既刊の紹介肉用牛繁殖経営診断のまとめ平成11年

肉用牛繁殖経営診断のまとめ 平成11年

V 成雌牛飼養頭数規模別比較

 調査25事例のデータを、成雌牛飼養頭数規模で 10頭未満、10頭以上20頭未満及び20頭以上の3つの階層(以下、順に小規模階層、中規模階層、大規模階層とする)に分けて集計したものが表1、表2及び表3である。
 各階層に属する農家戸数は小規模階層が 11事例、中規模階層が10事例及び大規模階層が4事例であり、下記の項目について比較した。

1.経営規模

 成雌牛の飼養頭数は小規模階層が 7.2頭、中規模階層が14.1頭、大規模階層が27.0頭となっており、小規模階層と大規模階層では 3.8倍の開きがあった。
 労働力員数は小規模階層が 0.7人、中規模階層が1.0人、大規模階層が1.6人で、中規模階層は小規模階層の1.4倍、大規模階層は小規模階層の2.3倍となっているが、飼養頭数の開きと比べると差は小さい。

2.生産技術

 分娩間隔は小規模階層が13.2ヵ月、中規模階層が13.6ヵ月、大規模階層が13.7ヵ月で、規模が大きくなるほど長くなっている。
 成雌牛1頭当たり子牛販売保留頭数は中規模階層が 0.68頭と極めて少なく、売上高が最小の大きな要因となっている。
 販売子牛1頭当たりの出荷成績を見ると、日齢体重は雌子牛、去勢子牛ともに小規模階層の成績が最もよく、以下中規模階層、大規模階層の順になっている。また、販売価格も雌子牛、去勢子牛ともに小規模階層が最も高く、以下中規模階層、大規模階層の順になっており、出荷成績は規模の小さい層ほど優れた結果となった。
 成雌牛1頭当たり年間飼養管理労働時間は小規模階層が 187.6時間と最大で、以下中規模階層が139.0時間、大規模階層は109.3時間となっており、小規模階層に対して中規模階層は 25%、大規模階層は40%程度少なくなっている。

3.生産費用

 成雌牛1頭当たり当期生産費用の合計は小規模階層が 366千円、中規模階層が307千円、大規模階層が256千円となっており、規模が大きい層ほど低く、小規模階層と大規模階層との差は 110千円となっている。大規模階層が最小となったのは、生産費用に占める割合の高い家族労働費及び減価償却費が低かったためである。しかしながら、成雌牛1頭当たり購入飼料費は小規模階層が 66千円、中規模階層が74千円、大規模階層が88千円で、規模が大きい層ほど高くなっており、粗飼料を購入に頼らない小規模階層が購入飼料費を低く抑えている。ここで、成雌牛1頭当たり作付け延べ面積を見てみると大規模階層が最も大きくなっているが、これは1事例の数値が大きく影響しており、仮にその事例を除くと規模が小さい層ほど大きくなっている。

4.収益性

 成雌牛1頭当たり年間経常所得は小規模階層が88千円、中規模階層が73千円、大規模階層が70千円で、規模が大きい層ほど小さくなっている。小規模階層が最大となったのは、分娩間隔が短く、成雌牛1頭当たり子牛販売保留頭数が多いうえに、前述のとおり出荷成績が優れており、売上高が284千円と中規模階層及び大規模階層の1.3倍ほど高かったためである。一方、家族労働力1人当たり年間経常所得は小規模階層が1,163千円、中規模階層が1,280千円、大規模階層が1,294千円で、規模が大きい層ほど高くなっている。大規模階層が最大となったのは、家族労働力1人当たり成雌牛飼養頭数が16.6頭と、小規模階層の10.1頭に比べて1.6倍、中規模階層の14.0頭に比べて1.2倍の労働効率となっているためである。
 経常所得総額は、小規模階層が814千円、中規模階層が1,280千円、大規模階層が2,071千円で、規模が大きい層ほど高くなっており、小規模階層と大規模階層では2.5倍の開きがあった。