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11回岡山県畜産共進会

市制1周年記念畜産団体50周年記念

新見市で盛大に開催

  第11回岡山県畜産共進会が,去る10月8日から同12日まで5日間,新見市の新見家畜市場で盛大に開催された。今年は都合により和牛のみの出品で,県主催,新見市,阿哲畜連協賛,岡山県畜連後援で行われたが,共進会と同時に市制1周年記念及び畜産団体50周年記念の行事が期間中盛大に行われたので,新見市においては近年にない人出で期間中賑った。

 10月8日は開会式に引続き,個体,総体,審査が行われ9日,10日は引続き総体,比較審査が行われた。11日は池田氏夫妻を迎えて,午後入賞順位が発表され,新見農業高校々庭で一般に展示したが,同日は共進会期中最大の人出で,人と牛が入りみだれ,和牛の調教,ゴバン乗,橋渡り,阿波踊りなど盛沢山の行事に観衆はわき,終日賑った。

 12日は午前10時から新見家畜市場で上位入賞牛の展示が行われ,引続き11時から三木県知事,曾我県農地経済部長をはじめ県議会,経済部委員,その他来賓,出品者ら多数の出席を得て褒賞授与式が挙行された。

 開会についで三木会長(知事)挨拶,土屋協賛会長(新見市長)挨拶の後,大川審査長(畜産局技官)から審査報告があった。

 次で浅越県議会議長(中田議員代読),大河県畜連会長,羽場町村長会長,宮崎阿哲畜連会長など来賓祝辞があり,三木知事から農林大臣賞,県知事賞,優勝旗をはじめ,各種団体から賞状,賞品,優勝旗などが授与された。

 この席上,優良家畜商三氏が表彰状が大河組合長から贈られ,最後に受賞者総代答辞があって5日間の幕をとじた。

 なお共進会期中には新見市制1周年記念行事及び畜産団体50周年記念行事が盛沢山に行われた。

審査報告

 第11回岡山県畜産共進会の審査が終了いたしまして,ここに審査の概況を御報告申上げますことは私の最も光栄とするところであります。今回の出品家畜は16ヵ月以上,30ヵ月未満の登録。又は登録資格の牡,25点,牝,81点と,加えて本年第1回の試みである祖母,母,仔3代を1組とする。系統9組でありまして,これ等について御説明申上げます。

一.審査方針

 全国和牛登録協会黒毛和種審査標準により,特に,岡山県産牛の特質をのばし,欠点を補うため,既定方針に基きまして,次の点を改良の重点として,審査を行いました。

(一)品位に富むこと。

(二)資質の良いこと。

(三)発育良好で,然も体積に富むこと。

(四)乳徴の良いこと。

(五)肢蹄の良いこと。

系統牛につきましては,体型に重点をおき,祖母,母,仔3代の近似性及び血統並に,繁殖成績を考慮して,審査いたしました。

二.出品区分

 今回の出品を郡市団体別に見ますと,牡におきましては,阿哲新見の17点を筆頭に,吉備総社,川上の各2点,御津,苫田津山,勝田,久米の各1点であり,牝におきましては吉備総社の15点,阿哲新見の13点,都窪倉敷の11点,阿哲新見の13点,都窪倉敷の11点,上房高梁の7点,苫田津山,勝山の各5点,赤磐,真庭の各4点,御津,児島玉野,小田笠岡,川上の各3点,後月井原,久米の各2点,浅口玉島の1点であり,系統牛は,阿哲新見,真庭の各3組でありました。

 次に出品の産地別を見ますと

 牡では,阿哲新見の20点,川上,苫田津山の各2点,真庭の1点,牝では,阿哲新見の37点,真庭の16点,苫田津山の9点,上房高梁の6点,勝田の4点,川上,久米の各3点,小田笠岡,後月井原,岡山の各1点,系統牛は,阿哲新見の12点,真庭の9点,上房高梁の5点,川上の1点となっています。

三.一般概況

 今回の出品は,市町村並びに各郡共進会を経て,厳選の上出品されたものでありまして,優劣の差極めて僅少であり,特に本年におきましては,従来に比し,体型,資質が均一して,その成績が普通化したことは,本県和牛改良の実績が一段と飛躍したことを示すものであり,中でも牡は,その個体差が著しく僅少でありましたことは,特に注目すべきものがあるのを認めました。

四.細部所見

 これを細部について見ますと,発育良好にして,体積に富み,背腰,肋腹並に.資質に向上の跡が,顕著なものが認められます。然し岡山県和牛の特質とする品位並に,胴伸びに乏しく,肩の附着の弛いもの等が見受けられ将来改良上,特に,留意を要する点であります。

 牡牛におきましては,一般に発育がよく,資質,肢蹄は美点として挙げられますが,体高の割に,体の各部の均合い特に,胴伸びの不足するもの,乳徴並に,顔の鮮明さを欠いでいるもの等を見受けられました。

 牝牛におきましては,発育良好,背腰,肋腹,乳徴等は良好と見受けられましたが,和牛として体格が,寧ろ過大に失するもの,毛色のうすいもの,被毛の粗いもの,腿の充実と肢勢が悪いために歩様に難点のあるもの,尾根部の附着の高いもの等が見受けられましたことは,今後特に注意を要する点と存じます。

 系統牛につきましては,本年第1回の試みで,出品が憂慮されましたが,比較的良いものが揃っており祖母,母,仔3代に亘る。遺伝的形質を継承し,よく似通った出品が見受けられ,その繁殖成績においても毎年連産し,その産仔成績においても毎年連産し,その産仔成績は優良なるものが多く,然も母体の崩れていないものが認められました。然しながら,管理の不充分のため,肢勢に難点が認められたことは遺憾に思いました。

五.短評 

 次の上位入賞のものについて,短評を申上げますと,牡の18号は乳徴,尾根部に僅かに難点を認めましたが,輪郭鮮明,品位に富み,資質良好で,体上線の直いことは出品牡中随一でありましたので,これを首位にいたしました。

 牡の8号は,発育良好にして,体積,牡相に富んでおりましたが,胴伸びに欠け,体の緊実性に乏しい感がありましたので,これを第2位にいたしました。

 牡の6号は,資質良好,体躯緊実し,輪郭鮮明でありますが,肢蹄弱く,牡として体積に乏しいと認めましたので,これを第3位に入賞いたしました。

 次に牝につきましては27号は被毛並に,後躯に難点はありますが均称,体積に富み,肢蹄歩様も良く,中躯並に前躯の形状は極めて良好でありましたので,これを首位といたしました。

 45号は輪郭鮮明,品位に富み体が良く緊実しておりますことは,出品牛中他の追従を許さないものでありますが,皮膚被毛に難点を認め第2位と致しました。

 33号は体の均称を得て,背腰,肋腹の形状良く,体の緊実は認められますが被毛,後躯及び品位に欠けておるため第3位に致しました。

 次に系統牛につきましては,6号の祖母は稍々見劣りはありますが母,仔共に品位に富み体型良好にして,特に背腰肋腹は良く資質も亦良好で,遺伝力もよく表現しておりました。繁殖成績についても,祖母及び母共に連産し,然もその産仔成績も極めて良好でありますため,これを首位といたしました。

六.将来改良を要する点

(一)本県産牛の欠点と認められます発育,体積につきましては相当改善せられつつありますが,体高の割合に体の伸びを欠いだものが通有的に認められましたことは,将来特に注意を要する点であります。

(二)資質の点につきましては,本県産牛の改良の重点として指摘してきましたところ,漸次向上の跡が認められますが被毛,皮膚の状態におきまして今後一層の改善が望まれます。又品位特に、顔品は本県産牛の特質とするところでありますが,今次の出品を通じまして,稍々失われつつあることが見受けられますので,資質と併せて注意を要する点であります。

(三)昨年も指摘されております。肢蹄につきましては、一般に良好と認められましたが,削蹄技術,運動,調教等の不充分のため,肢勢の正しくないものが散見せられましたので不断の努力を望みます。

(四)一般概況で指摘しました体型,資質の点では優劣の差が僅少となってきましたことは改良の実績を示すものでありまい。将来は出品牛の遺伝的構成,即ち系統の点についても,充分考慮を払われまして,種畜を選定することが必要であります。

七.結言

 これを要するに,今回の出品は前述した通り,今なお改善の余地がありますので,これ等の欠点を改め,長所を助長し更に種牡牛を厳選して,将来益々,岡山県産牛の改良に一段と御努力下さいますことを切に希望いたします。

 最後に出品者並に関係各位の絶大なる御協力を感謝し,私の審査報告を終ります。

 以上審査の成績によりまして牡牛におきましては

 1等   1点

 2等   4点

 3等   9点

 4等   10

牝牛におきましては

 1等   5点

 2等   14

 3等   25

 4等   37

系統牛におきましては

 1等   1点

 2等   2点

 3等   3点

 4等   3点

褒賞授与せられますよう謹んで申請致します。

 昭和301012

   第11回岡山県畜産共進会

     審査長 大川忠男

  一等賞授賞名簿
   第一部 黒毛和種々牛
          牡 の 部
出品番号 名    号 生年月日 血         統 産地 出  品  人
18 吉  国
54 犢阿181
29.2.20 第十神福
黒1432
第六かみひろ
本黒3020
新見 新見市石蟹郷
川 添 賢 吾
8 第十三 宝 山
54 犢126
29.4.12 第十神福
黒1432
第三はつはな
本黒28
阿哲 新見市上市町
坂 井 順 市
          牝 の 部
27 たけい一
54 犢川311
29.2.25 中 山 四
黒2134
いしゐ
黒94451
川上 川上郡川上町
龜 怐@俊 寿
45 第十一おほまき
54 犢阿185
28.12.18 第六清国
黒78
第五おほまき
本黒9053
阿哲 新見市千屋
嘉 寿 米 蔵
33 第四おゝさ
54 犢阿237
29.2.5 浅  山
黒2395
よしなか
予岡13737
阿哲 倉敷市水江
平 松 利 夫
5 第五はなふみ
54 犢真1078
29.5.20 第三広泰
黒1838
はなふみ
本黒11392
真庭 総社市三須
小 林   勇
9 ことぶき 29.5.10 宮  栄
黒1845
さつき一
本黒2110
苫田 苫田郡加茂町
岡 崎   博
   第二部 黒毛和種系統牛
6 みやわき一
本黒2171
18.7.5 第二仙貫
予岡323
をかみや
予岡3737
阿哲 新見市草間
福 永 末 蔵
6の2 ながをか三
黒5333
24.2.28 吉  花
本黒1024
みやわき一
本黒2171
阿哲 新見市草間
長 岡 敏 夫
6の3 第十ながをか
54 犢阿2208
29.11.29 清  谷
黒2614
ながをか三
黒5333
阿哲 新見市草間
長 岡 敏 夫
   団 体 優 勝
  優  勝   第11回岡山県畜産共進会優勝旗一旒
                阿哲郡畜産販売農業協同組合連合会
  優  勝   岡山県畜産農業協同組合連合会優勝旗一旒
                阿哲郡畜産販売農業協同組合連合会
  郡市別授賞点数表
系  統  牛
1等 2等 3等 4等 1等 2等 3等 4等 1等 2等 3等 4等
御津 2 1 1 4
赤磐 1 3 4
児・玉 3 3
都・倉 1 3 7 11
浅・玉 1 1
小・笠 3 3
後・井 1 1 2
吉・総 1 5 5 4 1 1 17
房・高 1 3 3 7 1 1
川上 1 2 1 1 5 1
阿・新 1 1 4 7 2 3 7 5 30 1 1 1
真庭 1 2 1 4 1 2
苫・津 1 1 2 1 1 6
勝田 1 3 1 1 6
久米 1 1 1 3
5 14 25 37 2 4 9 10 106 1 2 3 3

会長挨拶

 本日ここに第11回岡山県畜産共進会の審査を終了し褒賞授与の式典を挙行するに当り一言御挨拶を申上げることは私の最も欣快とするところであります。

 今回の共進会は,和牛のみに限定した所謂和牛祭ともいうべき畜産の祭典であり,しかも岡山牛発祥の中心地である新見市において,市制1周年行事と期を一にして開催しました事はその意義又ひとしお深いものを感ずるのであります。

 御承知のとおり畜産が農業振興上不可欠の要素であることは今更申上げるまでもありませんが,特に和牛に於ては,本県は,古来名牛の産地として頭数に於ても又資質に於ても全国を通じて優位性をほこり毎年2万余頭を県外に移出して声価を博して参っております関係から,実に和牛は本県畜産の大宗をなすものでありまして,之が消長は,農業経営の安定に至大な関係をもつものであります。

 しかるに昨年来デフレ其他の影響に依って牛価は著しい低落を示して参りまして農業経済に相当の影響を与えましたために,県は関係団体其他の協力のもとに之が対策に必至の努力を傾倒して参りました結果近時やや好転の傾向が見られるに至りました事は御同慶に堪えませんが,これを機として和牛振興の根本施策を強力に推進する事の必要を痛感するものであります。

 かような見地から県は,優良種雄牛の設置を促進すると共に,生産物の消流の円滑化と草地の改良に一層の努力を傾倒いたし度いと存じますが,更に共進会の開催に依り,本県和牛を全国に広く紹介すると共に,飼育農家の各位に斬新な気を与える事は和牛振興上極めて重要な意義を有するものでありますので,今回は特に和牛のみに限定した共進会を開催するに至ったのであります。

 各位はこの機会に於て,和牛の将来の在り方についてお互に研鑽せられ本県和牛の美点を保持すると共に欠点を補正して真に社会の要望する和牛造成に御精進あらん事を心から念願する次第であります。

 終りに開催に当りまして,当新見市は勿論,阿哲郡畜連その他関係町村並びに各種団体におかれましては,経済事情の極めて困難の折柄にも拘らず物心両面に絶大なる御協賛を賜わりました事に対し,敬意と謝意を表すものであります。

 茲に一言蕪辞をのべて御挨拶と致します。

 昭和301012

  第11回岡山県畜産共進会長

    岡山県知事 三木行治

祝辞

 第11回岡山県畜産共進会褒賞授与式にあたり一言お祝いを申し上げたいと存じます。

 畜産が農村の振興と農家経済の安定のために果す役割は実に大きいものがあるのであります。

 戦後疲れ切った農村の建てなおしのために畜産の振興奨励が全県的に大きく取り上げられてより今日まで10年の才月を経たのであり,本共進会の開催も11回を迎えたわけでありますが,この間飼育者はもちろんの事,畜産業の指導者ならびに酪農関係団体の方々のたゆまない御努力によって,今日畜産岡山の名が全国に知られるようになり,年とともに隆盛に向いつつありますことは慶賀にたえないところであり,これら関係者の御苦労に対し深甚なる敬意と感謝をささげるもので御座います。

 とりわけ本日特に優秀なる成績をもって表彰された方々には衷心よりお悦びを申し上げ,日頃の御丹精に感謝いたすと共に,愈々御自愛の上折角斯業の発展のために一層の御精進を願ってやまない次第でございます。

 終りに本共進会の円滑なる運営のために,日夜をとわず御尽力いたされました出品者並びに関係者各位の御努力に対しお礼を申し上げ今後の畜産業の愈々御隆昌ならんことをお祈りいたして私の祝辞といたします。

 昭和301012

  岡山県議会議長

    浅越和夫

祝辞

 近年稀れに見る豊穣の秋を迎え,第11回岡山県畜産共進会が盛大に当地に於て開催され,本日茲に盛況裡に褒賞授与式が挙行されました事は地元畜産連合会と致しましては此の上なき欣快事であり,阿哲畜産史上に特筆すべき一大慶事でありまして県当局の御英断と県畜連の御支援を戴き関係団体,出品者各位及び協賛会新見市,阿哲郡各町商工会,市町村農協有志各位の絶大なる御援助と御協力の賜物でありまして感謝感激に堪えません。

 茲に深甚なる謝意を表する次第であります。申しあげる迄もなく畜産は農業経営上絶対不可分の産業でありまして,これを最高度に育成改良する事は最も重要なる事柄であり,これが改良増殖を図ることは現下農村不況に対し取るべき最も身近な問題でありまして,本共進会の意義も又是に有ると思考されます。山岳僻地の当新見市に県下優秀なる和牛を一堂に集め比較検討する機会を御与え下さると共に岡山県知事を始め県議会,関係諸団体各位の御来臨を辱うし,一段の御光栄を御添え下さいまして,時恰も新見市制1周年盛儀の最中,本阿哲畜産団体50周年の記念日に当り此の盛況を得ました事は誠に感激に堪えない所でありまして,関係各位に対し謹んで厚く御礼申し上げます。

 本共進会を御引受けしました本連合会と致しましては地元新見市及び阿哲郡各町村並びに商工会,農業協同組合一体となりまして相謀り日夜諸準備の完成に意を注ぎましたが意至らず,数限り御不便御迷惑を御掛け致し特に出品者各位には長期間の御労苦,然も山間草深き当地に於て万端の御世話も出来ませんでしたが深い御理解と御協力を賜わりました事に対し重ねて御礼申上げますと共に深く御詫び申し上げる次第であります。御承知の通り本連合会は創立50年に当り名牛阿哲牛の生産地と致し益々改良増殖に献身の努力をはらいますと共に岡山牛の名声を益々発揮し,国家経済に寄与すべく最大の努力を致す事を御誓い致します。

 何卒関係者各位及び出品者各位に置かれましては阿哲牛の成果昂揚のため限りなき御指導と従来に倍しまして御愛顧賜わります様伏してお願い致します。

 以上蕪辞を述べ祝辞にかえる次第であります。

 昭和301012

  阿哲畜産農業協同組合連合会

    会長 宮崎宗雄

答辞

 豊穣の秋,第11回岡山県畜産共進会が当新見市において開催され,本日ここに褒賞授与の式典が盛大に挙行せられるに当り,受賞者に代り一言御礼のことばを申上げる機会を得ましたことを身に余る光栄と存ずる次第であります。

 これも平素皆様方の並々ならぬ御指導御援助の賜と深く感謝し,只々感涙の外ございません。我々といたしましては本日この栄誉を永久に記念し一層の改良増殖に精進し,以って本来の使命を全ういたしたく存じます。

 今後共皆様方の一層の御指導を念願し本日の受賞者に代り蕪辞ながら一言御礼申上げ答辞といたします。

 昭和301012

  第11回岡山県畜産共進会

    受賞者総代 川添賢吾