既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第2章 和牛(肉用牛)の変遷

第5節 肉用牛肥育事業の進展

3.昭和戦後期における肥育事業の進展

  (4) 肥育牛のインテグレーション

 昭和40年代に入ると,商社などの農外資本による,インテグレーションが出現してきた。
 これは畜産農家が商社などから,肥育素牛と飼料(とくに濃厚飼料)の供給をうけて契約飼育をするものであるから,生産物の販売においては,農外資本に系列化される。
 岡山県における,このインテグレーションの一例を紹介すると次のようなものがある。
 久米郡中央町にある有限会社中央牧場(社長 水島鉄太郎)が昭和44年(1969)6月,肥育部門をインテグレーション方式とし,その後,昭和51年(1976)5月からは,哺育・育成部門も預託契約を開始した。途中で商社の変更もあったが,この牧場における現在のインテグレーションの内容は,

  ア 牧場側は,土地および施設,ならびに粗飼料を提供する。
  イ 牧場側は,哺育および育成についてはホクラク農協と,肥育については日本ビーフ畜産公社(全酪系)と契約する。
  ウ 哺育・育成
    生れたばかりの子牛(体重40〜45キログラムのもの)を,6ヵ月間で230キログラムに哺育・育成する。
  エ 肥育
    育成された牛は,自動的にホクラクから日本ビーフ畜産公社へ譲渡販売される。日本ビーフ畜産公社の牛になったもの(体重230キログラム以上の牛)は,生体重約600キログラム,枝肉重量330キログラム以上として出荷販売される。
  オ 肥育の条件
    1日当たり増体量は,1キログラムとし,これ以上に飼育されたものについては,枝肉1キログラム当たり700円の褒賞金が,日本ビーフ畜産公社から牧場へ支払われるが,1日当たり1キログラム以下で飼育された場合には,違約金として枝肉1キログラム当たり700円が,牧場から徴収される。
  カ 飼育方式と濃厚飼料
    ホクラクおよび日本ビーフ畜産公社からの,指示と提供による。
  キ 事故と賠償
  (ア) 哺育・育成時における事故率が,導入頭数の15パーセントまでは,ホクラクの負担であり,それ以上のものについては牧場が負担する。
  (イ) 肥育時における事故については,すべて牧場の負担である。(牧場としては家畜共済に加入している。)
 なお,この中央牧場における現在の飼育規模は,6ヵ月未満(ホクラク契約)のものが380頭,6ヵ月以上のもの(日本ビーフ畜産公社契約)が230頭である。
 その他,このような体系で,津山市(みのり園),英田町(長谷川牧場),奈義町(小童谷牧場),美作町(有元牧場,竜門牧場)などでも,インテグレーションによる飼育がおこなわれている。