ホーム>岡山畜産便り > 岡山畜産便り1998年1月号 > エリートカウからの受精卵移植状況について |
岡山県では,平成5年度より超高能力牛をアメリカから導入しています。
これらの超高能力牛から受精卵(エリート卵)を採取し,牛群検定農家に提供(有料)することにより,低コスト生産による国際化に対応できる酪農家の育成を推進しています。また,平成8年度からは,雌雄産み分け技術(PCR法:遺伝子増幅法)を活用し,雌雄判別をした受精卵を全国に先がけて譲渡し,高能力牛の効率的生産及び,牛群改良のスピード化を図るためのシステムづくりをしています。
今回は,津山家畜保健衛生所管内で,平成7年2月よりエリート卵の移植を開始し,現在までの移植状況と,その成果について報告します。
1.移植状況と受胎率について
平成6年度から移植頭数は表1のとおり年々増加し,現在平成9年12月までに79卵を移植しました。その内訳は,平成6と7年度に7と10卵を移植し4と3頭が受胎(受胎率57.1%と30%)しました。平成8年度は33卵を移植し,19頭が受胎(57.6%)しました。平成9年度は12月現在で,29卵を移植し,14頭(58.4%)が受胎しています。平成6〜9年度までの平均受胎率は,54.1%です。
受精卵の供給方法は,凍結卵,新鮮卵,雌雄判別卵の3方法で,平成7年度までは,凍結卵が6〜7割を占めていましたが,平成8年度からは雌雄判別卵の供給開始により,雌雄判別卵の移植割合が年々増加しています。これは,受胎すれば必ず雌が産まれ,経済効果が非常に高く,改良スピードが速いため酪農家の要望が増加したことと,総合畜産センターの超高能力牛の採卵頭数が増加した結果と考えられます。
また,凍結,新鮮,雌雄判別卵の受胎率には大差はなく,雌雄判別卵のように受精卵細胞の一部をカットしても受胎にあまり影響がないことが確認され,凍結卵においても,融解(三段階希釈法)後の生存性も非常に高くなりました。これは,PCR法による雌雄産み分け技術と凍結卵の凍結・融解技術がほぼ確立されたものと考えられます。
表1.エリート卵移植状況と受胎率
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移植頭数 | 受胎頭数 | 移植頭数 | 受胎頭数 | 移植頭数 | 受胎頭数 | 移植頭数 | 受胎頭数 | |
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2.エリート産子状況と雌雄の比率について
現在,県下でエリート産子が70頭誕生し,そのうち雌が41頭です(県下雌雄比,59%:41%)。
当所管内では,表2のとおり平成6・7年度に7頭,平成8年度は現在19頭の合計26頭のエリート産子が誕生しており,雌雄の比は,平成6・7年度は凍結・新鮮の無判別卵において57%:43%の比率で,雌が雄より若干多く産まれました。そして,平成8年度は雌15頭,雄4頭(79%:21%の比率)と雌雄判別卵の効果で雌の生産が飛躍的に増加しました。
今後,雌雄判別法を用いた受精卵移植による牛群改良の期待はさらに高まるとともに,もっと簡便に雌雄判別卵を移植できるような雌凍結卵の要望も高まると考えられ,それに答えるため,総合畜産センターでは,受精卵譲渡の安定化と雌雄判別凍結卵の凍結・融解方法の確立に全力で取り組んでます。また,当所に於いても総合畜産センターと連携を密にして,受胎率の更なる向上と安定化に向けて努力しています。
表2エリート産子状況と雌雄の比率
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♀2 66.7% |
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♀0 0% |
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4 | ♀2 50.0% | |
♂1 33.3% | ♂1 100% | ♀2 50.0% | ||||||
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♀1 50.0% |
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♀1 100% |
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♀2 66.7% | |
♂1 50.0% | ♂0 0% | ♂1 33.3% | ||||||
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♀5 55.6% |
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♀1 100% |
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♀ 8 | 19 | ♀15 78.9% |
♂4 44.4% | ♂0 0% | ♂ − | ♂4 21.1% | |||||
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♀8 57.1% |
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♀1 100% |
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♀ 8 | 26 | ♀19 73.1% |
♂6 42.9% | ♂0 0% | ♂ − | ♂7 26.9% |