既刊の紹介肉用牛肥育経営診断のまとめ>平成10年

肉用牛肥育経営診断のまとめ 平成10年

 平成9年度に経営診断を実施した肉用牛肥育経営のうち、7事例について成績を取りまとめた。
 肉用牛肥育経営では事例数も少なく、肥育形態も変化があるので、成績だけを掲載する。
 肥育牛1頭当りの所得に着目すると、7事例の平均は、-9,223円(-100,042〜107,573円)で、マイナスの経営が4事例、プラスの経営が3事例であった。なぜ、このような経営間格差が起こったのか、肥育牛1頭当りの所得に影響するであろう様々な要因について比較した。

1. 生産技術

 去勢若齢肥育牛における販売価格と肥育牛1頭当りの所得の関係を図―1に示している。
去勢若齢肥育牛の販売価格が高い経営ほど、肥育牛1頭当りの所得も高くなっている。つまり、肉質を良くするか、増体を良くすることが、経営全体の所得の確保につながると考えられる。

図―1 出荷肥育牛販売価格と肥育牛1頭当りの所得

 そこで、肉質の面から上物率を取り上げ、去勢若齢肥育における上物率(4規格以上)と肥育牛1頭当りの所得との関係について見た。その結果は、図―2のとおりである。
 上物率が高い3つの経営においては、肥育牛1頭当りの所得がプラスの経営であった。反対に、上物率が低い4つの経営においては、すべて、肥育牛1頭当りの所得がマイナスの経営であった。このように、上物率が高くないと、収益性が上がってこない。図から、上物率はおよそ50%を超えなければ、所得がプラスにならないように思われる。

図―2 去勢肥育における上物率(4以上)と肥育牛1頭当りの所得

 増体の面からは日増体量で比較した。去勢の肥育における日増体量と肥育牛1頭当りの所得についての関係を図―3に示した。

図―3 去勢肥育における日増体量と肥育牛1頭当りの所得

 図においては、ばらつきがあるため幅はあるが、日増体量が大きくなれば所得も増大する傾向にあると思われる。なお、岡山県の示している岡山和牛(去勢)肥育体系において、目標日増体量は0.78kgである。それに比べて、今回集計した経営は、岡山和牛(去勢)肥育体系の目標より低い経営が多かった。よって、岡山県の和牛を肥育するときには、日増体量がある程度高くないと、収益性が良くないように思われる。
 さらに増体を示す指標として、出荷体重と比較した。去勢肥育における出荷体重と肥育牛1頭当りの所得の関係は図―4のとおりである。出荷体重と所得の間には強い関係があるように思われる。

図―4 去勢肥育における出荷体重と肥育牛1頭当りの所得

 肥育日数と肥育牛1頭当りの所得の関係は図―5のとおりである。肥育日数と所得の関係は、ばらついており、弱いと思われる。なお、所得の高い経営は肥育日数580〜600日の範囲にある。
 岡山県の岡山和牛(去勢)肥育体系においては、肥育期間18ヵ月(547.2日)を目標にしているが、今回の集計におけるすべての経営において肥育日数は岡山県の目標よりも長かった。

図―5 去勢肥育における肥育日数と肥育牛1頭当りの所得

 また、去勢肥育における、もと牛導入価格と肥育牛1頭当りの所得の関係は図―6のとおりである。肥育牛販売価格と肥育牛1頭当りの所得では、強い関係が見られるが、もと牛導入価格と肥育牛1頭当りの所得では、関係は弱いと思われる。

図―6 去勢肥育におけるもと牛価格と肥育牛1頭当りの所得

2.経営面

 生産費用においては、肥育経営の生産費用の中でも大きなウェイトを占めている購入飼料費ともと畜費について、肥育牛1頭当りの所得との関係を見た。
 まず、肥育牛1頭当りの購入飼料費と肥育牛1頭当りの所得の関係は図―7のとおりである。

図―7 肥育牛1頭当りの購入飼料費と所得

 ばらつきは見られるが、やはり、強い関係があると思われる。所得を増大しようとしたとき、購入飼料費の低減は欠かせない。
 情報を多く集め、低価格で購入する努力は大切である。但し、いたずらに単価の安い飼料を求めるため、ダメージ品等を購入するようになり、その結果、肥育成績が下がり、最終的に所得も下がる恐れもあるので、注意したい。

 生産費用では、購入飼料費に次いで、もと畜費が大きなウェイトを占めている。肥育牛1頭当りのもと畜費と肥育牛1頭当りの所得の関係は図―8のとおりであるが、関係は薄いと思われる。

図―8 肥育牛1頭当りのもと畜費と所得

 家族労働費を除いた販売肥育牛1頭当りの生産原価と肥育牛1頭当りの所得における関係は、図―9のとおりである。
大きなばらつきが見られるが、生産原価が下がれば、所得が大きくなる傾向にあると思われる。所得の高い2経営においては、生産原価は650〜700千円の範囲にある。

図―9 販売肥育牛1頭当りの生産原価と肥育牛1頭当りの所得

 肥育牛1頭当りの売上高と肥育牛1頭当りの所得の関係は図―10のとおりである。傾向としては、肥育牛1頭当りのもと畜費と所得の関係と同様な傾向にあり、関係は弱いと思われる。

図―10 肥育牛1頭当りの売上高と所得

 肥育牛1頭当りの支払利子と所得の関係は図―11に示しているとおりである。支払利子が多くなると、肥育牛1頭当りの所得は減少している。
 投資が大きいか、預託牛が多いか、運転資金(短期借入金、営農貸越)が大きい結果、支払利子が多くなると、所得に大きな影響があると思われる。

 
図―11 肥育牛1頭当りの支払利子と所得

 最後に、飼養頭数規模と肥育牛1頭当りの所得の関係を図―12に示している。200頭以上規模の経営を除くと、飼養頭数と肥育牛1頭当りの所得には、強い関係が見られる。

図―12 肥育牛飼養頭数と肥育牛1頭当りの所得

 以上、今回経営診断集計を行い、様々な要因と所得とを比較した結果、所得に影響する要因を以下にまとめる。

生産技術としては、
@肉質を良くすること。
 黒毛和種の去勢肥育経営においては、比較的市場価格の変動が少ない4規格以上を目指すことが目標になる。上物率を上げることによって、枝肉単価を上げ、結果的に販売価格を向上させることが、所得の確保につながる。
A増体を良くすること。
 岡山県の和牛は、増体が良いことが特徴の一つである。出荷体重と所得に強い関係が見られ、出荷体量の大きい経営が高い所得を得ている。同時に日増体量も良ければ所得は高い傾向にある。そのためには、適切な飼料給与設計とその実行が欠かせない。
経営面においては、
@ 生産費用を低減すること。
 生産費用の中でも、大きなウェイトを占めている購入飼料費を下げることによって、所得を確保する。しかし、前述のように、飼料の品質を落としてまで、低コストにこだわると、肥育成績まで影響すると思われる。
A肥育牛1頭当りの負債を軽減すること。
 肥育牛1頭当りの支払利子と所得の関係において、強い関係があると思われる。支払利子が発生する要因としては、負債の増加が上げられるが、その中でも高金利の借入金が増えると、経営を圧迫する。金利の高いものとして、証書貸付などの短期借入金、営農貸越等があげられる。なるべく、それらに頼らない経営を目指すべきである。長期借入金(預託も含む)も多額になると、金利は低いものの、償還元金と支払利子額は大きくなるので、十分自分の経営にあった投資が必要になる。

 肉用牛肥育経営においては、岡山県の子牛市場平均価格も比較的高値で推移しており、もと畜費が大きくなっている。一方、枝肉価格はあまり上がることが期待できないため、収益性は低い状態が続くものと予想される。