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家畜ふん尿は適切な処理で窒素,リン酸,カリ等を含む有益な有機質肥料に生まれ変わります。
家畜ふんは,処理技術が進み,現在各種補助事業により集約的な堆肥化処理施設が整備されつつあります。しかし,尿汚水は処理利用法が難しく,依然としてはっきりとした処理方向が見えません。
当畜産センターでは,家畜ふんの堆肥化技術,悪臭防止技術はもとより,合理的な尿汚水処理の開発を目指しています。今回は尿汚水の浄化処理および土地還元を前提とした処理方法について述べてみます。
家畜尿汚水は,一般の排水に比べ有機性汚濁物質や窒素成分が非常に多く含まれています(表1)。浄化処理に適したBOD:窒素:りんの割合は,100:5:1といわれていますが,家畜の尿汚水は100:20〜40:2〜4と窒素の割合が高く,浄化処理を困難にしています。また,もう一つの特徴はBOD濃度が高いことがあげられます。肥育豚を人間のし尿と比較するとBOD量で10人分となり,このためふんと尿をできるだけ分離することが汚水処理の容易さ,低コスト化の大きな要素となります。
| pH | BOD | SS | 全窒素 | 全リン | |
| 牛尿汚水 | 8.78 | 13,459 | 1,598 | 7,543 | 63.3 |
| 豚尿汚水 | 8.08 | 11,808 | 3,764 | 5,256 | 232.2 |
(ア)活性汚泥法
活性汚泥法は広く用いられている技術であり,曝気で微生物を増殖させ,活性汚泥という微生物が有機物を分解する方法です。活性汚泥法には,1つの槽で流入,曝気,沈殿,排出を行う「回分式」と尿汚水の投入と処理水の排出が連続的に行われる「連続式」の2つの方法があります。回分式活性汚泥法としては,神奈川県畜産試験場において開発されたオキシデーションディッチ法(図1)が比較的低コスト(豚1頭あたり1.5〜2万円,牛は豚の10倍)で維持管理もしやすいことから畜産農家で普及しています。

(イ)接触酸化法
接触酸化法は,活性汚泥法と異なり微生物を浮遊させず坦体(瀘材)に付着させて処理する方法です。この方法は処理能力が活性汚泥法より劣るものの汚水の負荷変動に強く汚泥の発生量が少ないことから維持管理が容易となります。当センターでは軽量気泡コンクリート(TBX)を瀘材として用いた処理技術(図2)を開発していますが,この処理方法では,BOD,窒素とも90%以上の高い除去率が得られています(表2)。また,この方法は群馬県農業総合試験場でも実規模において試験されており当センターと同様に高い処理効果が得られています。
現在,実用化を目指し,瀘材に空き缶等を利用した効率的な処理方法や処理水の脱色をすすめています。

| BOD(ppm) | 全窒素(ppm) | 全リン(ppm) | 透視度(cm) | |
| 豚尿汚水 | 1,789 | 1,399 | 73 | 3.0 |
| 処理水 | 20 | 130 | 10 | 16.0 |
浄化処理は,環境負荷の少ない処理水として放流を行うことができますが,コストが高く敬遠されがちです。尿汚水自体は,肥料成分が含まれており,圃場を多く保有する酪農家では,圃場へ還元することが主流となっています。ところが,近年悪臭問題等がクローズアップされ,尿汚水の圃場還元は難しくなってきています。
このような状況の中で,圃場還元を主目的とした簡易処理法が注目されており,現在,当センターでは,悪臭発生が少ない液肥作成法を検討しています。そこで,これまでの試験成績をもとに述べてみたいと思います。
(ア)回分式簡易曝気法
不用となった容積6k程度の廃棄酒樽に散気管を取り付け,汚水1t,1時間あたり5k程度の通気を行います(図3)。これにより,不快度の高い硫黄化合物類臭気が48時間程度で軽減され,アンモニア主体(2,000ppm程度)の臭気となります(表3)。官能的にも臭気指数が半減し,圃場散布時の臭気は軽減されます。しかし,曝気停止後臭気は早期に増加することから圃場散布直前までの曝気は不可欠と考えられます。また,曝気時には高濃度の臭気が発生するので,土壌脱臭や活性汚泥脱臭等による処理の併設が望ましいと考えられます。

| 臭気成分(ppm) | 官能試験(臭気指数) | |||
| アンモニア | 硫化水素 | メチルメルカプタン | ||
| 曝気直後 | 720 | 533.4 | 52.9 | 69.1 |
| 1週間後 | 1,800 | 0.065 | 0.003 | 34.9 |
(イ)活性汚泥利用による簡易曝気法
浄化処理に用いられる活性汚泥により処理する方法で施設設計等は浄化処理に準じて行います。しかし,目的が悪臭の低減と液肥化であることから施設自体はコンパクトに作成すべきで,前述の酒樽等で十分と考えられます。実験室レベルの結果では,BOD容積負荷が1s/k・日以上(通常の活性汚泥法は0.5s/k・日程度)になるとアンモニアが数10〜数100ppm程度発生しますが,硫黄化合物類は6時間程度で低下しており,上記の回分式簡易曝気法より官能的に低いものと考えられます。現在,脱臭方法も含めた実規模で試験を行うとともに,土壌微生物等を応用した試験を行っているところです。
以上,尿汚水の処理方法について述べてきましたが,これら施設を設置しても適正な管理と環境保全に対する認識が重要です。当センターにおいても畜産農家の方々の要望に対応して新たな技術開発はむろんのこと関係機関と一体となった支援につとめていきたいと考えています。