
3升
3,000 5 4 1 500
青刈エン麦
コンモンベッチ
9/上−9/中 9/上−10/中 5/中−5/中 5/中−6/上 5−6升
3升
3,500 5 4 1 500
紫雲英 8/下−9/上 9/上−9/中 5/上−5/中 4/下−5/中 1.5升
2升
2,500 2 5
 註 硫安は出来るだけ石灰窒素を基肥として代用する。過石も出来るだけ熔性燐肥に代替すること。追肥は畜尿を
   2−3倍に希釈して生育期間中数回に亘って施用することが多収穫のもとである。畜尿ない場合は硫安又は尿
   素を用う。

 品種は前にも述べたが普通に飼料用カブと言えば紫カブか小岩井、下総カブ等があげられる。併し前者は葉の収量が少く又寒害に弱いからこの地方では後者をおすすめする。しかし南部では紫カブでも立派な生育をする。次は畦巾の問題であるが普通2尺程度であるがカブの間作として青刈ライ麦(南部では青刈エン麦)を作付する場合は畦巾を広く少くとも2尺5寸にはする必要がある。
 記述の順序は相当いりみだれているが,これは問題の大きいものの順序に書いたわけである。しかし最後にこれからのべる肥料が決して問題にするほど重要でないという意味ではない。矢張り肥料がよく効いていると多収穫となる。即ちカブは窒素の肥効が最も大きく燐酸加里がこれについでいる。又厩肥の肥効は甚だ大であるということが色々の試験成績にうかがえる。最後はカブの利用であるがこの収穫は降雪期までに行えばよいわけである。併し,それ以前にカブの葉が寒害をうけて非常にいたむか黄褐色の葉色を呈する様になれば早目に掘取って葉と根を切り葉はそのまま家畜に与え或いは軒下等に吊して乾草とするかサイロに詰める。葉の栄養価値は赤クローバーにも匹敵するから粗末に取扱ってはならぬ。根は納屋の片隅にそのままおき厳寒時にはその上にムシロをかけておく程度で越冬が出来る。
 又一方,圃場にそのままおいて越冬さしても根が腐敗することはない。或は葉のみ切り,根を圃場においても十分越冬する。また,葉も紫カブとちがい寒害,雪害で枯死することもなく相当量の葉をつけて越冬する。
 本年の春先には圃場に放置したカブの青葉が相当の役割を果した例をしばしば見うけた。反当りの収量は一概に言えないが4,000s前後であろう。
 カブの収穫利用に際しては先ず最初に圃場のカブを坪刈りして反当予想収量をつかみ給与量を決定すべきである。
 勿論この給与量決定については,当初カブの播種時に1日給与量を基準として作付面積を決定しておくのが正当な順序ではある。
 今かりに1日15sのカブを給与するとし,11月中旬から翌年4月中旬まで5ヵ月間給与するとすれば2,250sを必要とする。従って1頭当り5−6畝のカブを栽培すればよいことになる。

青刈ナタネ(レープ)

 粗蛋白質や可溶無窒素物,ビタミン類の含量が多くて早春他の作物よりも早く利用できるものの一つである。
 即ち越冬飼料として準備した乾草,サイレージ或はカブ等は大概4月に入ると底をつくがこの頃からこのレープを利用することができる。
 ナタネの青刈りには種子の油や量は問題でなく茎葉の茂りのよいものが適当であるから,従来栽培している実取りの品種より青刈用品種を他から求めた方が得策である。
 この地方ではハムブルグの方がジャイアント・カンガルーより優れている。この他にカンランと白菜の種間雑種であるC・Oは前二者の何れよりも多収で茎葉率が高く理想である。
 播種は秋播,春播,夏播が出来,春4月中旬に播種すれば7月上中旬に反当り2,500s位,夏8月中下旬に播種すれば10月下旬から11月中旬に反当り2,000s青刈が得られる。しかし早春の利用の場合は9月上中旬,南部で9月中下旬が播種適期である。
 何れにしろ秋早く播かないと多収は望まれない。栽培は容易で畦巾2尺に反当り3合前後の種子を条播きし本葉2−3枚の頃までに株間を2寸位の千鳥に間引く。勿論,播種量が3合以下であれば間引の必要もない。幼苗時代は他の根菜類と同様に害虫の被害をこうむりやすいからB・H・Cの用意が必要で本葉1枚頃までは0.5%の粉剤を用うる。
 青刈の場合は実取りとちがって直播の方が生育もよく,又移植の労力を節約出来るが水田裏作,或は畑地でも前作の関係で直播の適期を失するときは苗床に坪当り0.5勺位の種子を播種して強健な苗を仕立てて移植することが必要となる。水田に作付するには,紫雲英の播種と同様に稲の立毛中に撒播してもよい。
 昨年のこの地方での栽培されたレープを見るに何れも肥料不足の状況で草丈は低く早く出穂開花する傾向がみうけられた。葉色が黄味がかって窒素肥料の欠乏症状があらわれると決して多収穫は望まれず且つ葉が早く硬くなるからは基肥は勿論追肥に気を配ることが増収の手段である。
 肥料は窒素は充分に施し燐酸欠乏の火山灰土壌では燐酸質肥料を相当に施す必要がある。追肥として畜尿を年があけて2−3回に亘って施用すると効果的である。
 刈取りは開花直前がその適期であるが開花期から茎の硬化が急速に進むため開花初期までには利用するように心がけるべきである。従って年が明けて春早く畜尿等の速効性肥料を施用して生育を促進させ4月中旬から刈り取りを始める。大体4月下旬までの20日間位がレープの利用期間であり南部では4月上旬から4月一杯利用出来る。
 反当り収量は刈取り時期によって可成りの相違があるが,4月上中旬頃2,000s−3,000s,下旬頃の刈取りで3,700sを得ることは困難でない。
 レープは早春早く生長するから,クローバー類或は禾本科牧草類と一緒に混ぜて播きレープを刈取りすれば冬期間の寒害がレープによって保護されクローバー等牧草の生育がよい。湯原町、二川村等で山の急傾斜面は「ハガリ」と称し夏期火入して焼畑とし根菜類を作付しているのをみうけるがこの場合レープとクローバー類を混播しておけば翌年立派な牧草畑にすることが出来る。
 4月中旬から下旬の20日間レープを家畜に給与する場合1日1頭40s給与するとすれば800sが必要で4畝歩程度の作付が必要である。

イタリアンライグラス

 いね科の牧草中代表的な1年生牧草で早春より刈取りが出来しかも再生力が強く草質は軟くて収量も多く,今後この地方で有望な青刈飼料である。
 余談となるがこの牧草は採種が容易で一度栽培すると種子が方々に飛散し翌年至る処にこれが自生する結果となり野草の草質改善の一助にもなる。
 レープと同様早春の飼料として有利なものであるが反面,細根がよく発達して植質壌土では後作のために耕起する際,細根のために砕土が困難で特に水田に作付した場合この問題がおこる。
 畑地に作付すれば4月中旬から7月上旬頃まで3回位の刈取が可能で青刈生草用としてその利用価値は高いが反面乾草用としてもすぐれている。水田の裏作として紫雲英と一緒に混播して利用してもよい。昨年この方法を行った農家も可成りあり成績がよいと聞いている,今後普及すべき作付方法と考えられている。
 播種期は北部で9月中旬から下旬,南部では9月下旬から10月上旬が適期である。
 畑地に播種する場合は畦巾2尺として反当り5−8升を広巾に播種する。この場合混播相手の荳科作物としては,アルサイククローバー,クリムソンクローバー等が考えられる。アルサイククローバーの播種量は反当り5合,クリムソンクローバーは1升である。水田の場合は紫雲英と混播するのがよくその場合の量は前者1.5升,後者1斗程度である。
 刈取り収量は4月中下旬第1回刈が1,500−1,800sから2,500s位である。
 イタリアンライグラスはこの様に畑地或は水田裏作の青刈り飼料としての他に採草地,放牧地等牧草地を作る場合に1年生作物で早春早くから生育するので他の永年生牧草と混播し初年目の生産量を補強するに用いられる。

青刈ライ麦

 当地方の雪,寒害、酸性土壌に強く最も栽培しやすい作物の一つであるが,出穂期になると茎が硬化し家畜の嗜好性が低い欠点があるがレープ,イタリアングラスに次いで利用出来又,他の飼料作物の播種期が遅延した場合の作付に適する。
 川上,八束,中和村の北部地区では青刈エン麦の作柄が不安定でこの青刈ライ麦の作付は重要であるが,南部の湯原町及び二川村では差程の必要性はないと考えられる。
 播種時期は9月中旬から10月中旬が適当であるが11月下旬頃でも極端な寒害,雪害の年を除いては播種出来る。
 秋早く播種すると年内に1回刈取りが可能である。即ち8月下旬から9月上旬に早播すると11月中旬に400−800sの青刈収量を得,更に翌春2回目を刈取ることができる。11月中旬の青刈収量は量的には少量であるが青草の不足した時期であるのでその価値は高い。この場合の刈取りは余り低く刈取りすると寒害をうけやすいから少くとも地上1寸位高刈にし更に厩肥等を刈跡にかけておくと更によい。
 普通9月中、下旬に播種したものは翌春4月下旬頃から5月中旬までに2回位の刈取りが可能で高刈にして畜尿を追肥すると再生がよく生草収量が上る。
 普通2尺の畦巾で反当り5−6升を条播するがこの際耐寒、耐瘠薄性のヘアリーベッチを混播すれば青刈生産物の栄養価値を高め又地方の消耗を防ぐことにもなる,混播する場合ヘアリーベッチは早播しないと収量が上らない。混播量はライ麦5升,ベッチ3升位である。
 青刈ライ麦は水田に稲の立毛中9月上旬に反当り8−1斗位撒播することが出来る。又,カブ作の畦間を2尺5寸位に広くしてこの畦間に9月下旬から10月上旬間作するか,カブと畦を交互にして8月に播種し11月中旬カブを掘取りしてその跡にまたライ麦を播種し早播ライ麦は11月に1回刈りを行うのも集約利用の一策である。
 或は秋に赤クローバーを播種する場合に青刈ライ麦と混播すると赤クローバーはライ麦に圧迫されて初年目は赤クローバーの多収が期待出来ないが,冬期凍害のおこる地ではこの害を防ぐことが出来る。この場合の混播量であるがライ麦の播種量が多いと赤クローバーの収量が少くなる傾向がみられる。その播種量は大凡ライ麦6升,赤クローバー1升位である。
 刈取の時期は前にも述べた如く出穂期をすぎると茎の部分が多くなり葉の部分が減少し茎は粗剛となり繊維が多くなるから開花期までには刈取りを終るようにしなければならない。
 即ち5月中頃までには利用する必要がある。反当り収量は大体3,000s程度である。5月上,中旬の20日間に亘って1日40sを給与するとすれば800sが必要で少くとも3畝歩の作付が必要となる。

青刈エン麦

 青刈エン麦はライ麦に比して出穂期が3−4週間位おそくそのためライ麦を利用したあと5月一杯これを刈取るという青刈給与計画が樹てられる。
 エン麦は茎葉が軟かく葉が多くて家畜の嗜好がまさり青刈麦類中最上のものであるが,前にも触れたように北部では作柄が不安定である。しかしこの事は前作の関係で播種期が10月以降に入る結果ではないかと考えられる。
 北部においては少くとも9月中旬までには播種すべきである。南部の湯原町においては,青刈エン麦の成育はすばらしくライ麦よりむしろこのエン麦を今後大いに伸ばすべきであると思う。9月上旬に播種すれば11月上,中旬に第1回刈取りが可能であり9月中下旬頃までに播種すれば翌春4月中旬から5月中旬に亘って2回の刈取りが出来る。なおこの南部地区では播種期の巾が広く11月上旬まで可能である。
 年内1回刈の収量は550s−750s程度である。翌春4月中旬から5月中旬に亘っての2回程度の合計刈取量は3,500s程度である。
 北部地区で春播きする場合は雪どけ後早く3月下旬頃にすれば5月下旬から6月上旬の頃刈取りが出来反当り1,500−2,000s位の生草をうる。
 青刈エン麦はライ麦と同様にコモンベッチとの混播が好ましく2尺の畦巾でエン麦5−6升,ベッチ3升を混ぜて条播きする。
 この青刈エン麦はライ麦の場合の如く南部においてカブ作の間作として畦間に10月上旬播種する事が出来るがこの場合ベッチとの混播はさけるべきである。青刈ライ麦に次いでこの青刈エン麦を給与するとすれば1日40s給与するとして800sを必要とし2.5−3畝の作付は実施すべきである。
 南部地区で青刈ライ麦の作付を行わない場合は少くとも5畝の作付を必要とする。

紫雲英

 この地方特に北部における紫雲英栽培の要点は,◎耐雪,耐寒性,耐病性品種の選定,◎早生稲の中に適期早目に播く,◎種子中の菌核の完全除去,◎田面深部迄の乾燥を計り根部の伸長発育を促進する。◎水利便利な所では冬季のかけ流しにより根雪期間を短縮す。◎吸熱物料(土壌,灰)を2月下旬−3月上旬に雪上に散布し融雪後の追肥をできるだけ速く行う。以上のとおりである。
 種子の準備──塩水選によって先ず菌核及び雑草の種子や不良種子を除く。塩水選は水1斗に塩2−2.5升で作る。次いで硬実処理として砂搗法を行う,即ち種子1升によく乾いた細かい砂2−3合を混ぜて撹拌しながら軽く20分間位搗く。このようにすると発芽がよくなる。その次には播種前夜風呂湯浸法を行って菌核を完全に殺すことが必要である。この方法は,あつ湯好きの老人など最後に入浴し,あがるときにややあつすぎる位にたいて,火をおろし,種子を入れた袋を浸し,5分位あけ蓋とし,後7時間放置する。風呂湯で種子は3倍位に膨張するから,その積りで余裕のある袋につめなくてはならない。
 前作稲──特に前作の水稲の作付から考えねばならない。即ち地方の早生品種の跡が最もよい。水田の酸度は5−5.2以上が必要で石灰は茎肥施用後7月下旬に施すとよい。
 田の準備──乾田では播種時期までにある程度湿潤を保つがよく,湿田では充分に排水をして乾かさなければならない。
 当地方の紫雲英の成否は一つに潅排水の設置要領によるといって過言でない。この潅排水溝は一般に行われている糊熟期すぎての稲株を抜き取って設けるよりは,止草後,最初から計画的に排水溝を設けて紫雲英の初期浸水の害から安全にすることがよい。
 深さ4寸鍬巾の溝を稲株の間に切り湿田においては1−2間に1本,排水の比較的よい所では4−5間おきに設ける。水田の周囲溝は稍深く丁寧に設けねばならぬ。この地方では如何に乾田であっても田の周囲及び傾斜の方向に少数の溝を設けることは排水は勿論冬季灌漑に必要である。
 黒ボク土壌は一時に排水し急激に乾燥した場合,田面に深い割れ目を生ずる,一方秋の降雨期に上部の1−2寸が泥状となり紫雲英の根部が露出したり,埋汲して枯死することもあるので徐々に乾燥を図る必要がある。
 このためには,止草はなるべく早目に丁寧に平均に行って,止草終了後一度落水して足跡等の凹みが僅かに水溜りが残る程度乾かし3−7日後浅く潅水し,その後再び落水して前より乾かし,5−7日後再び浅く潅水し,更に一度乾燥して田面を歩いても足跡がつかないようになるまで乾かして播種前日潅水して湿した後播種する。そのときの土壌の湿り具合は田面を歩くと足指の間に僅かに土が出る位がよいといわれる。
 播種期──播種の早い方がよいが稲の立毛中の稲作中播であるから早く播種出来ない。概してその地方の早生稲に稲間期間25−30日になるように播種する。従って8月下旬から9月上旬の間と言いうる。
 播種量──適量は1升−1.5升で厚播きすると発芽がよいが雪腐する場合が多い。
 根瘤菌の接種─根瘤菌の効果は非常に大きい。接種の方法は根瘤菌と一度水に浸した種子をまぜる。
 施肥──生育初期においては窒素質肥料分を必要とする。
 石灰と燐酸に欠乏した黒ボク地帯では特に石灰と燐酸の施用が必要である。
 過石の施用量は大体反当5貫,木灰なら10貫位を稲刈直後に施すがこの地方では熔性燐肥の肥効が大きい。
 なおこの場合半量を稲刈直後,残りの半量を融雪直後に2回分けて施用するのが成績がよい,また播種後2週間後に硫安2貫内外,或は下肥を50貫位施すとよい。
 湿害──冠水の害と土壌過湿による根部の害とがある。前者は生育初期1ヵ月間に特に発芽当初の10日間が著しい。
 菌核病──秋の10月中旬頃から発病し更に積雪下に拡大し,甚しいときは融雪後健康な茎葉は皆無で地面に糊状の膜をして密生して枯死しその上に黒色の米粒乃至は小豆大の菌核が散見される。
 この予防には種子の比重選,風呂湯浸法の他に冠水による方法と薬剤による方法がある。即ちこの病気は10月上旬頃から菌糸が発育し又菌核から1−数個の子器が10月下旬から11月にかけて成熟し無数の胞子を作り,これが飛散して菌糸となり紫雲英の茎葉の上皮から侵入し蔓延拡大するわけであるから子器の発生する頃3−4日間紫雲英の葉先がみえる程度に冠水し更に7−10日おきに2−3回くりかえす。又薬剤の散布による場合は子器の発生盛期から7−10日おきに反当5貫づつ3回又は10貫づつ2回風のない朝露のあるうちに散布する。
 利用──刈取りの適期は満開直前であるが一度に利用することはサイレージ用或は緑肥として利用する以外困難であるがら早目に南部では4月下旬頃から北部では5月上旬頃から家畜を繋牧する等して利用すべきである。