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1 豚の人工授精
豚の人工授精は,農林水産省畜産試験場で試験が開始され,昭和25年頃から本格的に取り組まれるようになったが,液状精液を利用したもので飛躍的には普及しなかった。
岡山県総合畜産センター製の液状精液利用本数から,県内の人工授精実施率を推計すると10〜20%程度となる。豚液状精液の保存は,15℃で4〜6日までであり,保存期間内に雌豚が発情しない場合は,人工授精に利用されず廃棄される。
精液を凍結保存すれば,雌豚の発情に合わせて融解後人工授精することができる。この利便性のため,牛では,交配のほとんどが凍結精液による人工授精となっているが,豚では,実用化に至っていない。

2 豚精液の凍結技術のあゆみ
1)技術のあゆみ
豚凍結精液は,Hessら(1957)や和出ら(1969)の受胎報告などが見られる。
日本での実用化は,昭和57〜62年度の「豚凍結精液利用実用化促進事業」及び,「豚凍結精液実用化確立事業」で取り組まれた。この6年間の全国的な野外試験によって,豚凍結精液の実用化技術が確立されたとされている。
しかし,日本を含めどの国からも,牛のように一般的に,肉豚生産用として凍結精液を利用しているという話題は聞かれていない。
2)岡山県のあゆみ
岡山県でも総合畜産センター設立当時から研究に取り組み,研究報告によると,片山ら(1991),野上ら(1998),河原ら(1999)の取り組みが見られる。
岡山県総合畜産センターでは,太型ストロー法に部分的改良を加えて,細型ストローと2段階凍結法,そして,希釈液の糖をトレハロースに変更するなどして実用化をめざしている。
現在は,受胎試験に,主としてバークシャー種(B種)を供用し,耐凍剤として希釈液に添加するグリセリン濃度の影響を検討している。
凍結精液による交配は,その都度精液を融解して融解液で希釈し,発情開始後24時間に1回さらにその後6〜12時間に1回,計2回人工授精する。
表1のとおり,凍結時のグリセリン濃度は低いほど成績が良くなる傾向にあり,現在は2%で受胎試験をしている。
なお,グリセリン3%でも注入液量や精子数では成績が異なるが,表2のように,100億の精子を90p注入したときに良い成績が得られている。
表1.グリセリン濃度と分娩成績
注)B種の自然交配での平均産子数は8.5頭/腹。
| グリセリン濃度 |
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7% |
11頭 |
0 % |
0 頭/腹 |
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5 |
24 |
41.7 |
4.8 |
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3 |
15 |
73.3 |
8.7 |
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2 |
試験中 |
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60億/回 |
46ml/回 |
5頭 |
60% |
6.3頭/腹 |
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60 |
66 |
5 |
60 |
10.3 |
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100 |
90 |
5 |
100 |
9.2 |


写真2 凍結精液保管容器と 写真3 凍結精液による産子と母豚
人工授精用注入器
3 実用化までの課題と対策
1)器具器材
凍結精液を保管する容器は,牛の凍結精液で利用されているものを利用できる。
凍結精液を融解する融解液は現在市販されていないが,自ら調整すれば対応できる。
2)技術と資格
家畜人工授精師は,家畜改良増殖法に基づく資格であるが,養豚農家が自分の飼養する繁殖雌豚へ人工授精する場合は,資格取得の必要はない。
しかし,豚家畜人工授精は,特別の知識と技術を必要とすることから,講習会等での研修も必要となる。
4 豚凍結精液の実用化に向けて
豚では,凍結精液利用の前提となる人工授精実施率が低く,関係者が一丸となってこの技術の普及啓蒙に取り組んでいくことが重要と考える。
なお,種豚生産農場で優良種雄豚の精液を長期保存する目的での利用については,現状の凍結技術で十分有効である。