既刊の紹介岡山県畜産史

第2編 各論

第7章 家畜衛生

第5節 乳肉衛生

2 牛乳衛生の進展

 乳肉衛生取締りに関する行政事務は,古くは警察獣医の担当であったが,昭和21年(1946)2月,教育民生部衛生課へ移された。さらに同年5月,乳肉衛生係は,経済部畜産課へ移され,昭和23年(1948)3月衛生部公衆衛生課へ移された。

(1)牛乳営業取締関係法規の変遷

 明治の文明開化とともに肉および牛乳の需要は急速に増加し,このころから牛乳を搾取,販売する営業がなり立つようになり,明治8年(1875)に岡山県で最初の牛乳屋上垣源夫が岡山市番町に開業した。
 搾乳業者は邑久,和気,小田および浅口の県南の諸郡に多く,また,搾乳対象牛は洋牛および雑種牛であった。
 牛乳の衛生上の取締規則は,明治33年(1900)4月7日「牛乳営業取締規則(内務省令第37号)」が公布されたのに始まる。
 この規則のおもな内容は次のようであった。@牛乳の搾取および乳製品の製造をする場合は地方長官の許可が必要であること。A牛乳搾取所の構造設備が地方長官の定めた(大正10年県令第83号「牛乳営業取締規則施行細則」)基準に合致していること。B牛乳および乳製品の成分規格が定められたこと。C牛乳を搾取してはならない疾病,すなわち牛疫,炭疸,伝染病性胸膜肺炎,狂犬病,結核,痘瘡など14疾病が定められたこと。D分娩後7日以内の乳牛から搾乳を禁止していること。E結核,癩病,梅毒および伝染病にかかっている者またはその疑いのある者は牛乳営業者となることができないこと,また,牛乳の取扱場所に立ち入ってはならないこと等が規定された。また,衛生技術的な面が行政上に反映して,岡山県に牛乳衛生技術者が配置され,科学技術的行政による牛乳衛生指導が行われるようになった。その後,昭和8年(1933)にはこの規則の根本的な大改正が行なわれた。その概要は次のとおりである。
 @牛乳を特別牛乳およびその他の牛乳の2種類に区別すること。A特別牛乳以外の搾取業者に対しては,従来の物的設備基準を廃止し,許可営業から外して届出制としたこと。B牛乳取締の主体が牛乳処理場に移ったこと。C低温及び高温の殺菌方法,冷却保存の基準をはじめとして,容器,包装,乳製品等の標示を定めるとともに,原料牛乳および市販牛乳の成分規格の中に細菌数の規制が新たに加えられたことであった。
 昭和22年(1947)12月に食品衛生法(法律第233号)が公布施行された。規定するところは,不良食品の排除,化学的合成品および規格基準の制定,標示の指導および取締り,製品検査制度,営業の許可制度,食品衛生監視員制度,食中毒の処理等がおもなものであった。その具体的な基準として食品衛生法施行規則(厚生省令第23号)および「食品,添加物,器具及び容器包装の規格および基準」(厚生省告示第54号)が定められ,従来の牛乳営業取締規則の内容はすべて新法および省令に吸収された。
 その後成分規格等に関しては,昭和25年(1950)に「乳,乳製品及び類似乳製品の成分規格等に関する省令(厚生省令第58号)」に移された。さらに,昭和26年(1951)「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(厚生省令第52号)が制定された。この省令は,昭和38年(1963)まで6回にわたって一部改正が行なわれ,これによって,牛乳,乳製品の衛生に関する規定が著しく整備され,牛乳衛生行政の近代化および科学化が図られた。また,技術的にも大きな躍進がみられた。この省令のおもな内容は生乳,乳製品および乳等を主要原料とする食品の3つに区分した。また,食品の販売等が禁止されている獣畜の疾病,食品の成分規格,製造方法,保存方法の基準,成分規格の試験法,牛乳,乳製品の容器の規格基準および標示の基準等となっている。