既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第3章 養豚の進展

第4節 養豚関係の試験研究

2.大正から昭和初期の試験研究

 岡山県種畜場における前述のような豚肉加工は,明治から大正期を通じて毎年行われたが,いわゆる試験研究という形で進められるようになったのは,大正14年(1925)からである。
 すなわち,当時一般的に養豚飼料として用いられ,また問題もあったと思われる醤油粕をいろいろの割合で給与して飼育し,これにより育成された肉豚7頭を原料として,ハム,ベーコン,ラードの製造を行い,その製品の品質や収支を比較している。そして,昭和3年(1928)には,大正14年(1925)から昭和2年(1927)まで3カ年間行った醤油粕給与による飼養試験の総括として,給与割合や飼い直し技術についての試験を行い,つぎのような成績を得,これらの肉を用いての加工試験も同時に実施している。

 ついで昭和3年(1928)から6年(1931)には,「各種飼料の豚の発育並びに肉質に及ぼす影響」として,大豆粕,ふすま,大麦,とうもろこし,混合飼料の単一給与,脱脂乳,澱粉粕の単一及び混合給与試験を実施し,増体重,枝肉歩留,産肉量,皮下脂肪の融点,肉及び脂肪の品質を調査している。これに並行して子豚,育成豚に対する肝油の飼料への添加価値についての試験も実施している。 
 昭和10年(1935)には,豚肉加工試験としてハム,ショルダー,家庭ハムの加工過程における重量変化の調査や,豚肉の醤油漬,酒粕漬の試験的な調理加工を行っている。なお,昭和9年(1934)から千屋分場においても豚肉の繋養を開始し,翌10年からは豚肉加工試験を行っている。
 その後,時代は第二次大戦に突入することとなるが,豚肉加工試験も戦局の深刻化とともに中止され,戦後の食糧難と飼料不足時代を通じて種畜場における試験は中断される形となった。
 昭和31年(1956)4月,畜産関係試験研究機関の整備により,養豚関係の業務は,岡山県酪農試験場に引き継がれたが,昭和36年(1961)10月,スエーデンからランドレース種豚が導入されたのを契機に,年をおって養豚施設の整備や研究員の充実が図られ,本格的に養豚に関する試験研究が推進されることとなった。これは本県養豚技術の向上普及の上で画期的なことであった。以後,研究の質量ともに向上し,豚の育種,管理,飼養衛生分野の研究を相ついで手がけ,毎年度その成果が公表されてきている。中でも,慢性伝染病として被害の大きい,豚の萎縮性鼻炎(AR)及びSPF豚に関しての一連の研究は,全国的にも高い評価を得ている。

図3-4-1 超音波を用いた肉質の研究