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 この頃の家畜管理

   ある農家が行っている養畜経営が上手にいっているかどうかは,農繁期の家畜飼養と冬の家畜飼食という二つの時点をとらえ,その状態を調べて見ればすぐわかります。

  ということは,農繁期にしても,冬にしても家畜飼養がいろいろな意味からむずかしいからであります。

  では,冬の家畜飼養におけるむずかしさとは,一体なんであるかということですが,家畜個体の耐寒性が強い弱いということよりも,むしろ家畜にあたえる飼料の準備がよくできているかどうかという点と,畜舎の問題でしょう。飼料の問題は,飼養経済と関連し,畜舎の問題は主に家畜衛生と家畜の能力に大きく影響するものであるからです。つまり,そうした夏から秋にかけて,準備すべき冬の備へがまったくできていないときには,いくら冬の家畜の飼養管理を合理的にやろうとしても,それは全く無理な話で,もし合理的にやろうとすれば,金のかかる合理化となってしまいやすいのです。

  たとえば,冬の飼料について,サイレージとか乾草の準備が少なかったとしましょう。この場合しいて自給飼料をあたえようとすれば,藁稈類とか糠類などになってしまい,これらをつづけていますと,乳牛では乳量が低下するばかりでなく,次回の種付が困難となり,また病気にもかかり易くなりましょう。緬羊などは毛の成長が順調でなくなり,毛の太さが一律でなくなるので,デンダーウールとなり,商品価値が低下します。その他の家畜は病気にかかりやすくなり,にわとりは冬は産卵が低下します。だからといって飼料をどんどん購入してあたえれば,ずいぶん高く飼料費がつきます。

  以上のような点もありますが,一応夏から秋にかけての飼料の準備はできているものとして次にすすめます。

  家畜の飼養管理上,最も注意を要するのは乳牛であり,ついでにわとりでありますが,とくにこの乳牛の飼養管理を重点にして話しをすすめましょう。

  まず畜舎ですが,畜舎はすきま風を防ぐことに重点をおき,むしろ,わら,乾草などを畜舎のまわりに張りまわし,とくに北風の強い地方では,北側に防風,防雪用のかこいをつけましょう。

  防寒の設備の際には,換気に十分注意し,乳牛の呼気ばかりでなく,糞尿の醗酵による空気の汚染もありますから,換気装置を十分考えてやらなくてはなりません。

  これは防寒意識の強いあまり,換気の配慮をおこたりやすいからで,また換気を注意しすぎると防寒にならない場合も生じます。

  また畜舎によっては,その構造上コンクリートの上で乳牛がねおきする場合もあります。そうでなくとも,しきわらがうすく,たえず糞尿でよごれたしきわらの上でねおきさせるようなことがあります。

  たとえば,舎内温度が零度以上ならば別に乳量には影響はありませんが,冷いコンクリートや糞尿でよごれたしきわらの上でねおきさせますと,5−10%程度の乳量の低下をおこさせますから,そのような畜舎,あるいはしきわらのような状態はたえず注意してしきわらを多くし,またしきわらの交換を励行する必要があります。

  乳牛個体の手入れで大切なことは,とかく運動不足となりやすいので,そのため運動させることはもちろんですが,ブラシ,竹櫛などで皮膚の手入れをよくすること,これは牛体にこのような作業をとおして牛に親しみをもたせ,搾乳時に人に対する恐怖心をおこさせないためにもよいのです。

  また乳房,とくに乳頭は,とかくヒビができますので,毎回搾乳後の最後の散滴の脂肪率の濃厚な牛乳を乳頭にぬってやると,ヒビを防ぐことができます。搾乳中でないときは1日1回ぐらいグリセリンなどの油を塗布してやりましょう。

  これはとくに分娩直前の乳牛の乳頭はこうしたことがとくに必要です。また,寒いときの搾乳には,熱い摂氏50度前後の湯で乳房をよくふきマッサージしてから,搾乳させることが大切であります。

  運動については,日光浴も必要です。とくに県北,これに近い山地で,乾草の準備がよくできないで,稲藁が粗飼料の主体となっている場合に,さらに日光浴の時間が少いということになりますと,ビタミンDの生成が不十分となり,骨軟症,二等乳,種付不良などいろいろな障害が出やすいので,つとめて,晴天の日は外に出して,日光浴と運動をさせることが大切であります。

  冬期の飲水についてのべますと,搾乳牛でよく泌乳している乳牛は,1日に5−6斗位の水を飲みます。だからといって,冷水を一時に多く飲ませますと,乳を造るための養分が,体内に入った水を温めるためにエネルギーが使用され,したがって乳量が減少します。だから,15−6度位の井戸水でも,1日に3回位に分けて与えなければなりません。できれば,2530度位のぬるま湯にして飲水させますと,そうした不経済さはなくなります。この場合,搾乳中以外の牛についてはそこまで考えてやらなくともよいでしよう。

  飼料のあたえ方については,なによりも注意しなくてはならぬ問題は,凍った飼料をあたえぬことです。

  大根,カブ,澱粉粕などの凍ったものを与えますと,栄養価が低下し,消化不良をおこす他に,冷水をあたえたと同じようなことがおこり,その飼料がもつ熱量も結局マイナスの作用を呈することになります。とくに根菜類には注意した方がよいでしよう。

  冬は,人の生活もどうしても不規則に流れやすいので,とくに乳牛については,時間的に習慣性となっている搾乳時間,飼料給与時間が不規則となりやすい。とくにお正月はそのきらいがありますから,そのようなことのないように注意しましょう。

  なお,最初にのべておきましたように飼料の準備がよくできていないと,いろいろ故障がおこりやすいのです。夏期は,青草類を多く給与するので糞も適度であり,とくに注意する必要はありませんが,冬期は常に糞の硬軟に注意し,その飼料の調合,あるいは健康状態を知らなくてはなりません。

  糞がやわらかすぎるからといって,飲水量を多くして調節させようとするのは最もよくありません。それは常に乾草を十分にあたえておればそのようなことはおこりません。

  また澱粉質の多い甘藷,馬鈴薯を多くあたえすぎますと,粗繊維ばかりでなく,蛋白質の消化も悪くしますから,多くても1日10キログラム以下に止めることが安全でしょう。

  これらは,飼料の準備の不均等からくる問題で,そうならぬよう濃厚飼料の配合に注意することが必要です。

  以上主として乳牛についてのべましたが,これは搾乳の関係をのぞけば,すぐ他の家畜にも該当する問題であります。

  他の家畜にも共通する飼養管理上の問題を次に要約しておきましょう。

 1.家畜の栄養をおとさないこと。

 2.舎内はつとめて暖くすること,但しそのために火熱を入れる必要はないこと。

 3.舎内にすきま風は絶対に入れないこと。

 4.しきわらを充分にしきこむこと,とくに幼畜や妊畜にはこの注意が大切です。

 5.下痢しているものには,冷水もあたえぬこと。

 6.冬の運動は南向の暖い場所につなぎ,十分日光浴させること。

 7.舎内の温度を急に下げたり,上げたりするようなことのないよう注意することが大切です。