既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第5章 その他の家畜家禽

第7節 その他の家畜家禽

2 ヌートリア

 ヌートリアの原産地は,南アメリカで,アンデス山脈の両側に主として分布し,河沼などの周辺の湿地帯に生息し,主として植物質を食物としている。わが国への輸入の歴史は古く,原毛皮,生獣とも明治末期ごろといわれている。生獣が多数輸入されたのは第二次世界大戦中で,毛皮は防寒用とし,肉は食用とするのが目的であった。しかし,終戦とともに毛皮の需要が低下し,さらに飼料,資材の不足などから,多くは放逐されたり屠殺されたりした。岡山県では,ヌートリアの定着に非常に好条件の児島湾周辺を中心として生息密度が高い。その習性は夜行性で,薄暮,薄明の時間帯に最も活発に活動し,昼間は草むらの中などにひそんでいる。イネ,ナス,トウモロコシなどの農作物を害し,年間の被害額は,500万円(昭和43年)と岡山県は見込んでいる(農林省林業試験場池田ら(1968)『農作物を食害するヌートリヤ』)。昭和38年(1963)狩猟獣に指定され,県は初め1頭当たり200円(現在700円)の奨励金を出し,市町村はこれに約倍額の奨励金を上積みして,その絶滅を図っているが,昭和43年(1968)以後年々1,000頭以上(昭和51年度には2,294頭)を捕獲してもなお生息区域は漸次広がり,現在では県の東南部の一部を除いては,ほとんど県下全域に広がっている。ただし,生息数は年々減少している。なお,岡山県のヌートリアの生息数は全国一であって,捕獲実績を見ても,たえず全国の90%(昭和50年代には97%)以上の占有率を占めている。