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御別れのことば(馬渡武彦)

 今般私永年住みなれました、岡山県に御別れして大分県に参ることになりました。顧みますれば昭和18年御当県に御世話にあずかりましてから早や満12ヵ年が流れまして任地から申しますればここが最も永く寧ろ第一の故郷とも申すべきでありましょう。前半は県庁に後半は津山の農場に御世話になりましてその間私に対して御寄せ下さいました皆様の御芳情に対しましては洵に感激の至りに堪えず深く感謝申し上げる次第でございます。戦争の激化から終戦,その後の困難な時代,又津山に参りましてからは酪農講習施設の設置,集約酪農の指定によるジャージー種の導入等何れを考えましても皆思出深いものばかりでありまして,終生忘れることは出来ません。

御当県は和牛に,酪農に養鶏に隆々ちる発展を遂げつつありまして県の強力なる施策の推進に加えて近く決定するでありましょう新構想による技術指導機関の整備拡充によって一層堅実な発展を見るであろうことを確信致します。

 今般私の任地は御当県とは遠く離れますがこの地において皆様から御教示にあずかりましたことを基礎と致しまして働きたいと存じて居りますので,将来此上共格別の御教示と御交誼を下さいますよう様御願い致します。

 時恰も向冷の候でありますので皆様には御自愛御専一に折角御精進の程御祈り致します。

 御当県の畜産の御発展を御祈りしつつ極めて蕪辞でありますが御別れのことばと致す次第であります。

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