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巻頭言

11回県畜産共進会を迎えて

惣津律士

 10月になると例年行事として畜産共進会が全国的に花々しく開催される。この畜産の大祭はその地方の家畜の改良はもとより畜産振興に極めて大きい意義を以っているものであって,出品関係者は1年前からこの佳き日に最高の栄与を得んものと必死の努力を傾倒して来て居り,更に一般農家の方々は年と共に躍進する郷土畜産の姿を実際に見る事を年一度の唯一の楽しみにしているものである。

 畜産共進会は先ず町村から始まって郡共となり,県共が行われるのが普通であって,その開催場所は毎年移動して居る向きが多い。そして共進会が開催された土地の家畜は其後の状況を見るとたしかに改良の跡が顕著であるのは面白い現象である。経費其他の面から考えると,諸外国のように常設の畜産共進会場があった方がよい訳けだが,日本では,毎年移動するやり方も棄てたものでもないようである。又県によっては畜産を含めた農業綜合共進会の如き催しがあるようであるが,これもたしかに面白いやり方であり,研究の必要はたしかにあるものと思われる。本年の県共は10月8日から12日まで新見市で開催される事に決定した。丁度新見市制1周年の記念行事が同時に行われるので,多種多様の色模様が加味されるので,一段と盛況を呈する事だろう。

 一昨年及び昨年の県共は牛馬羊豚鶏と言うものを全部入れた綜合共進会であったが,本年は本県和牛の振興に特に重点を注ぐ見地から,和牛のみに限定し,頭数も130頭が出陳される事となって居る。

 和牛の価格は昨今漸く上昇の線をたどるようになって,ホット一息と言う所であるが,この和牛共進会によって本県和牛の真価が全国に広く再認識される事を望むや切なるものがある。本邦和牛界の名門千屋牛は必ずや大方の御期待に添うものである事を私は確信している。

 今や全国を通じて和牛振興の熱意がもり上がって来ている事は御承知の通りであって,この機をとらえて,農民も団体も,業界も官庁も心から相提携して恒久対策を樹立しなければならないものであって,和牛振興上に大きい支配力をもつ肉は一般大衆と密接につながる問題であるだけに,真剣に取り組む必要があり,現状の姿は放置出来ないものがある。

 私は共進会が単なるお祭り騒ぎに終る事なく,和牛の将来によりよい効果を齎すように,この会期に於てお互に研鑽し,一段の自信と決意をもって戴きたいものと畜産農民の方々に御願いする次第である。