既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第6章 牧野,飼料作物ならびに流通飼料

第2節 流通飼料

2.飼料事情の推移

(3)戦時統制時代

 昭和2年(1927)「保税工場法」の公布により私設保税工場制度が実施され,これに基づく配合飼料工場が相ついで認可増設されて,配合飼料の生産は年々増大し,畜産の振興とともにわが国飼料産業は急激な発展をとげたのであるが,昭和8年(1933)には世界的な食糧,飼料用穀類の大凶作があり,飼料用穀類の輸入は極めて困難な事態に陥り,飼料製造業界は大きな打撃を受けたのである。
 続いて終戦に至るまでの約10年間は,きびしい統制経済下において,飼料用原料も昭和13年(1938)「飼料輸入制限規則」により輸入制限が行なわれるようになり,このため飼料は不足して,価格も高騰し,横流し現象等も現れるようになったので,政府は同年「飼料配給統制法」を制定し,飼料の統制を始め,その実施機関として,同年4月「飼料配給株式会社」を設立した。
 また,昭和15年(1940)には農林省の割当てに基づく飼料用原料による製品を共同販売する「配合飼料共販株式会社」が設立され,翌16年(1941)には配合飼料の規格ならびに価格の統一を図るため,「飼料共販株式会社」を合併して新たに「飼料製造株式会社」が設立された。昭和17年(1942)にはこの「飼料製造株式会社」と前記「飼料配給株式会社」を合併して,「日本飼料統制株式会社」が設立され,飼料の配給統制を一元化し,昭和23年(1948)までこれが続けられた。
 一方,飼料製造業者に対しては「企業整備令」が適用され,当時全国で33の配合飼料工場は統廃合により9工場に圧縮された。
 戦時中,農畜産業は大きな打撃を被ったが,畜産業の中でも最も甚しい影響を受けたのが養鶏業で,飼養羽数は,昭和7年(1932)の5,400万羽を最高として戦争終結の昭和20年(1945)には1,800万羽となり,10余年の間に3分の1に減少した。このことは,岡山県の場合ももちろん例外ではなかった。岡山県における戦時中の養鶏飼料の配給については,村上邦夫(昭和16年)の『岡山県の養鶏と其の施設』に詳細記述されている。その概要を記せば次のようである。

  養鶏飼料の配給統制(村上邦夫(昭和16年)『岡山県の養鶏と其の施設』による)

 1.飼料の需給状況

  本県の養鶏は,県南部の耕地面積の狭小な地帯に密集して発達していて,飼料の大部分は輸入に依存していたので,(日華)事変勃発以来飼料の輸入制限のため,その需給はさし迫った状態に置かれるようになった。
  農林省は,昭和15年4月から,配合飼料の都道府県別割当てを実施したが,本県への割当ては,需要量の6割にもみたない状況である。その不足を補うには,他の雑飼料にまつほかなく,極力県内産飼料の確保利用に努めて来たのであるが,これらも食糧事情の悪化に伴い漸次窮屈となり,最近はとくにさし迫った事態に立ち至った。

 2.配合飼料の配給

  本県では,昭和15年1月から飼料配給機構の整備拡充に着手したが,農林省が配合飼料の都道府県割当てを実施するより前,昭和15年3月から切符制により配給統制を実施したのである。そして,同年4月都道府県割当てが実施されると,いよいよ本格的に配給統制を強化し,全県下にわたり雛用および成鶏用とも切符制により配給することとなった。
 (1)統制機関
  統制機関は,岡山県養鶏組合連合会(県養鶏連)とし,県の指示に基づき,別項記載の「岡山県養鶏連飼料配給統制要項」により,配給統制を行う。
 (2)配給機関
  現物の配給機関は,岡山県信用販売購買利用組合連合会(県産連)および保税工場直接取引きの実績のある者をもって組織する岡山県養鶏飼料配給協会の2団体である。
 (3)市町村の配給割当機関
  市町村における配給割当機関は,各市町村養鶏組合とし,これを設置していない市町村に対しては,県が指導して組合を設立させた。さし当たりこれを設立できない市町村に対しては,その市町村農会に対して割当てを行うことにした。
 (4)一般成鶏用飼料の配給方法
  1 飼料の割当ておよび方法  
  (1)割当ての基準 原則として各市町村ごとの飼養羽数による(以下略)
  (2)羽数報告 各市町村養鶏組合から県養鶏連に対し毎年2回,6月および12月末現在をもって組合員別に羽数を調査して報告させる。
  (3)羽数実地調査 各組合からの羽数報告は,ややもすれば不正,過大のものもあるので,妥当でないと認めるものについては,係員をして実地調査を行なわせ(以下略)。
  (4)割当通知 農林省からの割当通知を,県はただちに県養鶏連に移牒し,県養鶏連は前記の方法により,各市町村別割当数量を算出し,一応県に協議のうえ決定し,市町村養鶏組合に当該期間中の配給総量を通知する。
  養鶏組合は,右の通告に基づき,組合員に対する割当てを決定のうえ通告し,飼料の使用計画をたてさせる。
  養鶏連は,同時に右の割当決定に基づく県内各地区の必要数量を配給団体に通知し,配給団体はこれによって工場に対して出荷指図をする。
  2 入荷報告
  3 現品の配給
  4 現品の引取り
  5 麻袋の回収
(説明略)
  麻袋は飼料の配給を受けた日から30日以内に養鶏組合において責任をもって回収し,配給者に返還する。
(5)雛用飼料の配給方法
 育雛飼料の需要期における飼料の需給を調整し,極力産卵鶏を維持するとともに,なるべく多数の雛の育雛を可能にするためには,初生雛の計画的生産配給と,これに伴う育雛飼料は成鶏分とは別の方法で配給する必要がある。すなわち,雛に対する飼料の配給方法は,雛の配給される各月を上中下の3期に分け,各期におけるその市町村の雛の需給予定羽数により,次のような基準により配給し,第2回からは各孵卵場から報告した雛の配布ずみ報告の配給実羽数により配給する。
  第1回(孵化後40日間)
   幼雛用 100羽につき1袋
  第2回(孵化後41−60日)
   幼雛用 100羽につき1袋
  第3回(孵化後61−80日)
   中雛用 100羽につき1袋
  第4回(孵化後81−100日)
   中雛用 100羽につき1袋
 なお,昭和16年春雛用飼料の配給計画を示せば次のとおりである。(注表6−2−3)

(6)種鶏用飼料の配給
 県ならびに県養鶏連委託種鶏場および認定種鶏場に対しては,飼料不安を除き,専ら種鶏の改良増殖に努力させるため,一般採卵鶏の分とは別に優先的に配給を行なう。(表6−2−4,配給飼料の配給実績参照 6年3月まで)

 3.配合飼料以外の統制飼料の配給

 配合飼料以外の統制飼料は,ふすま,粃,屑米,屑小麦,米糠油粕等である。(以下略)

 岡山県養鶏組合連合会養鶏飼料配給統制要項

 1.本会ハ養鶏飼料ノ配給ノ円滑適正ヲ期スル為県ノ指示ニ基キ本要項ニ依リ配給ノ統制ヲ行フ
 2.本要項ニ於テ養鶏飼料ト称スルハ完全配合飼料,四種配合飼料,五種配合飼料,ふすま,粃,屑米,屑小麦,米糠油粕ヲ謂フ
 3.市町村養鶏組合ハ六月及十二月ノ各月末ニ於ケル組合員別飼養羽数及飼料ノ所要総数量ヲ翌月五日迄ニ本会ニ報告スルモノトス
 4.本会ハ県ヨリ指示アリタル飼料ノ数量ニ基キ市町村養鶏組合ニ配給予定数量ヲ通知スルモノトス
 5.市町村養鶏組合ニ対スル飼料ノ割当数量ハ当該組合ヨリ報告ノ飼養羽数ヲ基準トシテ定ムルモノトス
 6.産業組合連合会及飼料配給協会ハ養鶏飼料ノ入荷予定日及数量決定シタル場合ハ其ノ都度直チニ本会ニ報告スルモノトス
 7.本会ハ産業組合連合会又ハ飼料配給協会員ノ飼料入荷ノ報告ニ依リ市町村養鶏組合ニ飼料配給票ヲ交付スルモノトス
 8.市町村養鶏組合ハ指名配給者又ハ其ノ下受店ヨリ配給票ト引替ニ飼料ヲ受取リ公平迅速ニ組合員ニ配給スルモノトス
 9.飼料配給協会員ニ於テ市町村養鶏組合以外ノ個人ニ対シ養鶏飼料ヲ配給スル場合ハ予メ県ニ協議シ承諾ヲ受クルモノトス
 10.飼料配給票ハ一,五,一〇,五〇袋券ヲ組合セ発行ス但シ一枚ノ配給票ヲ分割使用スルコトヲ得ズ
 11.飼料代金ノ決済ハ従前通リトス但シ商店受取ノ場合ハ成ルベク現金引替トスルモノトス
 12.空袋ハ各養鶏組合ニ於テ責任ヲ以テ回収シ当該飼料配給者ニ返却スルモノトス 空袋ノ返却遅延スル場合ハ飼料ノ配給ヲ中止スルコトアルベシ
 13.飼料配給票ノ期限満了セルモノ及券面ヲ訂正シタルモノハ無効トス
 14.本会ハ市町村養鶏組合ニ於ケル飼料配給状況並ニ飼養羽数ヲ随時調査シ不都合アリタル場合ハ飼料ノ配給ヲ減ズルコトアルベシ
 15.産業組合連合会及飼料配給協会員ハ配給シタル飼料ニ付別ニ定ムル手数料ヲ本会ニ支払フモノトス