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アンケート結果全体から堆肥の評価基準として腐熟度が最重要と判断された。これは平成4年度に当分室(当時は普及園芸課旭地方専技室)が県内の中核的な耕種農家を対象に類似の調査をした結果(以降、平成4年度調査)と変わりなかった。家畜糞の種類や副資材との混合割合といった堆肥の材料を重視している点も同様であった。堆肥の施用目的では「物理性改善」や「化学性改善」といったいわゆる土づくりに関する回答が多く、これまた平成4年度調査の結果と同様であった。一方、有機農産物生産による付加価値化を目的とした堆肥施用は意外と少なかった。年間10a当りの堆肥投入可能金額は5,000〜7,900円が中心であり、一方10,000〜14,900円にもピークがみられ、堆肥の施用価値評価が分化していることを窺わせた。
回答者別にみると、農家、普及員、市町村職員・JA営農指導員で堆肥評価の相違が見られた。特に農家、普及員間で大きく評価の異なる堆肥があった。また、堆肥選択の理由から普及員や市町村職員・JA営農指導員では特に腐熟度を最重視するのに対し、農家は腐熟度と同程度、散布しやすさを重視すると思われた。
作目別では、果樹、野菜・花卉では牛糞を原料とした堆肥を選択する傾向が強かった。堆肥選択の理由としては、どの作目も腐熟度の回答が最も多かった(野菜・花卉における「色がよい」を実務的な腐熟度判断と考えた)。なお、果樹でのみ「肥料成分少ない」が、また水稲のみ「散布しやすい」の回答がみられた。年間10a当りの堆肥投入可能金額では、水稲で5,000〜7,900円が中心であり、果樹、野菜・花卉はこれより高い金額にあると推定された。なお、平成4年度調査では水稲で3,000円未満、野菜・果樹で10,000〜19,000円が最も多い結果となっており、今回の調査で水稲の金額が高くなっている理由として、土づくりの重要性が平成4年度時より認識されてきた点と、「土づくりフォーラム」の参加者が土づくりに対する意欲の高い農業者と関係機関であった点が考えられた。
堆肥の原料畜種別では、特に鶏糞を原料とした堆肥を選択した回答者が、「化学肥料替わり」や「特有成分含む」等、牛糞堆肥や混合畜種堆肥より幅広い施用効果を期待していることが窺われた。年間10a当りの堆肥投入可能金額は牛糞堆肥、混合畜種堆肥で5,000〜7,900円が中心だったのに対し、鶏糞堆肥では3,000〜4,900円が中心とやや低めであった。
展示堆肥につき、臭気、手触り、色について品質判定し、併せて展示場におけるパンフレット準備有無と堆肥の人気投票結果との関連を単相関分析により検討したところ、パンフレットの有無と人気投票結果間に1%の危険率で有意な相関がみられた。堆肥選択の理由では「パンフレッットを見て」の回答数は多くなかったが、回答者はパンフレットにより肥料成分や堆肥材料等の情報を得て堆肥選択を行っていることが推定された。
以上から今後の堆肥生産、流通のあり方として次のとおり整理した。
1 堆肥の腐熟度はこれからも堆肥の品質判定上重要な項目である。
2 今回の調査結果を作物別に牛糞を例として、「持続性の高い農業生産方式の導入に関する指針」における10a当り堆肥施用量を用い、堆肥の流通価格を概算するとともに、特に求められる条件を作目別に示した。
3 パンフレットの効用は意外と高い。堆肥の販売を促進するためには見落としがちな重要なポイントである。