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勝山便り

落合家畜保健衛生所勝山支所

 勝山と言えばその昔,女帝後桜町天皇の代,明和元年に時の三浦公が藩主として2万3,000石で封ぜられ,その後廃藩置県により大庭,真島両郡の合併になる真庭郡の中心地として今日に至っている。この地に当所が設立されて以来4年目,遂年業務も軌道にのり26衛生所中人員の点に於いても又業務内容量から言っても決して上位ではないが最大限に活動をしている。
 当所は勝山町も町はずれ町役場,検察庁,地方事務所を外れてもとの藩主三浦公の城内にぽつんと1棟、仕事の関係で殆んど出張し,自動二輪車2台で落合,美甘衛生所,津山畜産農場より保管転換を受けた精液をもって管内くまなくとび廻っている。
 人工授精も本年度は受胎率向上の為各種抗生物質の添加使用,分娩後早期発情の誘発等をテーマにして研究し度いと思っている。
 然し最近の和牛の暴落,乳価の下落により一般的に畜産熱が低調となっているが,之が飼養管理上にも相当影響しているので,これらの販路拡張と共に飼育面に於いても改善しなければならぬ点が多々あると思われる。
 以上殊更新しい話題もないので当所の寸描的な記事になったが,終りに未だ探勝の機を得られない方達に各地よりのリクリエーションの旅としての神庭の滝を大正11年刊行の真庭郡誌より原文で御紹介しておこう。
神庭の滝勝山町大字神庭の山渓にあり市街より北一里,源を星山に発し忽ち県崖の上より落下して一大奇観を呈す。高さ500尺余,幅90尺,水声とうとう雷の如く泡沫飛散して虹を生じ,瀑下の近傍に近く事を得ず。両側は山峰断崖屹立して石峙ち樹秀で時に群猿の林中に遊ぶを見るべく盛夏の候と雖も冷気人に迫りて肌に粟を生ぜしむ。遠望佳絶,真に県下第一の名瀑たり”