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副業養鶏(11) 飼養
岡山種畜場 川崎技師
三.飼料
養鶏飼料として使用される各種飼料は各々栄養的に特長を具えて居ると同時に又欠点をもって居るから夫々の得失を承知して配合し全体として栄養的に均衡のとれた飼料を給与する事が必要であります。
(一)飼料の種類
鶏の飼料として一般に用いられるものを分類すると次の様になります。
(1)穀類-小麦,大麦,玉蜀黍、小米,高梁
(2)糠類-米糠,麩,大麦糠
(3)粕類-油粕,澱粉粕
(4)根菜類-甘藷,馬鈴薯
(5)動物質飼料-魚粉,生魚屑
(6)野菜類,野草
(7)其の他
(二)飼料の特徴
(1)穀類
穀類の主要成分は澱粉であって澱粉価は大体70%以上あり濃厚飼料であります。しかし一般に蛋白質の含量が少くその上含有蛋白質は動物質飼料即ち魚粉の蛋白質に比して栄養価値が低く又穀類は燐が多過ぎカルシウムが少く,ビタミンの点ではビタミンBは割に多いがビタミンCは少い。
(イ)小麦
鶏の嗜好性高く,蛋白質12%内外を含有し,ビタミンBを豊富に有し,栄養的均衡のとれた良い飼料ですがビタミンA及びカルシウム分が少い。
(ロ)大麦
栄養価値は小麦に類似して居るが,鶏の嗜好性の点では小麦に劣り殻が厚く消化し難いから挽割るか,芽出しにして与えるが良い。
(ハ)玉蜀黍
白色玉蜀黍と黄色玉蜀黍の2種類があり,黄色玉蜀黍は鶏の飼料として適して居り,他の穀類に不足し勝ちなビタミンとADを多く含有して居る。欠点としては蛋白質が量質共に劣って居る。
(ニ)高梁
外皮に相当のタンニンを含み鶏は余り嗜好しない。又外皮が硬いので挽割して給与する事が必要である。
(2)糠類
糠類は蛋白質を15%前後含有し,質も穀類よりも良く,ビタミンも割に多く飼料としては比較的欠点が少い。しかし糠類のみを主飼料として与える場合は嵩が多過ぎて摂取量の点より特に能力の高い産卵鶏及び雛には適しない。
(イ)米糠
蛋白質は平均13%であり,時々多く平均17%の高率を示して居る。米糠は古くなると脂肪が分解し遊離脂肪酸となり此の脂肪酸は消化器管を害し多量に与えると下痢を起す。
脱脂糠とは米糠より搾油した残りの糠を言い貯蔵しても変質する事が無く,多過ぎた脂肪は除かれ,蛋白質の含有量が高まって居る。しかし嗜好性は生糠が優る。脱脂の方法としてはベンヂンを用いる方法と圧搾に依る方法とがあるが,ベンヂンを用いた方が栄養劣り又嗜好に適しない。米糠にはビタミンBが多量に含有されているが,A・Dは割に少い。無機物は燐酸が多く石灰分が少い。
(ロ)麩
蛋白質は平均13%であり,脂肪分少く,醗酵の心配が無く安全な飼料と言える。
(ハ)大麦糠
之には荒糠(主として稃の部分)と仕上糠(種実外皮の部分)に分けたものと両者を混合したものとがあり,無砂搗の仕上糠は蛋白質3.7%前後で,荒糠は養鶏飼料として殆んど無価値に近い。
(3)粕類
(イ)大豆粕
大豆粕は植物性飼料としては蛋白質の含有量も多く約45%含有す。しかし大豆粕を過給すると肝臓,腎臓に障害を及ぼすから給与量は飼料総量の1割以内にするがよい。
(ロ)澱粉粕
甘藷,馬鈴薯の澱粉粕の乾燥したものは澱粉価としては穀類と糠類の中間位であるが蛋白質とビタミンが不足し,更にカルシウム分が少い。
(4)根菜類
根菜類として鶏飼料に利用されるのは甘藷と馬鈴薯であり,その成分は殆んど同じで主成分は澱粉であります。生芋は水分75%位を含み澱粉価は20%程度であり,乾燥甘藷の澱粉価は70%位であり殆んど穀類と同価を示す。しかし蛋白質は少なく粗蛋白質は1.8%位でありビタミン,無機物が少い,此の欠点は魚粉の適当な添加と緑餌の多給により補うことが出来る。
麦類と根菜類(芋類)の耕地一反歩からの収穫される栄養価地を比較すると表の通りとなり芋類は単位面積よりの熱量収穫は小麦,大麦より大であり重要飼料資源と言える。
種類 | 1反当収量(仮定) | 反当澱粉価収量 | 反当可消化蛋白質収量 |
小麦 | 2.0石 | 54.0貫 | 6.75貫 |
大麦 | 2.5〃 | 53.5〃 | 4.85〃 |
甘藷 | 600貫 | 114.0〃 | 6.0〃 |
馬鈴薯 | 400〃 | 63.0〃 | 4.0〃 |
(5)動物質飼料
(イ)魚粉
動物質蛋白質を多量に含有し,粗蛋白質平均55%であり,又その質も良好であり鶏の蛋白質飼料として欠くべからざるものであります。又無機成分としては燐酸,石灰を多く含有し,他の無機成分も相当含有し植物質飼料蛋白質の無機物の不足を量,質両方面で補い鶏の健康を維持し産卵を促進する効果があります。
魚粉の中,油を除いたものでも製造中に醗酵を起しアンモニヤ臭を呈するものがありますが之は胃腸障害を起し易いのであります。又,脂肪の多い魚粉は古くなり保管が悪いと脂肪が分解し遊離脂肪酸が出来てその為に胃腸障害を起す事が往々ありますから注意を要します。
現在悪質の魚粉が一部販売されて居り之を見分けることが必要でありますが魚粉の良否の見分け方法を認識して置く事も必要でありますので次に記します。
(A)全体の容積に対する重量が割に重いものは骨類及び他の混合物が入って居り不良であります。
(B)外観上魚粉特有の色を呈せず変色して居るものは醗酵等の惧れがあります。
(C)内部に手を挿入して見て湿潤,高温を感ずるものは水分過多か,醗酵の惧れがあります。
(D)匂いは普通,魚粉特有の芳香を呈するものであるが不良のものは刺激臭,醗酵臭を呈します。
(E)口の中に一部入れて味を見た場合不良のものは刺激味及び他の混合物のあるのを認めます。
魚粉には良質のものと悪質のものが種々あり「安かろう,悪かろう」と言うことば通り余り安いものを導入すると不良のものを入手することになり,単に蛋白質が30%台であるばかりでなく鶏体に対して悪影響を与え結論として大いなる損失になりますから,信用のおける商店より相当な価格の魚粉を購入する事が肝要であります。
(ロ)生魚屑
魚粉に比較して産卵促進の効果のあること,煮汁で味をつけ食欲を高め粗悪な飼料を使用し得ること,又割に安価であること等の利点を有して居り都市に近い地域で利用する事が出来るが遠隔の地に於ては利用不能であります。欠点としては給与量が不定になり易く,中毒の惧れがあり,又肝臓障害を起し易い点があるが此の欠点を補うためには生魚屑を煮た場合上部に浮上した脂肪を取除く事が必要であり,此の取除き完全にする為には特殊の高圧釜を使用すると完全に取除きが可能であります。又肝臓障害を防ぐ為には緑餌を十分に与え飽食さす事が大切であります。
(6)青菜類,野草
飼料の配合を完全に行った所謂完全配合飼料に於ては緑餌を給与しなくとも良いと言う事が一部に於て言われたことがありますが之は種々検討の結果誤りである事が認められ,生の野菜,野草は鶏にとって絶対不可欠のものである。即ち特殊の微量栄養素を含んで居ると言われて居ります。即ち如何に完全な配合飼料を給与しても此の外に生の野菜,野草は給与が絶対必要であり,又飽食さす事が必要であります。野菜,野草は鶏に必要な良質の蛋白質を含有し,ビタミン,無機物を豊富に含有し,野草に於ては特に若草が鶏の飼料としては価値が大であります。
養分の点から言えば荳科が最も優れ,菊科,禾本科の順になり,殊に若草,荳科の乾草(水分含有量穀類程度)に於ては穀類に優るとも劣らぬ蛋白質を含有することになります。冬期に於て青物の不足する場合は大根葉等を熱湯を通して陰干しにしたものを保存するか,大根葉,甘藷蔓をサイレージとして貯蔵するとよろしい。
(7)其の他
飼料とは趣を異にするが鶏に与える必要のあるものについて次に簡単に述べます。
(イ)貝殻
カルシウム分の鶏に必要な事は勿論の事でありまして,配合飼料中にはカルシウム剤として配合されて居り,自家配合の場合もカルシウム剤を配合するのは当然であります。カキガラ,貝殻を一定容器に入れて普段給与する事も必要であります。
(ロ)石片
鶏には土を踏ます必要があると言われて居ますが,土を踏ます意味では無く土を食べさす事が必要である事を指すのであります。鶏は飼料を筋胃で消化するので,そのために適当の小石が必要であり,之を全く与えなかったり不足すると飼料の消化率が著しく不良となり結論として飼料の不経済と言う事になるのであります。運動場のない鶏舎とか,特にバタリー鶏舎に於ては一定の容器に小石片を入れ欲するままに食べさす事が肝要であります。