既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第1章 酪農の発展

第5節 生乳の需給

5.乳質の改善

(1)岡山県酪農協会による乳質改善共励会

 昭和25年(1950)に,「乳,乳製品及び類似乳製品の成分規格等に関する省令」(厚生省令第52号)が制定されたので,翌26年(1951)に「岡山県乳質改善共励会」が開催された。夏季最も乳質の低下するときに,2等乳の発生を防止することがねらいであった。

  1 共励会の運営
  主     催 岡山県酪農協会
  後     援 岡山県,各乳製品工場(明治乳業笠岡工場,淡路煉乳株式会社岡山工場,国府商店,北部酪農業協同組合,東洋乳業)
  参加団体の資格 乳製品工場に原料乳を出荷する生産者の団体であって,日量平均1石以上を送乳するもの。
  実 施 方 法 共励会は別に定める要綱によるが,審査の方法はもちろん乳質に重点を置き,各検査(アルコール検査,脂肪率,酸度,細菌数など)は送乳工場の受乳槽で,参加団体ごとに実施し,検査は食品衛生法の規定により,アルコール検査は毎日,その他は1カ月に3回以上,県,工場および参加団体の代表者の3者が立会いの上で行なう。
  経     費 この共励会の経費は,県および日本乳製品協会の助成金ならびに各乳製品工場の寄付金による。ただし,事務的経費は県酪農協会の負担とする。
  2 アルコール不安定乳(2等乳)発生状況

 岡山県酪農協会の資料により,昭和32年(1957)中に,各乳製品工場において,発生したアルコール不安定乳の発生状況は,冬季は1パーセント程度に止まったが,夏季7−8月ごろになると8−10パーセントと多発した。年間平均では3パーセントと高率であった。

(2)昭和40年代以降における乳質改善

 昭和42年(1967),全国乳質改善協議会の設立に伴い,中央酪農会議の指導をうけ,翌43年(1968)県,乳業者および生乳生産者の3者で岡山県乳質改善協議会を設置した。この協会は乳質改善共励会を実施し,細菌数と2等乳の問題を中心に,乳質改善を推進した。このため,細菌数400万以下という規格に適合するものが年々増え,同46年(1971)には55.4%と半数に達し,また,2等乳は同45年度末には発生を見なくなった。

(1)岡山県乳質改善協議会 

 岡山県乳質改善協議会は,県職員2名,県酪連役員2名,同会員代表11名および乳業者8名をもって構成し,事業所を県酪連内に設けた。会長に県酪連会長が就任し,県酪連役員1名及び同会員代表8名をもって専門委員会を構成した。この会は毎年度乳質改善共励会を開催した。
 これによる地区乳質改善協議会の任務は,県乳質改善協議会が行なう事業を推進するとともに,地区協議会自体の事業方針を定め,地区の実態に即した指導を強力に推進することにある。また,乳質改善指導員の任務は,地区乳質改善協議会の具体的な指導計画に基づいて,酪農家の施設を適時巡回し,牛乳衛生の向上に必要な改善指導を行なうことにある。

(2)農薬等による汚染乳浄化促進

 昭和45年度は,生乳中の農薬ならびに抗生物質の残留問題がしばしば発生し,酪農界にとっては非常にきびしい年であった。県酪連はBHC,DDT等の農薬で汚染された飼料を追放し,かつ,これらの農薬を今後使用しないこととした。もし乳房炎などの治療に抗生物質を使用したときは,72時間生乳を出荷しいなことなどを決め,ポスター,機関紙などで情報を流し,ブロック会議などで周知徹底をはかった。とくに県の行政指導による有機塩素農薬浄化促進事業は多大の効果を納めた。
 その他乳質の改善向上をはかるため,全農家に対して牛乳濾過紙ならびに器具殺菌剤を配布し,クーラーステーションにはTTC検査器具を設置して乳質改善に努めた。
 昭和44年(1969)から同47年(1972)にかけて地区乳質改善協議会単位に生乳の冷却施設を普及させるため,簡易クーラー施設102基を設置し,これに対して助成を行なった。

(3)乳質改善奨励金

 昭和47年(1972)には,県酪連は「乳質改善奨励金交付要領」を設けた。細菌数400万規制に対応するため,乳質改善奨励金の積立ておよび交付を実施した。このほか県酪連は乳質改善特集号を出したり,「細菌数ゼロへの挑戦」のポスター等を全農家に配布した。また,岡山県酪農婦人協議会と提携して,酪農婦人を対象として乳質改善講座を開設した。

  乳質改善奨励金積立交付要領(昭和47年6月1日施行 県酪連)  

 県酪連が積立交付する乳質改善奨励金に関しては,この要領に定めるところによるものとする。
 (乳質改善奨励金の積立および交付の対象者)
 県酪連の定めた生乳受託規程に基づく,生乳受託販売に係る委託を行なっている直接および間接の生乳生産者が生産出荷する生乳を対象として,乳質改善奨励金を積み立ておよび交付するものとする。
 (乳質改善奨励金の積立)
 乳質改善奨励金の積立金額は,上記対象者が生産出荷する生乳1升当り1円を毎月徴収し,販売仮受金勘定へ繰り入れるものとする。
 (乳質改善奨励金の交付)
 @ 乳質改善奨励金交付の財源は,販売仮受金勘定への繰入金をもってこれにあてるものとする。
 A 乳質改善奨励金は,別紙1に定める乳質検査実施要領による検査員の検査成績報告に基づき,別に定める乳質改善奨励金交付基準にしたがい,毎月上記対象者に交付するものとする。
 B 乳質改善奨励金交付基準は,決定次第遅滞なく通知するものとする。
 (経理)
 乳質改善奨励のための交付総額は上記販売仮受金勘定へ繰り入れられた乳質改善奨励金と同額でなければならない。
 乳質改善奨励金交付基準
 乳質改善奨励金交付基準は次のとおりとする。

(4)乳房炎防止

 昭和48年度には新規事業として乳房炎防止のため牛舎消毒と害虫駆除用噴霧機100台を設置した。
 酪農婦人を対象に乳質改善講座を開設し,また,酪農家の中から100名に乳質改善指導員を委嘱し,乳質改善の指導を推進した。
 昭和49年度からは,乳質改善奨励金積立交付制度を引き継ぐほか,さらに乳質改善指導員100名に乳房炎早期発見のためのPLテスター,早期細菌検査のためのバクチェックペーパーを配布し,改善体制の整備をはかり,かつ徹底した庭先指導を行なった。 

(5)搾乳施設および器具の総点検

 昭和51年度から搾乳施設器具の総点検事業を実施するとともに,会員組合と酪農婦人協議会と提携し,県家畜保健衛生所県農業共済連の協力を得て,主として酪農婦人を対象に乳質改善講座を開催した。

  ミルカー総点検事業実施要領
 @ 目的 乳質改善事業計画に則りミルカーの総点検事業を実施することにより,県内の生乳品質の改善向上を図り,良質な生乳の生産を確保し,酪農経営の安定に資することを目的とする。
 A 主催 岡山県酪農農業組合連合会,生乳委託組合
 B 指導依頼先 家畜保健衛生所,関係乳業者,関係搾乳機具販売店
 C ミルカー点検地 県下一円
 D 実施期間 5月〜3月
 E 実施方法
 (点検担当責任者) ミルカーの点検事業を円滑に行なうために担当責任者をおく。原則として生乳委託組合の嘱託検査員,関係担当者が行なう。また必要に応じて県酪連より担当者を派遣する。
 (点検の実施) 点検責任者はミルカーの点検にあたって,県酪連と日程等十分協議の上実施する。これによって県酪連は指導依頼先に協力要請を行なう。
 (乳質改善調査台帳の整備と報告)
 点検責任者はミルカーの点検が完了したのち,別に定める乳質改善調査台帳をすみやかに整備し,県酪連へ報告する。
 F ミルカー点検器具の貸出し 
 県酪連はミルカーの点検器具を常備し,実施にあたっては乳質改善指導用ミルカー点検器具貸出要領に基づき貸出しを行なう。

(6)食品衛生的乳質改善から成分的乳質改善へ

 牛乳の成分的乳質の改善向上が本来のねらいであるべきところ,衛生的乳質改善が食品衛生上急を要したため,今まで成分的な改善がとり残されていたが,最近になって成分的な乳質の改善向上が強く要請されるようになった。昭和52年度においては試験的に無脂乳固形分(SNF)について,岡山県病性鑑定所と岡山家畜保健衛生所に,集乳コース別サンプルについて検査を依頼し,その実情を把握し,これをもとに適正な飼養管理の啓蒙指導を行なった。
 なお,52年度には県内大手乳業メーカーから,「乳等省令」(昭和26年,厚生省令第52号)にもとづく規格に適合しない生乳は,飲用向けとして買い入れないというきびしい乳質規制があった。
 県酪連はこれに対処するため,53年度においては全乳固形分測定器TMSチェッカーを設置し,個々の酪農家の生乳の検査を実施した。牛乳の品質に対する社会的な評価にこたえるため,乳質の目標規格を設定し,良質生乳の生産に努め,もし,規格外生乳が発生した場合は,その責任分担を明確にするため,生産者から組合への誓約書,組合から県酪連への同意書をそれぞれ取り交し,規格外の生乳の発生防止に努めた。その結果規格外生乳(SNF8.0%以下、乳脂率3.0%以下,細菌数400万以上)の発生は著しく減少した。

(7)最近における乳質

 昭和49年(1974)から53年(1978)までの最近5カ年間における生乳の脂肪率は平均3.52パーセントで,昭和49年(1974)における全国平均の3.356パーセントより高率である。年間における乳脂率の変化は,暑い8月が最低で,寒い1月が最高になる傾向がある。地域的には県南は県北に比較して低い傾向がある。
 細菌検査成績を見れば,昭和47年(1972)から53年(1978)までの細菌数については,厳格な検査と指導によって,10年以前に比較して著しく改善されている。昭和53年(1978)の実績で見ても,400万以下の適合率は94.6%で,200万以下の適合率は84.1%となった。
 生乳成分の低下は,乳脂肪や無脂乳固形分(SNF)の不足によるものであるが,乳脂肪は生乳取引の基準になっていることと,県営検査であるため,厳重に検査せられていて,その実態が明確に把握されている。一方,無脂乳固形分の検査については従来あまり知られていなかった。県酪連は,TMS測定装置を設置し,昭和53年(1978)に最初の調査を実施した。その成績は1万1,573検体の中で,無脂乳固形分では8.0%以下のものが9.5%を占め,8.0%以上のものが90.5%を占めていた。