| ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和26年10月号 > 草地の改良に用いられる2,3の牧草について | 

赤クロバーは荳科飼料作物としては世界の最も多くの場所で栽培され最も重要視されている。アメリカ・オランダ・イギリス・ドイツ・及びデンマーク等においては極めて重要な飼料作物であり,日本においても広く栽培され特に北海道地方の酪農の基盤の一つをなしていることは周知の事実である。
 赤クロバーの可消化成分,無機成分を記すると次の通りで飼料価値の高いことを知ることが出来る。
 特に葉の栄養価は高く(第3表)且つ石灰含量の大なることは他荳科牧草より優れた処である。
| 粗蛋白質 | 粗脂肪 | 可溶無窒素物 | 粗繊維 | 純蛋白質 | 澱粉価 | |
| 乾草 | 11.5 | 2.4 | 26.5 | 11 | 8.9 | 33.6 | 
| 生草 | 2.5 | 0.3 | 6 | 2.3 | 1.9 | 8.7 | 
| 石灰 | 燐酸 | 加里 | |
| 乾草 | 20.1 | 5.6 | 15 | 
| 生草 | 4 | 0.9 | 8.9 | 
| 粗蛋白質 | エーテル浸出物 | 可溶炭水化物 | 繊維 | 灰分 | 石灰 | |
| 茎 | 8.19 | 1.33 | 35.42 | 49.1 | 5.96 | 1,797 | 
| 葉 | 21.56 | 4.35 | 34.53 | 28.7 | 0.86 | 2,841 | 
| 頭花 | 22.13 | 2.3 | 40.79 | 26.1 | 8.68 | 1,658 | 
| 窒素 | 燐酸 | 加里 | 石灰 | |
| 地上部 | 2.48 | 0.44 | 2.35 | 2.58 | 
| 地下部 | 0.94 | 0.21 | 0.55 | 0.29 | 
| 計 | 3.42 | 0.65 | 2.9 | 2.87 | 
| 草 丈 | 1区当風乾物量 | 地上部に対す る根の割合 | ||
| 地 上 部 | 根 | |||
| 赤クロバー1年目 | 59p | 409.4g | 130.2g | 31.64% | 
| 〃 2年目 | 67 | 509 | 207.5 | 40.74 | 
| コモンベッチ | 98 | 310.2 | 55.8 | 17.95 | 
| ヘアリーベッチ | 101 | 361.2 | 62.2 | 17.21 | 
備考 1区とは2尺平方深さ3尺
 赤クロバーの可消化純蛋白質と他の濃厚飼料のそれとは比較すれば次の通りである。
| 赤クロバー | 大豆粕 | 脱脂糠 | 生米糠(無糖) | 麸(不良品) | 麸(良品) | |
| 可消化蛋白質 | 乾草8.9% | 40 | 10 | 9 | 9 | 12 | 
 深根性であるから大低の土地には生育するが最適土壌は埴土,壌土で腐埴質に富み表土の深い処がよい。
 地下水の高い処,停滞水のある処は不適当である。
 土壌酸度は大体pH5.8−6.5で酸度が強くなると急に生育が劣る。このため石灰による中和が必要であるがこの場合多量の有機質を応用しないと石灰の効果は減退する。
 開墾地等の酸度の高い地にはこの土性の矯正が必要である。
 温暖で稍冷涼な処を理想とするが,耐寒性は相当強く,本県においては各地ともこの栽培が可能である。暑には弱い。乾燥に対しても相当耐え普通を100とした収量試験では乾湿地共に大差がない。
 乾湿による収量(%)
 乾地93 普通地100 半湿地92 湿地93
 しかし水分の要求は禾本科の2倍とされ,降雨量年990−1320ミリの処であれば理想的な生育がもたらされる。
 短年の永年植物といわれているが品種気候及び土壌等によって生存年限は異なり,暖地では越年生,寒地では永年生という人もある。
 我々の知る限りでは播種した翌々年(春播の場合は翌年)が最も成育旺盛で次年には多くの株は枯死する。
 然しある地方では4年目以後もよく生育を続け何等欠株を認めないと言っているが,これは種子の落下により自然再生されたものがあるかもしれないので今後の調査検討が必要である。斯様な事情にあるからこの頃になれば植替えが必要となってくる。
 深根性であるために土壌は膨軟で空気の流通のよい事が大切である。
 種子が細小であるから整地を丁寧にせぬと覆土の厚さが不定となり発芽に不揃を来たすのならず覆土が厚すぎると発芽困難となり稚苗も弱く枯死し欠株の原因となりやすい。
 播種しようとする場所一体の雑草を根元から刈取り次いで蒔床を耕起し雑草根を除去し整理する。
 「深耕整地」を常に念頭におくべきである。
 酸性の土地では播種10−14日前に石灰を施用することが必要で石灰の必要量は次表によって永めうる。
 石灰施用の蒔期を失した場合は発芽後2週間頃に行い播種と同時に応用してはならない。
| 腐埴少き場合 | 腐埴土普通の場合 | 腐埴質多き場合 | |
| 砂土に対し | 50s | 100s | 150−300s | 
| 壌土に対し | 50−100 | 100−150 | 200−300 | 
| 軽粘土に対し | 150 | 250 | 350 | 
| 中粘土に対し | 250 | 350 | 400 | 
| 重粘土に対し | 300 | 400 | 450 | 
| 腐埴土に対し | − | 400−800 | − | 
 堆廏肥の施用は勿論のこと燐酸加里は極めて心要であり,燐酸の欠乏は生育が劣り収量が減少し,葉は暗色を呈し冬枯が多くなる。加里の不足は葉に小さな斑点を生じ暗色を呈し,耐寒性が弱ってくる。
 乾草100貫中に含まれる肥料要素量は第4表の通りであり,赤クロバーの養分吸収量はこの様にきわめて大で窒素ではエンバクならば13.1石を燐酸では3.8石,加里では7.8石を生産した場合の吸収量に等しい。
 以上の様な養分要求は他の荳科作物におけると同様に第一が窒素次に加里,石灰,燐酸の順である。
 養分の多くは早春から開花始めまでに著しく要求されこれに間に合うように施用しなければならない。
 養分吸収と肥料として与えるのは別個で窒素の吸収は大であるが肥料の要求は少ない。
 一般に赤クロバーの生育の初期,即ち根瘤菌の機能が未だ充分でない期間は窒素が必要であるが地味瘠薄な地以外には特に窒素肥料の施用は必要でない。
 元肥としては土性矯正のための石灰と更にそれ以上の石灰を肥料として施用し(石灰の施用は常に収量が増加する)更に堆肥を200−300貫,火山灰地にあっては300−400貫を元肥として施用す。
 追肥は翌春,早春萠芽前に過燐酸石灰5−6貫,草木灰15貫,家畜尿の如きものを2−3回に分施する。
 播種期は春,秋の彼岸前後が適当であるが,一般に秋播されている,県北部地帯はこの頃より早目に播種するが好ましい。
 播種量は反当3合前後で厚播は発芽後の生育が悪い,この場合相当量の砂とまぜてこれを播種すれば均等に播落しが出来る。
 なお根瘤菌の接種を行って播種すれば発芽が容易であり爾後の生育に好成績を及ぼす。
 覆土は出来るだけ浅くし,埴土で3−6分軽鬆土で7−8分が理想である。1寸以上になると殆んど発芽しない。発芽は秋3−4日,春7−10日を要するが発芽時には水分の要求が多いから乾燥にすぎると発芽率は低下する。発芽温度は10−13度で範囲が広く低温でもよく発芽する。
雑草の駆除には特に労をおしむことなく又,霜柱の立つ地では麦踏の調子で鎮圧し或はモミガラ,藁バカマを細切したものを撤布し霜害を防ぐ。
 収穫適期は草位面積当の全収量,可消化養分,嗜好性,或は2番刈に及ぼす影響により定まるが概して開花前が適期である。
 初年度の刈取は1回刈(時に2回)とし地上2−3寸を残して刈取る。余り下から刈取ると生長点を害し,生長がおくれると共に往々にして枯死するおそれがある。
 次年度から3回刈取りが可能である。1番刈りが2番刈りの生育量に及ぼす影響は2番刈の収量は開花期頃までに刈取った場合には大差がないが刈取がおくれると収量がかなり低下する。
 収量は3回刈で生草1,000−1,500貫程度である。
(1)苗床
 苗床は灌水に便で土壌は軽鬆にすぎぬこと。
 軽鬆土は移植のとき株部の土壌がおちやすく生育不良となる,粘質壌土が適当である。
 播種前4,5日に苗床予定地積を耕耘整地し元肥として適量の過石を撤布し,土壌とよく混和せしめる。
 条播の場合は一定の巾で適当の作条を作り足で軽く踏付けておく。
 撤播の場合は更に土を細砕し,床面をなるべく平坦にして板又は平鍬面で軽く鎮圧する。
(2)播種
 点播は優良な苗を得るも苗床の面積が大となり,撤播は苗が一面に連続叢生し茎根が交錯して移植の際不便であり苗がいたみやすいから概ね条播が適当と思われる。
 播種期は9月上旬で,播種量は苗床一畝に1合5勺程度,播種の際砂等と混じてやれば均等に播種できる。
 播種が終れば種子を板で軽く鎮圧しその上に焼土或は草木灰に少量の籾がらを混じたものを薄くまき更に稲ワラなどでウスく被覆する。
 地面が乾燥するときは努めて灌水し発芽を促し,発芽すれば直ちに被覆物を除去す。
 雑草は幼苗の発育を害するから極力小さいうちに除去す。
(3)苗床の肥料
 過石坪当り20−30匁(元肥)
 焼土坪当り1−1.2貫草木灰500−1800匁に少量の籾ガラを混じて播種後撤布す。
 苗の生育が十分でないときは稀釈した畜尿を坪当り2−3升追肥す。
(4)移植
 播種後2ヶ月で4寸−3寸程度に生育するからこのとき移植する。
 播種期のおくれたもの,生育の悪い場合霜柱の強い土地では翌春移植するも可。
 移植の距離は条間2尺,株間1−1.5尺とし前述の直播に準じて整地し行う。
 相当雑草の繁茂する地では条間1尺株間1尺−7寸位に密植するとよい。
青刈飼料
 生草は乳牛にとって優秀な飼料で,ドイツでは同量を乾草で与えるよりも生草で与えた方が牛乳を多く生産するといわれている。
 雨露でぬれたものは避けた方がよいと言われ生草給与量は一概には言えないが搾乳中の乳牛では1日1頭10−15貫までである。
乾草
 乾草製造に最も注意すべきは葉の脱落を防ぐことである。
 1日1頭給与量は1.5−2.5貫である。
サイレージ
 米国オレゴン農業試験場では第一の花が褪色し始めるときサイロに詰め良好なサイレージが得られたと伝えられている。
 何れにしても刈取後直ちにサイロに詰めるべきで,特に緻密に踏み込むことが大切である。
 給与量は大家畜1頭当り大体3−7貫といわれる。
 赤クロバーの採種はきわめて厄介な問題である。
 赤クロバーは主として他花授精する作物で荳科作物の授粉が主として昆虫の花粉媒介によりなされていると同様に蜂による授精が基礎となっている。
 授精に最も貢献する昆虫は蜂であるがウスイロマルハナバチ,トラマルハナバチ,クロマルハナバチ,ヒゲナガハナバチ,等マルハナバチの類が効果ある花粉媒介者である。
 このためマルハナバチの出現期と開花期を合致せしめる様調節の必要があるミツバチについては場所により赤クロバーの授精には花管が長大すぎるために有効でないというものがあるが,ソ連のグビン氏の研究調査ではミツバチの巣箱をおいた畑の種子生産は然らざるものの約3倍であった。この種の実験結果は今日においてもかなり多いのであるから積極的の利用も考えねばならない。
 なお採種は天候の関係が密接で乾燥した晴天の多い処は昆虫の活動も敏活で且つ新らしい栄養生長を刺戟しないため採種に最上の条件となる。
 又肥料については加里肥料単用又は加里及び燐酸の併用により花蜜の分泌を促進し蜂の飛来を多くすることが出来るといわれる。
 1番刈は一般に種子が少く(1番刈の時期には蜂の発生多くなく且つ多数の他の密源作用が開花しているために花粉媒介が十分でない)そのため2番刈りを採種用に用いるが得策である。
 なお播種当年は通常採種せずに2年目から行う。
 牧野の改良においてルーサン,赤クロバー等の牧野を追播することは最も理想的であるが,従来より放任され荒廃しきった牧野に一足とびに,これらの優良牧草を生育させることは困難であるので,これらのルーサン,赤クロバーなどは牧野改良の最後の到達目標と考え,とりあえず現在の改良第1段階で有利な牧草を栽培し,ある程度の飼料を生産しながら次の改良を準備するのが最も堅実な方法であると思われる。このため最も適合した荳科牧草としては,このバーズフット・トリフォイルがある。
 この牧草は荳科の植物で我が国の山野に自生しているミヤコグサとよく似ており一年生のものと,多年生のものがあるが牧草として利用されているものは大体多年生のものである。
 根は丈夫でよく発達し,とくに年数のたったものは根がよく土中にのび,古いものは木質化している。
 茎は細く直立又は匍匐し草丈は2尺5寸位である。
 花は黄色で成熟してくると細長い円筒状の莢となって,花梗の先に放射状につきその形が葉と共に丁度鳥の足のようにみえるのでバーズフット(鳥の足という意味)の名がついたと言われる。
 乾燥及び寒気に対して強く,又多雨の地方でもよく生育する。
 然し適度の温度及び日蔭をきらう。
 深根のため晩夏の候に生育する点に価値がみとられる。
 軽鬆な土壌から重粘土壌まで凡ゆる型の土壌に生育する。
 石灰にとむ土壌に繁茂し,土壌反応は中性からアルカリ性を好むも弱酸性に対して甚だ敏感という程でもない。
 気候及び壌土に対する要求度の少ないことが特徴で赤クロバー等の比較的高級な荳科飼料作物の成功しない処で用いられる。
 赤クロバーに準じて取扱えばよい。
 放牧地採草地を耕耘整地し播種する。
 播種期は赤クロバーと同様で春,秋の2季に播種する。
 播種は条播,撤播等によるが条播の方が発芽のための管理が行いやすく且爾後の手入れに好都合である。
 播種量は反当り4−5合で撤種の場合は1升程度である。
 この場合他の禾本科牧草と混播することは重要な問題で,これに用いる禾本科としては,オーチャードグラス・ライグラス・トールメドウフエスキユ等あり。これを1種或は2−3種と共に播種する。この場合のトリフォイルの播種量は2−3合である。
 主として放牧地であるが採草地にも用いられ乾草としても利用しうる。
 1年2回条件がよければ3回刈が可能であるがあまりひんぱんに深刈すると生育年限が縮小される。
 放牧の場合このへんのことをよくみきわめて実施するようにすべきである。
| 乾物 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | 無窒素浸出物 | 粗繊維 | |
| 乾草 | 87.50% | 13.50% (7.4) | 3.00% (1.5) | 41.70% (27.1) | 22.00% (11.0) | 
( )は可消化成分
白色クロバーの品種は大きく分けて4品種がある。
 1.ラディノー・クロバー
 2.コンモン・ホワイト・ダッチ・クロバー
 3.野生白クロバー
 4.ニュージランド・ホワイト・クロバー
 以上の如くラディノー・クロバーは白クロバーの1品種で,イタリヤで改良されたもので普通種の約2倍の大きさとなり非常に生産量が多く,その上放牧又は刈取後の再生力が旺盛で味よくその上早春から晩秋まで繁茂する。
 もっとも経済的な放牧地用牧草とも称され早春から晩夏まで旺盛な生育繁茂をつづけ生産量の多い,しかも栄養価の豊富なラディノー・クロバーを栽培し,又放牧法も昼間放牧,夜間舎飼とし,更に放牧地も数区画とした輪換放牧などを採用すれば年間1反歩でよく150日内外の放牧ができ非常に有利な乳牛の飼育ができる。
 気候的要求は少ない作物であり適当な施肥及び管理により寒気に対しても弱いことが最近明らかにされた。
 このクロバーは早魃に対しては強くない。
 土壌に対しては選ぶ処が少く,水分が充分存在すれば殆んどあらゆる土壌によく生育する。
 排水の良好なる腐埴に富む壌土及び埴壌土が最も好まれる。
 雨量が豊富にあれば瘠薄な砂土にもよく繁茂する。
 土壌反応は略中性か,弱酸性反応を好むかアルカリ性土壌においても生育する。
 このクロバーは根が浅いので作土の浅い土地でも良好なる生育をする。
 茎は萄葡性で地上に接近してのび,よくのびた節の部分から根を出す。
 この為疎植してもすぐ稠密な繁茂をし,又この茎を切り取り挿苗として増殖することもできる。
 大抵の節から葉と花蕾を出すが葉柄の伸長が早く2尺位にもなる。
 収量も4回−5回の刈取が可能で赤クロバーに劣らない。
 概して赤クロバーに準じて行えばよい。
 播種期は春,秋の2季に行い秋播は一般に寒い気候のせまるまでに速やかに生育をするような処以外では得策でないと言われているが九州地方では秋播がよく,本県の3種畜場の中間報告では大差がみとめられない。播種法としては単播,混播何れも実施されているが混播の場合このクロバーを良好に生育せしめるためには他の牧草は普通の播種量よりいく分少なめにした方が結果がよい。
 又最近このクロバーとケンタッキー31フエスキユとを交互に条播している現場をみうけるが賢明な方法であろう。
 播種量は反当り条播の場合3−5合程度である。
 播種後の管理はほとんど必要がなくときに追肥を施す程度で数年間利用しうる。
○葡萄茎を利用する増殖
 茎の入手が容易で労力があれば,その茎を切りとり土中に挿植して増殖することが出来る。
 挿植の時期は早春から9月末ごろの間が適当であるが矢張り春季の土中水分の多い時期がもっとも活着良好で,その後の生育も旺盛である。
 しかし土地利用の点から夏収作物とくに麦類の収穫直前に畦間に挿植することが相当行なわれている。
 挿植の密度は,畦巾2尺内外に1本位にしておくと大体3ヶ月後には圃場一面に密生するが野草地の場合はこれより密にし活着し生育が旺盛になる間,雑草の駆除に注意すべきである。
 刈取って利用することもあるが元来は放牧の牧草地としてよりすぐれた価値をもっている。
 即ち拡大して稠密する生育習性と,家畜放牧後3週間で再放牧が可能となる迅速な生育回復力は放牧草としてもっともてきしている第一条件である。
 又他の荳科牧草が求められない早春,盛夏,晩秋によく繁茂することもつづけて永い間放牧することのできるすぐれた特性である。
 乳牛の嗜好,栄養価については何れも飼料としてすぐれており,催乳クロバーの別名がある。
 ラディノー・クロバーを主体とした反当年間150日内外の有効な放牧法の紹介
| 萠芽期 | 5月15日 | 6月15日 | 7月15日 | 8月15日 | 9月15日 | 10月15日 | |||||
| 草丈 | 草丈 | 生草量 | 草丈 | 生草量 | 草丈 | 生草量 | 草丈 | 生草量 | 草丈 | 生草量 | |
| 4月15日 | 8.3寸 | 12.0寸 | 491.4貫 | 10.9寸 | 628.7貫 | 14.9寸 | 539.6貫 | 11.2寸 | 439.4貫 | 10.7寸 | 403.1貫 | 
| 反当生産量 | 2,452.2貫 | ||||||||||
 上記の反当生草牧量は搾乳牛1頭1日15−18貫を飼食するものとして150日は充分間に合うが,しかし単なる粗放的放牧では草の無駄ができ予期ほどの放牧ができないからラディノー・クローバーの生育を基礎とした輪換放牧を実施した方がよい。
 つまり放牧地を区画して数ヶ所の放牧地を作り乳牛を順ばんに草の生育をおって移動放牧する方法がよい。
 このクロバーは刈取又は放牧後3週間で再放牧できる程度に再生して,1ヵ月で刈取できる程度に再生して1ヵ月で刈取ができるようになるから1ヵ月位で振り出しの第一区にもどるように放牧草地を4−5区画して各区に1週間位ずつ放牧する。
 この際早春の生育迅速なライグラス,メドウフエスキユなどを混播すると一層放牧日数を増加することができる。
| 乾物 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | 無窒素浸出物 | 粗繊維 | |
| 成草(開花始) | 18.50% | 4.4%(2.8) | 0.8%(0.5) | 6.9%(4.7) | 4.8%( 2.6) | 
| 乾草(開花始) | 84 | 14.9 (8.5) | 3.6 (2.1) | 35.7(25.0) | 23.1 (11.8) | 
 フエスキュと名のつくものは充分であるが,それらの内で利用価値のたかいものはトールメドウ・フエスキュでフエスキュ界の王である。
 このトールメドウ・フエスキュのうちにもまたいくつかの系統がありとくに優秀な品種としては次の2品種である。
(1)アルターフエスキュ
 米国で改良された優良品種にして,トール・メドウフエスキュより一層繁茂性強く草丈6尺以上となり永年生で多収な牧草で,湿地で栽培したならばこれにかなうものなし。
(2)ケンッタキー31 フエスキュ
 米国で改良され,夏季の生育は余り盛んでないが早春,晩秋,初冬の冷涼な時期に旺盛な生育をする耐寒性の優良品種である。
 米国ケンタッキー州の山岳に多年生存していたトール・メドウフエスキュから分離された一系統の牧草で1931年にこの品種が作育されたため31フエスキュと名づけられたのである。
 米国では1942年以来牧草の栽培奨励品種に指定されている。
 この草の特徴は,(1)瘠悪な土壌にでも大抵栽培が可能であること。
(2)四季を通じて各種の気候風土の条件にも適応すること,特に耐寒性が強く,冬期にも葉緑を失なわないばかりでなく,むしろ他の牧草類が萎縮枯葉する冬の寒冷期に生長を続けその葉緑を維持する。
(3)この草を他の牧草と適当に混播すればその草地は周年放牧が可能となる。
(4)繁殖力が旺盛で,多くの場合共生している雑草はこの草のために圧倒される。栽培の目的として単に採草地,放牧地だけでなく,土壌の風水蝕防止のための土壌保護作物として用いられる点でも有名である。
 土壌保護作物として用いられる点は,他牧草類の生存に適さない所にも栽培可能であり,その基根部が重厚であるため土壌保全に役立つのである。
 飼料としての養分は荳科牧草に較べると大分低いが禾本科牧草としては普通で目下分析中である。
 牧草として栽培する場合は地上3−4寸の程度にたえず刈取っておくか,多少過放牧程度にしておく方が有利で余り長大に生育しすぎるとその茎葉が粗剛になり繊維が多くなる。
 栽培において注意すべきは3年後でないと繁茂性を発揮できないから1,2年目に収量の上るライグラス・チモシー・クロバー類を混播することが必要であると唱く人がいる。
 播種は春及び秋9月上旬が適当とされているが我が国の栽培成績は殆んどなく今倉田博士が高島分場(林業試験場)において春播にした栽培の成績の一部を引用することとする。
 播種は直播よりも一度苗床に播種し,発芽後20−30日で大体苗高7−10p(2−3寸)になり2−3本に分けつする頃に雨天の日をえらび移植すると結果がよい。
 又他の作物の葉でおおわれた庇蔭地でも枯れることなく生育していることは果樹園の下草とし,又は桑園の間作に重要な特性であるが荳科との混播の必要があろう。
 高島分場の試作結果
 播種床に基肥として反当170貫の堆肥と,追肥として牛尿(2倍に稀釈)を反当3石程度与える。
 4月14日に播種,6日後に発芽す。10月末に3−4尺となる(直立しない)このときの株の根際直径は2−3寸1株の分けつ数25−40本,量も多いものは70本
 この株が反当3,600株で年1回刈で反当1,000貫の収穫
11月10日に刈取った株は7日後に4寸程度伸長し,このことから年2−3回の刈取は可能で1,500−2,000貫の牧量は予想しうる。
 特に年間の草量より冬期により多くの収量を得る方法を研究することが今後の問題である。