既刊の紹介酪農経営診断のまとめ平成15年

酪農経営診断のまとめ 平成15年

飼養方式別比較

 次に規模拡大の効果を見ることにする。集計対象20事例のなかで70頭以上の層はすべて、放し飼い方式を採用し、飼養頭数規模の拡大を実現している。そこで、飼養方式に着目し、繋ぎ飼い方式の16事例と放し飼い方式4事例を比較検討した。
 各階層の収益水準と収益の多寡に影響を与える主な要因を整理したものが表4である。各階層間を比較すると次のように整理できる。

1.飼養規模

 各階層の経産牛平均飼養頭数は、繋ぎ飼いが35.4頭、放し飼いが99.2頭であった。

2.経常所得

 各階層の経常所得総額の平均は、繋ぎ飼いが5,233千円、放し飼いが17,871千円であった。
 また、経産牛1頭当たり経常所得は、繋ぎ飼いが145千円、放し飼いが173千円であった。
 一方、家族労働力1人当たり経常所得は、繋ぎ飼いが2,786千円、放し飼いが6,098千円であった。
 このように家畜生産性も労働生産性も、放し飼い=大規模層ほど高いという結果となった。

3.売上高

 売上高を見ると、繋ぎ飼いが874千円、放し飼いが939千円と、放し飼いで高くなっている。これは経産牛1頭当たり産乳量が、繋ぎ飼いが8,366kgであるのに対し、放し飼いが9,069kgと放し飼いが高いためである。

4.生乳100kg当たり生産コスト

 次に生乳100kg当たりの生産コストを見ると、繋ぎ飼いが7,909円、放し飼いが7,183円となっており、放し飼い=大規模層で低くなっている。これには規模のメリットによる労働費の削減効果が大きく貢献している。このことは家族労働費を除いた生産コストで比較すると、各階層の差があまり見られないことからも理解できる。

5.その他の特徴

 労働生産性を示す指標をみると、労働力1人当たり経産牛飼養頭数は繋ぎ飼いが17.1頭、放し飼いが30.1頭、また経産牛1頭当たり飼養管理労働時間は繋ぎ飼いが128.2時間、放し飼いが75.9時間となっており、放し飼い方式で労働生産性が大きく向上している。

6.放し飼い方式の効果

 以上の結果から放し飼い方式導入に伴う効果を整理すると、放し飼い方式導入に伴い、労働生産性が飛躍的に向上して、労働力1人当たりの管理可能頭数が増加し、その結果、飼養頭数規模が大きく拡大し、経常所得総額並びに労働力1人当たりの経常所得額が大きくなっている。