既刊の紹介肉用牛繁殖経営診断のまとめ平成12年

肉用牛繁殖経営診断のまとめ 平成12年

V 成雌牛飼養頭数規模別比較

 調査23事例のデータのうち、成雌牛1頭当たり経常所得が最高値と最低値の2事例を除外した 21事例を、成雌牛飼養頭数規模で 10頭未満、10頭以上20頭未満及び20頭以上の3つの階層(以下、順に小規模階層、中規模階層、大規模階層とする)に分けて集計したものが表1、表2及び表3である。
 また、参考に先進事例の集計結果を掲載した(表4,表5及び表6)。
 各階層に属する農家戸数は小規模階層が 10事例、中規模階層が8事例及び大規模階層が3事例であり、下記の項目について比較した。

1.経営規模

 成雌牛の飼養頭数は小規模階層が 7.0頭、中規模階層が13.6頭、大規模階層が30.7頭となっており、小規模階層と大規模階層では 4.4倍の開きがあった。
 労働力員数は小規模階層が 0.6人、中規模階層が1.1人、大規模階層が1.8人で、中規模階層は小規模階層の1.8倍、大規模階層は小規模階層の3.0倍となっているが、飼養頭数の開きと比べると差は小さい。

2.生産技術

 分娩間隔は小規模階層、中規模階層及び大規模階層ともに 13.2ヵ月で、例年規模が大きい層ほど分娩間隔が長くなっていたが、平成 11年度は規模による差が見られなかった。しかしながら、この分限間隔は長期不受胎牛を除外した成績であり、当期分娩頭数を見ると、大規模階層は 0.73頭と最も少なくなっている。また、当期受胎頭数も 0.81頭と最も少なくなっており、大規模階層の繁殖成績は11年度も他の階層に比べて劣っていると言わざるを得ない。
 販売子牛1頭当たりの出荷成績を見ると、日齢体重は雌子牛、去勢子牛ともに小規模階層の成績が最もよく、以下中規模階層、大規模階層の順になっている。また、販売価格も雌子牛、去勢子牛ともに小規模階層が最も高く、以下中規模階層、大規模階層の順になっており、出荷成績は規模の小さい層ほど優れた結果となった。これは前年と同様な結果であり、規模が大きくなるほど子 牛1頭1頭に対する十分な管理ができていないのが現状と思われる。このことは、先進事例でも同様な結果となっている。

3.生産費用

 成雌牛1頭当たり購入飼料費は小規模階層が 64千円、中規模階層が80千円、大規模階層が60千円で、中規模階層が最も大きくなっている。これには成雌牛1頭当たり作付け延べ面積が大きく影響していると考えられ、それぞれの面積は、小規模階層が 24.1a、中規模階層が15.6a、大規模階層が25.5aとなっており、面積が小さいほど購入飼料費は高くなっている。
成雌牛1頭当たり当期生産費用の合計は大規模階層が 252千円と最小で、小規模階層(307千円)と中規模階層(306千円)はほぼ同様であった。大規模階層が最小となったのは、成雌牛1頭当たり総労働時間が 131.7時間と最小で、家族労働費が低く抑えられていることと、スケールメリットによる減価償却費の低減が大きく影響している。

4.収益性

 成雌牛1頭当たり経常所得は小規模階層が 93千円、中規模階層が89千円、大規模階層が69千円で、規模が大きい層ほど小さくなっている。これは前年と同様な結果であり、先進事例でも同様な結果となっている。なお、大規模階層が最小となったのは、2の生産技術で述べたように出荷成績が他の階層に比べて低かった上に、営業外費用の成牛処分損が大きかったことが影響している。
一方、家族労働力1人当たり経常所得は大規模階層が 2,030千円と最大で、以下小規模階層の1,327千円、中規模階層の1,137千円となっている。大規模階層が最大となったのは、家族労働力1人当たり成雌牛飼養頭数が17.1頭と、小規模階層の11.8頭に比べて1.45倍、中規模階層の12.5頭に比べて1.37倍の労働効率となっているためである。
 経常所得総額は、小規模階層が 648千円、中規模階層が1,217千円、大規模階層が2,108千円で、規模が大きい層ほど高くなっており、小規模階層と大規模階層では 2.5倍の開きがあった。