既刊の紹介酪農経営診断のまとめ平成10年

酪農経営診断のまとめ 平成10年

今後の課題

 酪農経営の収益性は依然低い水準に止まっている。その結果,酪農家は経産牛1頭当たりの産乳量の追求や飼養頭数規模拡大,経営の複合化などで所得の維持・拡大を図ってきた。しかし,その過程で様々な障害が発生し,経営主の意図に反して,産乳量の向上や規模拡大が必ずしも所得の向上に結びついていないケースが見られる。
 例えば,濃厚飼料の多給による乳量の向上が,繁殖障害などの疾病の発生を招き,その結果,耐用年数が短縮され,購入飼料費,診療衛生費,経産牛処分損の増加が,牛乳販売収入の増加を上回り,所得が目減りするといった問題を招いている。
 飼養頭数規模拡大は,Wの経産牛飼養頭数規模別比較でも見たとおり,多額の投資と搾乳部門以外の外部化による費用増が,経産牛1頭当たり所得を減額させ,労働生産性の改善にもかかわらず,飼養頭数規模拡大が期待したほど所得拡大につながらない結果を招いている。そのうえ,飼養頭数規模拡大が土地の拡大を伴わずに実施されている場合がほとんどであり,地域内に堆肥センターがない場合は,環境問題が経営の継続性に影響を及ぼすことも考えられる。
 酪農経営を展開する上で,@土地,A労働力,B資本,C技術レベル,D経営管理能力,E地域環境といった制約条件があり,これらの条件を無視すれば,計画どおりに収益が上がらないばかりか,環境問題や過重労働,過重負債などが発生し,経営破綻に追い込まれる。したがって,経営計画を立てるときは,これらの制約条件をよく検討することが肝要である。