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蒜山地区ジャージー種牛の体型
特にホルスタイン種との比較

中福田家畜保健衛生所 浅羽技師

 蒜山地区は昭和29年度に於て高度集約酪農地区として指定を受け,昨年10月を第一陣に次々と208頭のジャージー牛をはるばる海を越えて導入された。

 それから約1年,すでに分娩牛も23頭を数え,可愛い仔牛も見られる様に成った。

 従来乳牛と言えばホルスタイン一色の酪農界であった為ジャージー種牛のことについては余り知られていない様である。

 幸にして日々ジャージー種牛に接している関係上此処に測尺成績から見たジャージー牛の体型についてホルスタイン種と比較検討をして見た。

一.調査方法

 ジャージー種牛については導入以来隔月発育状況を調査しているので,9月の調査成績とホルスタイン種の成績は旧畜産試験場発表の『乳牛の標準発育』に依る成績を比較した。尚月齢はジャージー牛の殆んどが1953年9月前後の産れであるのでホルスタイン種の発育成績も24ヵ月の成績によった。

二.調査成績と考察

 「第1表」はホルスタイン種,ジャージー種,牛体各部の測尺成績を示したものである。

(第1表)測尺成績
体高 十字 体長 胸巾 胸深 腰角巾 カン巾 座巾 尻長 胸囲 管囲
部高
ホルスタイン 平均価 131.7 135.8 152.8 45.3 67.9 50.7 47.4 34.8 50 186.2 18.2
体高比 100 103.1 116 34.2 51.6 38.6 38.4 35.2 37.9 141.4 13.06
ジャージー 平均価 116.1 117.1 133.6 37.6 58.7 41.8 37.97 24.4 44.2 153.9 14.6
体高比 100 100.8 115.07 32.4 50.5 36 32.6 21 38.1 132.6 12.7

 この表に見る通りジャージー牛は体長に富み胸巾,腰角巾,カン巾,座骨巾は反対に狭く所謂る巾のない事を示している。

 更にこの関係を「第2表」に依って見ると一層両者の相違点がわかって来る。

(第2表)ホ種百分比に対するジ種の割合
体 高 十字高 体 長 胸 巾 胸 深 腰角巾 カン巾 座骨巾 尻 長 平均
ホルスタイン 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
ジャージー 88.1 86.1 87.4 83 86.4 82.4 80 70.4 88.4 83.5

 「第2表」は,ホルスタイン種の各部位をそれぞれ100としてそれにジャージー牛の各部位の平均価を百分比で出したものである。

 最も近似する部位は尻長で88.4%,反対に座骨巾は70.4%で一番小さい。

 平均すると83.5%である。

 平均を下廻る部位としては胸巾,腰角巾,カン巾,座骨巾で前述の通り体巾に乏しいと言うことをはっきり示している。

 こうした観点から少くともジャージー牛は体積に富んだ牛であると言う事は今のところまだ言えない。

 次に後躯の状態について腰角牛と各部の巾尻長を比較して見ると「第3表」の通りである。

(第3表)腰角巾百分比に対する割合
腰角巾 カン巾 座骨巾 尻 長
ホルスタイン 100 93.4 68.6 98.6
ジャージー 100 90.8 58.3 105.7

 即ちホルスタイン種では腰角巾が一番広く尻長,カン巾,座骨巾の順で最大最小の差は31.4である。

ジャージー牛は,腰角巾100に対して105.7である。

 次でカン巾,座骨巾の順で最大最小の差は47.4でホルスタイン種より大きい。

 この表からしてジャージー種牛の後躯は,狭く,長く俗に尻すぼみと言えるだろう。

 この関係は「第5表」によくあらわれている。以上の点より考察するにジャージー牛は

(第5表)ホ種ジ種後躯比較図

(イ)大きさはホルスタイン種牛の約83%位である。

(ロ)ホルスタイン種に比較して巾に乏しい。特に座骨巾は狭い。

(ハ)体巾には乏しいが体長はある。

 と言う事が言える。

以上唯単に測尺成績から見たところの体型であって外貌については今迄も度々本誌上に紹介されているので此処には省略する。