既刊の紹介岡山県畜産史

推薦のことば

岡山県知事 長野士郎

 吉備の国は,北に中国山地,南に瀬戸内海を望み,温暖な気象条件に恵まれ,三大河川は土地を肥やし,人が住み,文化を興し,農耕をするのに理想的な風土でありました。
 この恵まれた条件を背景に,本県農業は常に他県に先駆けてきたのであります。例えば,近代においては,津田永忠が手がけた池田藩直営施工の吉井川田原堰に代表される農業用水の開設をはじめ,児島湾干拓による大農地開発,作州における大農牧場の開牧,農機具の発明改良,水稲や麦,果樹の新品種育成,栽培技術の改良など枚挙にいとまがありません。
 これら農業発展の過程で,畜産も地域定着から企業化へと進展してきたわけでありますが,現在本県農業総生産額の中に占める畜産の割合は3割を越すまでになっており,今後も,さらに本県農業の基幹として一層の発展が期待されているのであります。
 この間にあって,先覚者たちの進取の気概と不屈の研究心により積み重ねられた幾多の業績,さらにはこれを継承し改良して,営々と畜産に励んだ多数の先人たちの並々ならぬ努力に対し,あらためて深く感謝を申し上げる次第であります。
 本史は,畜産業の発展にかかわってきた県民の生活なり,活動の足跡を記述されたもので,随所に農業文化の香りが濃く漂よい,暮らしにかけた祈りや闘魂の譜が聞こえてまいります。
 まさに関係者の待望久しかった大著であり,激変する現今の社会にあって,郷土のよさを見直し,よりよい明日を築いていくための糧になるものと存じます。
 編さんに当たられた各位のご労苦に対し心から敬意を表し,発刊を心からお祝いいたしますとともに,内外の多くの関係者へ広くお薦めする次第であります。