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県産鶏卵の伸びる道
生産者団体による共同──定期出荷

光藤健次

 業者の思惑出荷が県産鶏卵に対する阪神市場すじの不評を買い,之が価格の面にも断えず悪影響を与えている時,岡山県経済農協連合会と岡山県養鶏農協連合会とは県下の二大生産者団体として共同出荷,定期出荷により阪神市場の好評を博し,県鶏卵出荷の将来に大きい光明を与えている。

軌道にのる県経済連の鶏卵共同出荷

 県経済連では昨年11月から僅か半年ほどの間に,それまで乱脈無統制だった県下13郡市,64町村の鶏卵生産農家の盛りあがる意欲を組織化し,農協の系統を通して共同出荷,計画出荷を行い,更に経済連−全販連をルートとする鶏卵の無条件委託販売の確固たる基礎を打立てた。

(一)組織化,系統出荷に盛上がる意欲を結集

 県経済連がとった今日までの経過を見ると第一着手は昨年11−12月の津山地区(出荷関係上苫津,真庭,勝田,英田,久米を含む)であるが之は町村ごとに主要鶏卵生産部落で部落座談会をもち,販売のコツ−平均出荷,優品出荷,思惑売排除や組織の意義等について話し合った。そして生産農家の納得と盛りあがる欲求に応じて更に箱詰指導を行い,共同出荷を軌道にのせた。続いて2−3月吉備地区(吉備郡,総社市,小田郡の一部)3−4月御津地区をかためた。目下第二段の拡充強化を目ざして準備を進めている。このようにして系統出荷の実績は11月の434箱から12月932箱,1月980箱,2月1,431箱,3月2,716箱,4月3,406箱(5月は産卵率低下のため2,875箱)と飛躍的に伸びて行った。之について同連農林課の鶏卵担当主事渡辺昇氏はつぎの如く語る。自分の考を実現するため,生産農家に直接ぶつかって話し合った。話せばわかってもらえるし,又農家が一生懸命に求めていたところでもあるため,そのまま盛りあがる動きとなり力となった。「谷川のセセラギから大海へ出る姿」が鶏卵出荷の組織化,系統化に対する我々の念願であって,この流れを阻むセキやダムをつくらぬよう願っている。

(二)年間4万箱と新箱出荷を目ざす

 出荷は従来7日目出荷であったが6月から時節柄5日目出荷に改めると共に本年の出荷目標を4万箱におき張切っている。出荷にあたって古箱を使用している点が欠陥であるが之は今秋新スクモの確保と共に新箱に切替えると言う。なお現在毎回の最高出荷は県北部では勝田郡吉野の70箱,南部では吉備郡箭田の50箱である。

(三)系統出荷参加農協

 6月20日現在の県経済連共同出荷に参加の農協次のとおり。
▽津山地区−久世,勝山,上河内(以上真庭)高野,高倉,上加茂,東一宮,高田,横野,下横野,田邑,郷,香南,大崎,小田,滝尾,津山東部(以上津山,苫田)勝間田,古吉野,高取,植月,吉野,豊国(以上勝田)土居,温郷,江見,粟広(以上英田)大井,久米,龍山(以上久米)
▽吉備地区−大和,池田,日美,水内,下倉,久代,箭田,薗,岡田,川辺,清音,総社,阿曽,日近(以上,吉備,総社)山田,川西,矢掛,美川(以上小田)
▽御津地区−江与味,豊岡,長田,円城,円城南,津賀,宇甘西,宇甘東,五城,葛城,宇垣。
▽笠岡地区−六条院,陶山,高屋,青野

新箱とマーク明示により病気予防と信用向上に力を入れる

県養鶏農協連合会

 岡山県養鶏農協連合会(岡山市下石井112の5 会長池田隆政氏,副会長平本武夫氏,山上幹一氏,常務理事森谷宜寿氏,参事藤田捨雄氏)は昭和28年1月に事業を開始し,現在会員は特殊農協7組合,普通農協22組合合計29組合であるが太伯農協等7農協も既に入会決議を終り実際活動にはいっている。このほか任意組合で同連合会を利用している養鶏組合が4つある。

(一)出荷にあたり最も力を入れる伝染病予防と出荷者の責任明示

 県養鶏連現在の出荷状況は大阪向け月平均約1,000箱(3,500貫)岡山市内の病院,駅,旅館料理屋等をハケ口とする市内消化約3,000貫となっている。現在会員である普通農協中約半数は荷造用のスクモが確保できなかったため止むを得ずそれぞれの地方で商人に売りさばいているので之が共同出荷の線にのれば量的にズッと増えることになる。出荷に当り同連は(一)荷造りを新箱,新スクモ又新トレーに限定し一度鶏卵出荷に使った古箱,古スクモ等を一切使わず,更に(二)この新箱使用によりマークをハッキリ明示して出荷者の責任を明かにし,之によって(イ)ニューカッスルその他鶏の伝染病を県内に持ち込まないこと。(ロ)市場信用を高めることに最も力を入れ,県下に範を垂れている。この点市場側からも最も高く評価されているゆえんである。スクモの確保できなかった農協の鶏卵を上述の如く同連の扱いにのせていないのもこのためであって,同連本部及び各農協では今秋のスクモ確保に今から気を配っている。  集卵は5日目集卵を行っており,最高は西大寺市太伯農協の月約200箱,吉備郡真金農協の150箱で吉備郡高松農協,同加茂農協等が之に次いでいる。出荷先は大阪鶏卵株式会社一本を堅持している。

(二)飼料等の共同購入その他

 養鶏連の行っている事業には鶏卵出荷のほか之と並行して飼料,養鶏器具薬品及び図書の共同購入,機関紙の発行,食鶏処理,燻加工等がある。 イ.共同購入飼料は小麦,大麦,トウモロコシ,フスマ,大豆カス等政府払下飼料が主でこのほか日本養鶏農協連から配合飼料を入れ,又名古屋の河田商店に配合飼料の加工を委託している。飼料購入総額は年額1億円に達している。 ロ.養鶏器具では育すう器,脚帯,翼帯,計量器,トレー(鶏卵輸送用)等を又薬品ではコクシジウム薬,虫下し,消毒薬,栄養剤,抗生物質等を共同購入している。器具薬品の取扱は年500万円程度である。 ハ.図書の取扱は養鶏関係の書籍雑誌類で,機関紙としては『養鶏岡山』を発行配布している。 ニ.食鶏処理は28年5月から始め年間3,000羽を処理し鶏肉の卸小売を行っている。 ホ.燻製は本年1月に着手し現在月400−500羽の加工を行い,東横デパート阪急百貨店を得意先としている。

(三)現在会員

 本年7月1日現在会員つぎのとおり。  特殊農協=岡山県養鶏農協,岡山市養鶏農協,烏城養鶏農協,邑久養鶏農協,児島養鶏農協,津山種鶏農協,備南養鶏農協 普通農協=新山,今井,金浦,吉田,城見,矢掛,日里,大江,鴨方,金光,真金,生石,高松,横井,八浜,児島干拓,鉾立,古都,玉井,西苫田,土居,弓削 このほか入会決定の普通農協=7農協(太伯ほか6)

結び

 県下の鶏卵取扱いの個人業者が一上一下の値あがり値下がりによって急に出荷を控えたり,一度に大量を送り込んだり或は眼先の小差により消費地の末端小口業者と勝手バラバラの取引を行い,大局を忘れた眼先の思惑売りに明け暮れしているのに対し,経済連,養鶏連は共に組織の力により共同出荷,計画出荷・定期定時,平均に,一定のまとまった数量・により全販或は大阪鶏卵等本筋の大手荷受機関と取引を行っている。之がため市場側としても安心して計画販売ができる。この点岡山鶏卵の市場性高揚に大きな役割を果している。更に現に養鶏連の行っている新箱,新スクモ,マーク明記の線は今秋のスクモ確保により養鶏連,経済連共に徹底実施の計画にあるので之が実現の際は岡山鶏卵の声価は一段と高まるものと期待される。  以上両連のこれらの行き方は正に岡山鶏卵の伸びる道として県下のすみずみにまで行きわたらせ之が拡充強化を期したいものである。