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戦後第6回目の岡山県肉牛共進会が昨年12月20日,21日の2日間に亘り岡山常設家畜市場(岡山市巖井)で県主催のもと開催された。
出品牛については,審査報告に詳細に説明されているが,特に今回は出品頭数も64頭と著しく増加し県北部からも一部出品がされているように牛の大きな目的である肉の生産について関心が深まっていることは,注目される点である。中でも去勢牛については著しく進歩してきたことが認められる。これは一つに本県のみでなく瀬戸内海沿岸の各県はもとより,牝牛の肥育で知られている近畿地方においても去勢牛の肥育が取上げられている事実から見ても今後の肉牛に一大躍進を見るものと思われる。今秋山口県徳山市で開催される中国連合畜産共進会の肉牛の部に新らしく去勢牛を加えて審査することになったことも当然である。
最後に出品牛の測定成績を過去3ヵ年と比較して掲載したから参考に願いたい。
なお今回のせり成績は,メス最高19万円,最低7万8,000円,去勢牛最高11万円,最低6万5,000円で,平均値はメス11万4,000円(29年11万9,000円),去勢牛8万7,000円(29年10万3,000円)で昨年よりいく分下廻っている。
去勢一等一席 隼号 | メス一等一席 てる号 |
今回の出品は雌38頭,去勢牛26頭,計64頭でありまして全部県内産でありました。郡市別出品頭数から見ますと,雌におきましては,岡山市の14を筆頭に,ついで倉敷市9,児島郡5,都窪郡3,御津郡,西大寺市,苫田郡各2,赤磐郡1となっており,去勢牛におきましては,やはり岡山市が12で最も多く,ついで倉敷市の5,以下御津郡3,赤磐郡と西大寺市が各2,都窪郡,総社市各1となっております。なお年令別に分類して見ましたところ,雌におきましては,3才1,4才7,5才9,6才17,7才以上3及び不祥1となっており,去勢牛におきましては3才2,4才6,5才10,6才5,7才以上1及び不祥2となっております。
今回は出品の御希望が非常に多く64頭にも達し,殊に去勢牛の出品が26頭もありましたことは,本県における肥育事業のこれからのねらいといたしまして,去勢牛に力を入れるべきであると思われる点から誠に喜ばしいことと,深く敬意を表する次第であります。
審査は昭和27年中国和牛協会で決定して,農林省がその適用を奨励している肉牛審査標準によって,雌と去勢牛との2部に分けてこれを行いました。
出品を概観いたしますと総体的に年々レベルが高くなっておりまして,殊に去勢牛の進境が著しく,優劣の差が非常に縮まって来ておりますことは,誠に心強いことと存じます。今回の出品を昨年の出品牛と比べますと,雌におきましては,体高の平均123.8cmで殆ど差はなかったのでありますが,体重の平均144.7貫で相当増加しておりますし,去勢牛におきましても同様平均体高132.8cmで昨年と殆どかわらないにも拘らず体重は149貫で肥育程度が進んで来ていることが,窮えますが,前に申し上げました肉牛審査基準に照し合わせて見ますときにまだまだ肥育程度の不十分なことがはっきりいたしておりますので,少くとも県肉牛共進会に出品する程度のものは,本県産牛の肉用的価値の優秀さを強調する意味から一段と肥育程度の進んだものを出品されるよう切望いたします。
肉牛として重要視されております被毛皮膚,骨緊り,角,蹄等謂わゆる資質の点につきましては相当改良されまして漸次優れたものかが多くなってまいりましたことは誠に喜ぶべき現象と存じますが半面さきほども申上げましたように肥育程度の不充分なもの,また去勢牛におきまして角の長大に過ぎるもの,白角のものなどの散見されますことは将来反省しなければならないところと存じます。
体型におきましても,肩端の甚しく弛いもの,腰角の突出したもの,肋張りの不十分なもの,後躯の淋しいもの,頭の重すぎるもの,下腿の充実を欠ぐもの等がありましたが,これらにつきましては,なお一考を要するところと存じます。
和牛の肉利用の面が重要度を増してまいりましたが,殊に生産の半数を占める雄の利用上からまた大衆向きの安価な牛肉を生産する意味からも去勢牛の肥育の重要さは将来ますますその度を加えるものと確信いたしておりますが,今回の出品牛からおしまして,去勢牛の仕上げの年令が6才以上に達するものは,肥育経済上いかがかと存ぜられますので,大体生後36箇月位までには仕上げるように,もっと仕上がりの年令を下げる必要があります。来秋の中国連合畜畜共進会の去勢牛の出品規則では生後36箇月以下という月令の制限を設けております。
去勢時期について申上げますが,出品牛を見ますと,角の太く長いもの,体躯に比べて頭頸の重いと思われるものが比較的多かったように見受けましたが,これらは去勢時期を早くすることによって,この欠陥が改められるものと思われますので,去勢は生後7−8箇月,できれば母牛についている中に行う習慣とするようおすすめいたします。
最後に飼養管理の点について申上げますと,出品牛の一生一代のこの共進さえ手入れの不十分なものがありましたが,牛の健康増進上からも平素から十分な手入れをお願いいたします。また蹄の管理が悪く肢蹄の弱いものが比較的多いように見受けられましたが,削蹄にもっと気を配り,適度な運動を課していただきたいと存じます。
以上審査の結果雌の部におきまして,1等賞2点,2等賞4点,3等賞8点を去勢牛の部におきまして1等賞2点,2等賞4点,3等賞8点を選抜擬賞いたしました。
1 等 賞 | 農林省賞状(首位) 岡山県賞状並賞品 岡山県畜産農業協同組合連合会賞状並賞品 第6回岡山県肉牛共進会賞旗1旒 |
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出品番号 | 種 類 | 名 号 | 性 別 | 年 令 (才) |
産 地 | 出 品 人 | 体 重 | |
住 所 | 氏 名 | |||||||
11 | 黒毛和種 | てる | メ ス | 6 | 苫 田 | 倉敷市三田 | 山地 輝夫 | 172 |
18 | 〃 | ゆたか | メ ス | 4 | 苫 田 | 倉敷市三田 | 守屋 豊 | 171 |
56 | 〃 | 隼 | 去 勢 | 6 | 美 作 | 岡山市土田 | 藤田 隼夫 | 169.2 |
65 | 〃 | 照 | 去 勢 | 苫 田 | 岡山市湯迫 | 藤田 照太 | 150.8 |
出品番号 | 性 別 | 入賞等級 | せり価格 千円 |
生体量 貫 |
枝肉量 貫 |
歩留 % |
肉 質 | ||
さしの状態 | 脂 肪 の 状 態 | 枝肉価格 円 |
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2 | 牝 | 3の1 | 116 | 149 | 84.4 | 56.6 | 中 | 白く良質なるも稍軟い | 137 |
3 | 〃 | 3の4 | 100 | 151 | 82.5 | 54.5 | 中の下 | 黄色強し | 122 |
11 | 〃 | 1の1 | 190 | 172 | 104.8 | 61 | 極上 | 白く特に縮り良 | 182 |
12 | 〃 | 3の2 | 161 | 159 | 97 | 60 | 上 | 稍黄味 | 166 |
56 | 去 勢 | 1の1 | 110 | 169 | 97.6 | 58 | 上 | 黄味やや柔かい | 114 |
65 | 〃 | 1の2 | 103 | 160 | 91.2 | 57 | 中 | 白で良い | 113 |
42 | 〃 | 2の1 | 108 | 153 | 91.4 | 59 | 上 | 黄色強し | 118 |
47 | 〃 | 2の4 | 92 | 153 | 87.2 | 57 | 中 | 〃 | 106 |
年 次 | 性 別 | 出品頭数 | 測 定 価 | 体重牝140貫、去勢 125貫に満たないもの |
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体 高 | 胸 囲 | 管 囲 | 体 重 | ||||
p | p | p | p | ||||
28年 | 牝 | 40 | 145.4 | − | 16.8 | 145.4 | 12(30%) |
去 勢 | 13 | 146.2 | − | 18.7 | 146.2 | 5(38%) | |
29年 | 牝 | 21 | 140.4 | − | 16.3 | 140.4 | 9(43%) |
去 勢 | 20 | 149.8 | − | 18.9 | 149.8 | 6(30%) | |
30年 | 牝 | 38 | 144.7 | 192.6 | 16.8 | 144.7 | 13(34%) |
去 勢 | 26 | 149 | 198 | 19 | 149 | 1( 4%) |
本日茲に第6回岡山県肉牛共進会の審査が終了しまして褒賞授与の式典を挙行するにいたりましたことは,まことに欣快に堪えないところであります。
御承知の通り我国の農村振興上はもとより国民栄養保健の向上の上から,年と共に畜産振興の重要性が加わって来ましたため,政府はもとより,県の施策の上に於ても之が強く打出されるにいたりました事は,斯業進展上慶祝に存ずる次第であります。
就中,本県畜産の大宗をなす和牛につきましては,今後一段振興を図る事が強く要請されているのでありますが,特に之が消流の円滑を図って,和牛最終の目的である肉に関する諸問題を解決する事が何より肝要である事は,今更申上げるまでもないのでありまして,かような見地からも肥育事業の振興への努力が,本県和牛界に於て今後十二分に払われる必要のある事を痛感するものであります。
戦後回をかさねて来ました本共進会も,幸にその開催の効果が遂年顕われて来ている事は御同慶に堪えませんが,各位におかれましては,本県和牛の将来に深く思いをいたされまして,之が健全なる発展のために御精進あらん事をお願いする次第であります。
終りに臨み本共進会開催について御協力賜りました,関係団体及び出品者各位の御熱意に対しまして,深く感謝の意を表しまして御挨拶といたします。
昭和30年12月21日
岡山県知事 三木行治
本日第6回岡山県肉牛共進会の褒賞授与式に参りまして,一言御挨拶を申し上げる機会を得ましたことを光栄に存じます。
農家の宝であります家畜は,農業経営上なくてはならず,又文化の尺度は,畜産物の消費量に一致すると言われて居ります。
日本における畜産物の消費量は西欧に比較して著しく下位にあって,これは生活様式が異なるとはいうものの,我が国の畜産は,まだまだ発展しなければならないのであります。
畜産生産物の増産によって食生活の改善,国民体位の向上をはかることは,平和日本の再建に緊密なことであると思うのであります。本共進会も回を重ねること6回に及びまする由,出品牛の質量共に優秀にして遂年発展しつつあることは,真に御同慶にたえない所であります。
何と申しましても,岡山牛の声価の裏付は優秀なる肉牛の産出にあることは申すまでもないことでありますので,今後も一層優秀な肉牛の造成に御努力を願いたいと考えます。
然るに,最近牛価は著しく下落し,関係者一同畜産の振興上憂慮にたえない処で,これが対策に迫られて居るのでありますが,この牛価下落にもめげず,丹誠をこめ見事に育成された皆様の出品牛に接しまして,今日迄の御労苦と畜産に対する御熱意に対し感謝にたえないものであります。
どうか本日の審査の成績並びに審査長の報告を参酌せられて,今後共畜産の研鑽に努められ,岡山県肉牛の対外的声価の向上と発展に,一段の努力と御精進を切望して止みません。
終りに臨み,本共進会関係者並びに出品者各位の絶大なる御協賛に対し感謝の意を捧げて御挨拶と致します。
昭和30年12月21日
衆議院議員 亀山孝一