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尿素の飼料化について最近巷間に相当喧伝されているが,これについて畜産局飼料課長より使用法等について照会者に回答された。その内容の主なものは次の通りである。
尿素の飼料としての真価については未だ問題があり,諸外国においても蛋白質飼料資源の不足を補うための代用的なものとして利用しているようであるが,尿素の飼料化については次の通りである。
尿素を飼料として使用出来る家畜は乳牛,和牛,緬羊,山羊だけに限られて,その他の馬,豚,兎,鶏,鵞等に与えても効果はない。
牛,羊は4つの胃を持っていて,そのうち第1胃の中に沢山の微生物がおりますが,この微生物が尿素を食べ栄養をとって自分の体をつくり,その栄養のよくなった微生物が第2,第3胃を通り第4胃,腸で消化されて牛,羊の栄養物になる。
この微生物の体は主として大豆粕の成分と同じような蛋白質で出来ているからつまり尿素は微生物を通じて間接に蛋白質を牛,羊に供給することとなり,大豆粕蛋白の代用を勤める訳である。
尿素は約46%の窒素を含んでおり,これを蛋白質に直すと,大豆粕の蛋白質の6倍位になるから,大豆粕の代用としては少量与えてもよい訳であるが,尿素は蛋白質が多くても澱粉質がないから,代用するときには,穀類,糠皺類,藷類澱粉粕等の澱粉質飼料を大豆粕が持っている澱粉質を補う程度にまぜ合せて与えなければならない。であるから尿素は大豆粕のような蛋白飼料の代用にはなるが穀類,糠,皺,藷類等の澱粉飼料の代用にはならないから,呉々も誤解のないよう願います。
前にも述べたように尿素は蛋白質飼料の代用であるから,主として蛋白質を多く要する乳牛の産乳用飼料,犢牛の成長飼料に効果的,経済的に使うのが得策であって,和牛の労働用,肥育用飼料や,緬山羊の産乳,産毛用飼料中の蛋白質の代用としても勿論有効であるが,未だ正確な実験結果がないので分り次第御知らせいたします。
さて尿素の与え方であるが,尿素を単味で与えてはいけない。必ず他の飼料と混ぜ合わせてやることになるが,この際前に言った通り澱粉質飼料と抱き合わせることを忘れてはならない。
尿素を大豆粕に代用する場合,尿素と組合わせる澱粉質飼料を2,3挙げると大豆粕1s(265匁)の代用として
(1)尿素150g(40匁)と皺1.4s(372匁)(2升3合)
(2)尿素165g(44匁)と脱脂米糠1.3s(346匁)(1升7合)
(3)尿素170g(45匁)と米糠1.0s(266匁)(1升6合)
(4)尿素180g(48匁)と大麦1.1s(293匁)(1升1合)
(5)尿素180g(48匁)と燕麦1.2s(319匁)(1升6合)
(6)尿素220g(59匁)と甘藷(乾)1.0s(266匁)
(7)尿素240g(64匁)と澱粉粕(乾)1.3s(346匁)
となる。
尿素の1日の給与量は牛では200−300g(53匁−80匁)が適量であるが,1日3回与えるときは,この量の3分の1を,つまり1回に70−100g(18匁−26匁)を他の澱粉質飼料とよくまぜ合わせて,1ヶ所に尿素がかたまらないようにして与えましょう。
次に給与の実際について話を進めると
乳牛の体重の増減を起さず,単に健康を保つだけに必要な飼料
給与例
冬期
稲藁 3s(780匁)
野乾草3s(780匁)
サイレーヂ(甘藷曼)13s(3貫460匁)
大根,蕪の花6s(1貫600匁)
計 25s(6貫620匁)
夏期
生野草 24s(380匁)
稲藁 1s(270匁)
青刈作物2s(540匁)
(燕麦,玉蜀黍)
計 27s(7貫190匁)
(イ)1日の泌乳量が12s(6升7合)までのものは,その乳量の約2分1量の皺又は脱脂米糠を維持飼料に加えて与えれば充分であるが,出来れば下例のように3,4種の飼料を配合して与えるとなお一層効果がある。
給与例
乳10s(5升5合)の場合は,次のようなものを10s×1/2=5s与えて下さい。
(1)皺又は脱脂米糠5s(1貫330匁皺8升又は脱脂糠6升5合)
(2)飼料名 配合割合 配合実量
脱脂糠 30%1.50s (400匁2升)
皺 20%1.00〃 (270匁1升6合)
大麦混合糠20%1.00〃(270匁3升2合)
大麦 15%0.75〃 (200匁8合)
甘藷(乾)15%0.75〃(200%)
計 100% 5s
備考 生甘藷を与える場合は乾いたものの3倍を与えること。
(ロ)1日の泌乳量が15s(8升3合)までのものは,その乳量の5分の2量の産乳飼料を維持飼料に加えて与えて下さい。
給与例
乳量15s(8升3合)の場合は次のようなものを15s×2/5=6s与えて下さい。
(1)飼料名 配合割合 配合実量
皺 50%3s (800匁4升7合)
大麦 50%3〃 (800匁2升9合)
計 100%6〃
(2)
脱脂米糠 30%1.8s(480匁2升4合)
皺 30%1.8〃(480匁2升9合)
大豆粕 10%0.6〃(160匁)
甘藷(乾)30%1.8〃(480匁)
計 100%6.0s
備考 生甘藷を使うときは乾甘藷の3倍1.8s×3=5.4s(1貫400匁)与えること。
乾燥澱粉粕を使うときは乾燥甘藷の1.4倍1.8s×1.4=2.5s(670匁)与えること。
(ハ)1日の泌乳量が15s(8升3合)以上のものは,その乳量の3分1量の産乳飼料を維持飼料に加えて下さい。但しこの際に維持飼料として良質の乾草を前の標準より幾分多目に与えるように注意すること。
給与例
乳量18s(1斗)の場合は次のようなものを18s×1/3=6s与えて下さい
飼料名 配合割合 配合実量
米糠 40%2.4s (640匁3升8合)
皺 20%1.2〃 (320匁1升9合)
大豆粕 20%1.2〃 (320匁)
甘藷(乾)20%1.2〃(320匁生なら960匁)
計 100%6.0s
備考 米糠は夏期には醗酵しやすいから,なるたけ脱脂糠を与えましょう。
脱脂糠であると米糠の1.2倍2.4×1.2=2.88s(770匁,3升7合)与えること。
乳牛に対する給与の1例は大体上のようであるが,維持飼料についてはこの給与例は体重500s(133貫)のものであるから,この体重に比べて重いものは,22.5匁(約6貫)毎に乾草1s(270匁),生草なら3s(約800匁)を増殖してやって下さい。産乳飼料の方は産乳量に応じて計算して下さい。
なお炭酸カルシウム,食塩を濃厚飼料の各々2%及び1%の割に必ず添加することを忘れないで下さい。
(以下次号)