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農家自家用向け 畜産加工(九)
鶏肉を主体にしたドメスチックソーセージのつくり方(3)

岡山種畜場 佐藤技師

七.ボイル及び仕上げ

 燻煙が終れば最後にボイルを行う。ボイルの目的は言うまでもなく,殺菌と食味の向上とにある。鶏の燻製の場合は,ボイルを燻煙前に行ったが,ソーセージもボイルを燻煙前に行う場合がしばしばある。ドライソーセージのように普通ボイルを行わないものもある。
 ボイルの考え方としては,所謂低温殺菌を行うのであって,要するにソーセージの最中心部が摂氏63度で30分間加熱されたことになれば,その目的は達し得る。然し実際問題としては,御承知の通り食肉類は熱の不良導体でありますので,63度のお湯の中に30分間浸漬したのでは,最表層部は殺菌されても,中心部附近は殆んど未殺菌の儘で残る訳でこれはソーセージの直径が大であればある程この傾向は大である。この状態では当然中心部より悪変を起し易い。従って温度と時間をそれぞれこれよりも増加する必要がある。然し必要以上に増加すれば,逆に風味と栄養価を損することになるから,その点ソーセージの大きな直径に比例して適切に増減する必要がある。今回のソーセージは200匁詰めで,直径は平均5pであったが,ボイル温度は摂氏70度,時間は60分かけた。ただ温度は脂肪の滲出の恐れがあるから70度以上には昇らないようにせねばならなぬ。
 最初摂氏70度の湯の中にソーセージを投入すれば,ボイル釜の底部に沈み込むが,時間が経過し,肉中に次第に温度がとおって来ると,肉は膨張して比重が軽くなり,浮上し易くなる。完全に湯上に浮上って来れば,一応中心部迄充分温度がとおった証拠であって,殺菌終了と見做し得る。
 ボイルが完了したら,直ぐに冷水中に10〜20分入れ急速に冷却を行う。このようにすればソーセージの表面部が速かに凝固して良好な外観を保つことが出来る。若し室温で自然放冷を行えば表面部が不規則に収縮して著しく外観を損ずることになる。
 次に仕上げであるが冷却が終ったならば充分水切りをしてその儘冷蔵庫中に保蔵するか,又は一応新しいセロファンに包み替えて保存すればよい。この場合ソーセージ表面部の水分を乾布等で充分に拭い取っておくとよい。
 以上で鶏(瓜雄)肉を主体にして(兎肉を一部配した)ドメスチックソーセージのつくり方に就て一応当場で製造したものを中心に記述した訳であるが,なお最後の鶏肉と充填材料として澱粉,小麦粉を使用して造った製品の品質を比較検討した成績を次に記載して御参考に供したい。

八.製品の品質比較

一.調査目的

 ソーセージの充填材料肉としては結着力の相当にあるものが望ましいことは前述の通りであるが,ただ鶏肉の結着力に就ては未知であったため,前回は結着力の強い兎肉を加えて造ったが,前号で述べたように鶏肉には,兎と同程度の結着があることが判ったので,今回は,肉材料としては鶏肉のみを使用し,なお製品の経済的価格を検討するために,これに充填増量材として,澱粉,及び小麦粉を次の様に加えて,製品それぞれの品質に就て考察した。

二.調査方法

(一)充填肉材料は爪雄肉のみとし,血絞りは常法により行い,10o,3oプレートで各1回宛ミンチにかけた後,サイレントカッターに材料を移し所定の調味料を投入,ざっとねり合わせ,これを5等分し,第1表の通りA・B・C・D・Eとし,充填材料をそれぞれ所定量加え,再度別々にカッターにかけてねり合わせて,ケーシングに充填した。

(第1表)

区別
符号
充填材料及びその含率
澱   粉 小 麦 粉
20% 5%
40% 5%
20% 5%
40% 5%
5%

(二)充填後の乾燥,燻煙,ボイル等は全て常法によって実施した。

三.成績

 A・B・C・D・Eの各製品に就て切口の外観,硬度,粘度,発色,食味等を比較検討した結果は下の通りである。

区別符号 切口の外観 硬  度 粘  度 発  色 食  味
1 + ++++ ++ 2
2 ++ +++ + 4
3 +++ ++ +++ 1
3 ++++ + ++++ 3

 但し(一)切口の外観食味,容量も良好なものより,一から四の番号を付した。 (二)硬度,粘度,発色に就ては最大のものを−,最小のものを+とした。

四.考察

(一)前記成績表から考察すれば,切口の外観及び粘度はAが最も良好でB・C・Dの順になっており,硬度はDが最も硬くC・B・Aの順になっておる。このことは即ち,切口の外観,硬度,粘度の点においては,小麦粉の方が澱粉より充填材料として今回の場合は適しておることになる。
(二)発色の状況はDが最も宜しく,C・A・Bの順になっており,むしろ澱粉の方が良好である。
(三)食味に就ては,澱粉20%のCが最も良好で,A・D・Bの順になっている。  以上の成績より見て,大体次のようなことが考えられる。 イ.ソーセージの外観並びに物理的性質に就ては,充填料として澱粉よりむしろ,小麦粉の方が良好であるように考える。 ロ.食べた味は,澱粉の方が小麦粉の場合よりもむしろ良好ではあったが,何れにしてもD・Bは非常に味が悪くなっており,これにより,澱粉小麦粉を増量材料として加えるにしても20%以上の含率の場合は不可であって商品的価値は全く欠けていた。

五.結論

(一)ソーセージの主材料肉として,しわくてボイル用に不向きな爪雄鶏肉を利用することは,この肉中にコラーゲン蛋白が多く含有されているため反ってゼラチンを加えたと同様の結果となり結着力が充分に出てソーセージの物理的諸性質に好結果を来すことになる。
(二)ソーセージの材料肉として,爪雄鶏肉は結着力が充分有するので単味使用しても,支障ないが,風味を良くする為になお豚脂肪等一部加味すれば一層良好なものになると考える。又生産コストを下げるために,充填増量材として,澱粉,小麦粉を加味しても宜しくこの場合は,含率を20以上にはしないことで,先ず10〜15%の範囲内に於て,目的を達し得ると考えられる。この場合,小麦粉よりもむしろ良質の澱粉の方が良い結果を得た。但し全々充填材料を加えない,Eに比較すれば値は相当に低下するが,然し,20%のものでも硬度の点のみを今少し,例えば充填時の圧力のかけ方,水分の含率等々を工夫改良して行けば,充分可成りのものになり得ると考えられる。又今回は使用しなかったが,この外充填材料として,脱脂粉乳鶏卵等を加味すれば,一層組織の良い優秀なものになり得ると考えられる。
 以上簡略であるが,ソーセージの造り方に就ては一応終り,次回は,燻卵又は毛皮,革の鞣しに就て記載する予定である。