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巻頭言

10月定例県会を顧みて

惣津律士

 10月の県議会は3日から18日に亘って開かれた。3月県会では知事及県会議員の改選前であったために,所謂骨格予算が成立したが,今回の県会にはそれに肉付けの予算案が提出された訳で,県民久しく待望して居た関係もあり,元気旺盛な新議員に依って大詰の日まで真剣に検討が加えられ,新聞もその様子を詳細に報告したため,近時稀に見る攻防戦が展開された。

 而し他県に比べて昨年度まで健全財政を誇っていた本県も,ついに今次予算に於て赤字3億5,000万円を組まなければならない破目に落ち入り,来年度予算案の編成を更に困難化する運命を担わしめるに到った事は遺憾であった。

 畜産関係予算は今回相当大幅に増額され,種牡牛の購入,牧野改良に必要な動力機械の設置,更にジャージー牛導入に必要な集約酪農振興の経費が本格化されたが,有畜農民ひとしく待望の岡山種畜場移転整備拡充に要する経費の一部が計上された。随って本議会に於ては畜産は実に論戦の花形として登場した訳であった。

 この種畜場移転費は本年度は取りあえず,岡山種畜場の現在の繋養種畜種禽を移動せしめるに要する経費が計上されたのであるが,種鶏部門の独立を実現する事となり,岡山市附近に養鶏試験場を設置する事となった。乳牛については南部地帯の改良に必要なる種牡牛の繋養と人工授精施設は残存されて,種牝牛及び酪農施設はあげて津山畜産農場に移動される事となり,津山を中心とする美作集約酪農振興計画の確立に資するために,その中核をなす本牧場の第一階が確立されてのである。

 そこで我々畜産人として考える必要な事は,この好機に従来の種畜場の在り方に思い切った改変を加えて,真に時代の要請する機関たらしめる事である。私は予てから国及都道府県の種畜場の姿に物足らなさを感じていた一員であって,本県の如く相当程度畜産の進歩して居る所では,どうしても試験研究を主軸として,改良増殖の一段の推進を図ると共に技術の高度化と経営の合理化と近代化を普及せしめる必要を特に痛感するものであって,その第一歩として,養鶏試験場を新設してその業務に広範性と深淵性を附与する事としたのである。いずれ近い機会に畜産全般に関する試験研究機関の構想を申上げる予定であるが,繰り返えして申上げ度いのは,本県の畜産振興に於ては旧体依然たる姿をよろしく脱皮して,高度の科学性を多分に与えなければならない事である。私は皆様と共に勇気をもって,確得したい事を念願している。