既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第3章 養豚の進展

第2節 養豚指導奨励事業

2.昭和年代の指導奨励事業

(1)県の養豚奨励施策

  1 養豚増殖奨励金交付要項の制定(昭和17年10月)

 畜産組合,養豚組合などが繁殖牝豚の種付,種豚の購入,種豚購入斡旋,子豚購入,飼料運搬用容器の設置,講習会の開催などを行う場合に,その費用の2分の1ないし4分の1の奨励金を交付した。

  2 ランドレース種の輸入と奨励

 昭和36年(1961)10月19日,三木知事がスエーデンからランドレース種豚30頭を輸入して岡山県酪農試験場に5頭,県下指定養豚場に25頭を配布した。このことは戦後の本県の養豚振興に画期的な出来事であり,このランドレース種の導入を機に種々の施策が打ち出された。
 輸入したランドレース種の奨励,普及を図るため,ランドレース種豚繁殖実施要領及び岡山県指定種豚場設置要綱(県告示第293号)が定められた。また「ランドレース種豚の飼い方」を配布し,生後8カ月前後,体重110キロ程度で繁殖に供すること,輸入豚は15系統であるため,近親交配をさけること等を指導し,種豚登録と子豚登記を義務づけた。

  ランドレース種豚の繁殖実施要領(抜粋)

(目的)
 第1,輸入ランドレース種豚の合理的繁殖を促進して,将来の食肉需要に対応した肉豚を増産し,農家経営の安定を図ることを目的とする。
(方針)
第2,ランドレース種豚は,北欧で改良された加工用の優良な種豚であるが,これを本県の環境風土と養豚農家の一般的飼育条件に適応させて農家所得を増大するためには,施設,環境,経験,技術等を具備した繁殖機構を必要とする。
(2)繁殖は,当分の間純粋繁殖による原種の増殖に努め,3代以上を経過したものを一般農家で繁殖に供し,3カ年計画で約6,000頭の種豚を確保する。
(3)一代雑種(ランドレース種と中ヨークシャー種の雑種)肉豚利用については,豚の品種改良を混乱させないよう的確な試験成績の結果を得て考慮することとし,中ヨークシャー種は,生肉用としてなお一段と体型資質の改良増殖を図る。このため種豚登録事業を推進強化する。
(繁殖機構)
 第3,県は適地を選定して県指定種豚場を指定し,数カ市町村を区域とするランドレース繁殖地域を造成する。ランドレース繁殖地域造成計画区域内に,県指定種豚場の下部組織として市町村又は農業協同組合の指定する地区指定種豚場を設置する。
(1)県指定種豚場 
  岡山県指定種豚場設置要綱に基づき設置する。
(2)ランドレース繁殖地域
  養豚飼料の自給度が高く,その地域内の市町村又は農業協同組合が具体的な養豚振興計画を持ち,かつ,積極的な対策の講ぜられる可能性がある地域とする。
(3)地区指定種豚場
  市町村,又は農業協同組合が指定,助成,指導して,管内に設置し,県指定種豚場から原種豚の配布をうけ,生産種豚を繁殖養豚農家へ販売するもので,構造規模は県指定種種場に準ずる。
(繁殖方法)
 第4,繁殖は,個体選抜と能力検定に基づいて純粋繁殖により,年2回生産することを標準とし,次のとおり実施する。
(1)交配の方法 輸入15系統群を基礎にして,系統交配と異系交配を適宜に行う。
(2)種畜生産率 めすは哺育頭数の80パーセント程度とし,おすは特別に優秀なものを選択する。種豚とならなすおすは去勢して肉豚に利用する。
(3)血液更新 県は種雄豚及び精液を計画的に県外から移入し,指定種豚場の種雄豚は,配置換え等により交互に更新を図る。
(4)飼育管理 初産の種付け月齢は,生後8カ月前後で体重110キロ以上となったものとし,その他の飼育管理については,中ヨークシャー種に準じて行い,必要な事項についてはその都度適切な指導をする。(以下省略)
 ランドレース種の増殖計画は表3−2−2のとおりであった。

  3 岡山県指定種豚の設置

 県は輸入ランドレース種の増殖と普及を図り,養豚振興を進めるために,県内のランドレース種を中心とする種豚場を設置することとし,「岡山県指定種豚場設置要綱(昭和37年3月30日,県告示293号)を設定した。

  岡山県指定種豚場設置要綱(抜萃)

(趣旨)
第1条 知事は,豚の合理的改良繁殖を図り,養豚経営の基盤を確立するため,県内の優良な種豚を生産販売する養豚施設をこの要綱に定めるところにより,岡山県指定種豚場(以下「指定種豚場」という。)に指定して,必要な助成を行なうものとする。
(選定基準)
 第2条 指定種豚場は,次の各号に掲げる要件を具備していなければならない。
  1 血統が明確で品種の特徴をそなえた優良種豚10頭以上を飼育し,又は将来飼育する見込みがあると認められるもので,生産子豚の販売を目的とするもの
  2 自給飼料の生産が充分で,飼料の需給が安定しており,子豚生産費の低減に努めるもの
  3 施設の構造が豚の生産と育成に適合し,衛生的であると認められるもの
  4 施設の管理者が,豚の改良意欲が旺盛で,相当の知識,技能を有し,かつ,その地域の養豚振興について積極的な指導力を有すると認められる者であること
(助成)
 第4条 知事は,指定種豚場に対して,次の助成を行なうことがある。
  1 ランドレース種豚の譲渡
  2 種雄豚の貸付け
  3 養豚施設に対する補助及び融資のあつ旋
  4 種豚の飼育管理についての指導
  5 生産種豚の販売あつ旋
(管理者の遵守事項)
 第5条 指定種豚場の管理者(以下『管理者』という。)は,豚の生産及び販売にあたっては,次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
  1 種豚は,日本種豚登録協会に種豚登録をして,純粋繁殖を行ない,生産子豚については,極力同協会の産子検定及び産肉能力検定を受けること。
  2 生産子豚のうち,種豚として育成又は販売するものは,日本種豚登録協会に子豚登記をすること。
  3 ランドレース種の生産子豚のうち,肉豚として販売する雄は去勢すること。
  4 家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)に基づく予防注射を受ける等伝染病の予防措置を講ずること。

 昭和38年(1963)には県指定種豚場は30カ所設定される予定であったが,15カ所に変更された。岡山県酪農試験場はこれらの指定種豚場に対して,雄1頭,雌5頭を1組として払い下げた。指定種豚場も生産豚を5頭を1組として地区種豚場に譲渡することとした。雄は,生産豚中特に優秀なものを厳選して,生後6カ月まで育成し,ヨークシャー種との一代雑種造成用の候補種豚として販売することとした。つまり純粋繁殖には県酪農試験場生産豚を当て,雑種繁殖には県指定種豚場のものを当てることにした。また県は,ヨークシャー種との雑種作出には「豚の一代雑種造成要項」により指導した。
 この外,岡山県家畜貸付規則,岡山県種雌貸付要綱に定められ,優良種豚の貸付を実施した。