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私の養鶏経営

笠岡市押撫4Hクラブ 関藤弘文

一.プロジェクトを選んだ動機

 私は笠岡市4HCの1人で23才であります。私の郷土,陶山地区は笠岡市の西北部に位し,西は広島県境に接し市内ではありますが海抜200mの高地であります。私達の地区陶山は現在笠岡市に編入されては居りますが,純農村でありまして総耕地面積240町歩其の内,水田72町歩,畑168町歩,これに対して農家戸数は500戸で1戸当り平均耕作面積は僅か4反8畝歩で耕地の70%が畑地でありまして,米麦主体の単純なる農家の集まりであります。

 従って農家収入は少なく極めて零細な農業経営でありますので,何とかしてこの経営を改善し,農業収入の増加を図り,ドン底経営より光明を見出して立上ろうとクラブ員と共に色々研究しました結果,常時現金収入を得られることと,今一つは農閑期労力及び労幼婦女子の労力活用による養鶏に着目し,昭和25年1月よりクラブの,プロジェクトとして取上げました。

 私がこのプロジェクトを実践する様になりましたのはクラブに入会しクラブ活動に関するようになってからでありまして,クラブ活動こそは私の農業経営に一転期を画するものでありました。

二.計画の樹立

 先ず私の経営の実態について申上げますと水田2反歩,畑5反歩,山林3反歩,家族労力3人,和牛1頭でありますが,これに養鶏50羽を計画致しました。

 養鶏は御承知のように濃厚飼料を必要と致しますが,然し,飼料高の今日,購入飼料のみにたよっては経営上安定性が少いばかりでなく,採算がとれません,そこで私は私の地方で適作であります甘藷利用を思い立ち,農産安定な甘藷により飼料の自給化を図ろうと,昭和25年より29年度まで,第1表のように5ヵ年長期プロジェクトとして年次別計画をたてました。

 鶏種は多産鶏の白色レグホン種を選び羽数は私の家の経営では労力配分と廃残物の利用等より考え,50羽と決定致しました。

 1年目は補助プロジェクトに,甘藷育雛を計画し,技能プロジェクトとして5ヵ年を通じ駄鶏淘汰を計画しました。

 2年目は,甘藷育雛と成鶏に甘藷飼料を計画し

 3年目は甘藷育雛,甘藷飼料,甘藷蔓利用を計画,4年目は,甘藷育雛,甘藷飼料,甘藷蔓利用,飼料自給を計画し,5年目は,甘藷育雛,甘藷飼料,甘藷蔓利用,飼料自給,酵素利用を計画致しました。

(第1表)長期プロジェクト(5ヵ年)年次別計画表
プロジェクト名 1 年 目 2 年 目 3 年 目 4 年 目 5 年 目
生産プロジェクト 養鶏 白色レグホーン種 50羽飼育
補助プロジェクト 甘藷育雛 甘藷育雛
甘藷飼料
甘藷育雛
甘藷飼料
甘藷蔓利用
甘藷育雛
甘藷飼料
甘藷蔓利用
飼料自給
甘藷育雛
甘藷飼料
甘藷蔓利用
飼料自給
酵素利用
技能プロジェクト 駄鶏淘汰 駄鶏淘汰 駄鶏淘汰 駄鶏淘汰 駄鶏淘汰

三.プロジェクトの実施

 次にプロジェクトの実施でございますが,計画については第2表に示しているように立案致しました。

(第2表)計画及びその実施表
計      画 実      施 結     果
年 月 日 項   目 年 月 日 項   目 項     目
第1年度  円 銭
25.3下旬 育雛 70羽 25.3.27 育雛 70羽 飼料代 23,090.00
飼料配合表 飼料配合表 1羽当 344.52
25.10上旬 産卵予定 25.10.3 全群産揃 総育雛費
育雛率 90% 育雛率 96% 1羽当 523.3
第2年度 25.11.1 甘藷25%配合 25.11.1 甘藷25%配合 飼料代 66,260.00
26.10.31 産卵率 65% 26.10.31 産卵率 65% 1羽当 1,325.20
第3年度 26.11.1 甘藷蔓15%配合 26.11.1 甘藷蔓15%配合 飼料代 61,380.00
27.10.31 産卵率 65% 27.10.31 産卵率 64% 1羽当 1,227.60
第4年度 27.11.1 3年同様配合 27.11.1 計画通配合 飼料代 56,500.00
28.10.31 産卵率 65% 28.10.31 産卵率 66% 1羽当 1,130.00
第5年度 28.11.1 自給飼料確保 28.10.31 計画通り行い飼料確保 飼料確保成績良好
28.11.1 自給飼料配合 28.11.1 計画通配合 飼料代 59,090.00
酵素利用 酵素飼料として給与 1羽当 1,181.80
29.10.31 産卵率 70% 29.10.31 産卵率 70%

 第1年度は育雛期間を6ヵ月と計算し10月上旬産卵を目標に3月下旬育雛70羽の計画を立て育雛飼料配合(ふ化後20日)は小麦30%,甘藷30%,糠類25%,魚粉15%の割合に行い育雛率90%を目標としました。

 実施は3月27日,70羽飼育-飼料配合は前記の通り行い,103日全群産卵-育雛率は96%でした。飼料代は23,090円で1羽当り34452銭で総育雛費1羽52330銭,第2年度は25111日より成鶏に甘藷25%を配合-261031日迄1ヵ年間平均産卵率65%を目標とし,実施に於ては2511月1日より甘藷25%配合261031日迄1ヵ年平均産卵率65%でありました。結果は甘藷利用のため飼料代が非常に軽減されまして飼料代66,260円で1羽当り1,32520銭でした。

 第3年度は,2611月より271031日迄甘藷蔓15%を配合し1ヵ年平均産卵率65%を目標と致しました。実施におきましては2611月1日より271031日迄甘藷蔓15%を配合-1ヵ年平均産卵率64%でありました。結果は飼料代が61,380円で,1羽当り1,22760銭でした。

 第4年度は,3年目同様配合とし2711月1日より281030日迄1ヵ年平均産卵率65%を目標と致しました。実施におきましては2711月1日より281031日まで計画通り行い,1ヵ年平均産卵率66%でありました。飼料代は56,500円で1羽当り1,130円でした。

 飼料自給計画は3ヵ年の体験を基にして甘藷25%,甘藷蔓15%,小麦20%,糠類20%,魚粉籾殻20%配合-飼料中の粗蛋白質15gとし70%の産卵を計画しました。

 この配合計画により,耕地面積7反歩を水稲2反歩,甘藷1.5反歩,雑穀1反歩,特用作物1反歩,果樹(緑飼)1反歩,その他5畝歩,水稲甘藷,雑穀の計4.5反歩の裏作として麦,小麦作付と作付計画を立てて実施しました。水稲2反歩より籾殻26貫を得,甘藷畑1.5反歩より甘藷1,080貫収穫,甘藷蔓1,100貫,夏季苗床後より100貫収穫計1,200貫。

 麦類4.5反歩より450貫収穫,糠類は自家用米麦300貫より得,糠類40貫,小麦50貫と,ふすま75貫と交換,計115貫。

 魚粉100貫と貝殻20貫は購入致しました。このようにして飼料を確保致しまして養鶏用として籾殻20貫,甘藷420貫,甘藷蔓300貫,小麦110貫,糠類110貫,魚粉100貫,貝殻30貫を給与致しました。

 第5年度は,鶏の様な消化器の簡単な動物にも,反芻動物と同様に高度な消化吸収を実現さすため酵素の利用を計画致しまして2811月1日より291031日まで甘藷25%,甘藷蔓15%,小麦20%,糠類20%,魚粉籾殻20%の配合飼料に酵素菌を加え酵素飼料として給与し年間平均産卵率70%を目標と致しました。

(第3表)自給飼料収穫,給与表
収    穫    表 給 与 表
種   類 数   量 数   量
籾殻 26 20
甘藷 1,080 420
甘藷蔓 1,200 300
麦類 450 110
糠類 115 110
魚粉 100 100
貝殻 30 30

 実施は計画通り行いまして年間平均産卵率70%でございました。結果は飼料代59,090円で,1羽当り1,18180銭でありました。

 酵素飼料給与の結果は,育雛初日より60日間において,生体重220匁となり標準体重(160匁)を30%も上廻る発育を示し,養鶏の大敵であります。コクシジウム症,白痢病,脚弱症等の予防となり育雛率が向上致しました。成鶏におきましては,病鶏が少く,産疲れが出ず産卵率が向上-換羽期を例年より10日短縮出来ました。

(第4表)29年度収支計算表

収入の部
品     目 数     量 単     価 価     格
鶏卵
廃鶏
鶏糞
183貫
50羽
400貫
720円
234
35
131,760円
11,700
14,000
157,460
差引純収入
1羽当 〃
63,435
1,269.70銭

支出の部
品     目 数     量 単     価 価     格
甘藷
甘藷蔓
小麦
糠類
籾殻
自給緑飼
魚粉
貝殻
420貫
300
110
115
20
180
100
30
35円
3
120
80
5
3
200
15
14,700円
900
13,200
9,200
100
540
20,000
450
計 飼料代 59,090
育雛費
労力
器具減価償却費
燃料費
50羽
182時間

513円
30

25,650円
5,460
2,000
1,825
34,935
合計支出 94,025

四.収支計算

 以上概略私の5ヵ年の計画及び実施につきまして説明申上げましたが,次に29年度の収支計算でありますが,これは第四表のとおりですが,

 収入は157,460円で,支出は59,090円,其他34,935円で,合計支出94,025円で,差引純収入は63,435円で1羽当純収入は1,26970銭でありました。

 ここに私の長期プロジェクトであります飼料自給養鶏が一応完成を見るに至ったのであります。

五.評価反省

 私は昭和25年より29年まで50羽養鶏を行い,第5表のように1年度は育雛の関係で収入はございませんでしたが,

 2年度は,45,505

 3年度は,51,345

 4年度は,63,990

 5年度は,63,435

の純収益を得た訳でございます。この様に絶えず現金収入を得ることが出来,農家経営を側面より合理化することが出来ました。

 私はこのプロジェクトの体験を基にして毎年計画,実施に織り込んで産卵率の向上,飼料の自給,酵素の利用に努力し,工夫したのでありますが,これが非常に好結果を呼びまして,現在ではクラブ員も,クラブ活動を通じてお互に手を取り合って養鶏の研究に精進しております。そして地区内では,養鶏熱が盛んとなり地区の一大産業にと発展してまいりました。

(第5表)プロジェクト年次別収入(50羽)

六.結語

 こうして私達4Hクラブのプロジェクト養鶏も私達の技術の習得と共に地区内における養鶏飼育羽数も年々増加し,昭和25年当時は地区内戸数500戸のうち,180戸が飼育し,その羽数は僅か1,500羽程度でございましたが,現在では全戸飼育し,一戸当平均20羽で約10,000羽となり,卵の産額は年間2,000万円に及び,集卵及び廃鶏の処理は農協組織を利用し地区全体が協同出荷,協同販売を行うまでになりました。そして現在では農繁期の保存食として廃鶏の燻製加工を行うべく計画致して居ります。私達はクラブ活動を通じて郷土に深く根を下した養鶏のプロジェクトを行いつつ新しい農村建設の為に懸命の努力を致したいと思って居ります。

七.将来の計画

 次に第2次5ヵ年計画としましては昭和30年度より35年度迄を一期間として,農業生産総額70万円を目標に営農設計及び農業経営簿記を記帳し合理的農業経営に向って増々精進致す考えであります。