| ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和26年11・12月号 > 第7回岡山県畜産共進会開催 |
牛の流行性感冒の流行により開催を延期されていた第7回県共進会は,去る10月20日より23日迄和気郡本荘町和気家畜市場に於て開催された。地元和気郡では県共進会の開催は大正15年以来のこととて全町村を挙げて協賛し盛大に挙行された。今回は諸種の事情で出品家畜は和牛のみであったが出品頭数は次の様であった。
雄 18ヶ月未満 10頭
〃 18ヶ月以上 15頭
雌 18ヶ月未満 17頭
〃 18ヶ月以上 50頭
合計 92頭
審査員は審査長惣津課長以下11名で雄の方は梶並千屋種畜場長以下4名,雌の方は馬渡津山畜産農場長以下7名で各審査員により20日の午後より審査を開始した。審査の成績は別掲の審査報告の通りであるが,今回の出品は通覧して特に目立つ様な立派なものは無かった様であるが,全体的に粒が揃って来てレベルを一段と向上している様に見えたのである。特に雌に於てこの差が少く審査に当っても相当苦労された様である。種雄牛の育成技術は多年の経験と熟練により全く見事なものであるが,雌に於てはやや低下しているようである。一般的に見て岡山牛の欠点である肩付の不良のものが,相当見受けられたのは残念で今後更に改良を要する点であると考えられる。更に乳器についても全部の牛について見せて貰ったが,昨年に比べれば,向上はしているがまだまだ今後相当改良しなければならないと感じたのである。この点雌の1等に入賞した26号は乳器の発育が良く,この程度の乳器は是非ほしいものと考える。
一般の参観者も連日多数来場され熱心に観覧されたが熱心の余り審査場に入り審査の邪魔をされていたのは何処の共進会でも見る風景であるが,観覧者のエチケットとして注意したいことである。それと共に主催者に希望することは審査が終ったらすぐ牛を連れて帰るのでなく,5分か10分位そのままの位置に牛を置いて,一般の人々が充分牛を見ることが出来るように親心を示して貰いたいことである。
◎各郡別出品点数表
| 郡別 | 和牛 | 計 | |
| 牝 | 牡 | ||
| 御津 | 4 | − | 4 |
| 赤磐 | 3 | − | 3 |
| 和気 | 6 | − | 6 |
| 邑久 | 1 | − | 1 |
| 上道 | 1 | − | 1 |
| 都倉 | 9 | 1 | 10 |
| 浅口 | 3 | − | 3 |
| 小田 | 4 | 1 | 5 |
| 後月 | 2 | − | 2 |
| 吉備 | 7 | 2 | 9 |
| 上房 | 5 | − | 5 |
| 川上 | − | 8 | 8 |
| 阿哲 | 4 | 11 | 15 |
| 真庭 | 4 | − | 4 |
| 苫田 | 5 | − | 5 |
| 勝田 | 4 | − | 4 |
| 英田 | 2 | − | 2 |
| 久米 | 3 | 2 | 5 |
| 合計 | 67 | 25 | 92 |
今般審査を終了しましたので,その概況を御報告申上げます。
先ず共進会の出品区分を見ますと,阿哲郡の15頭を筆頭として児島郡を除きその他全郡から出品され,牝に於ては67頭,牡は25頭,合計92頭に達して居ります。之を更に産地別に見ますと,阿哲産の36頭を最高として真庭,上房,川上,苫田等の北部の生産に係るものが大部分でありました。又年令別に見ますと18ヶ月未満と18ヶ月以上に分けて,若令のものは牡10頭,牝17頭であり,18ヶ月以上のものは牡15頭,牝50頭でありました。
以上の出品について総体的な所見を述べると,通覧して本回の出品に於ては特に抜群のものが無いと致しましても,全体的なレベルが著しく向上していることは喜ばしい傾向であり,遂年改良の実績を示しているものと考えられます。更に一般に牝牡を通じ産地別の特色が比較的明瞭に出現している様でありました。殊に阿哲,真庭,川上,苫田等夫々特異の類点,欠点が見受けられたのであります。又育成上から見た場合北部と南部に於ては,発育栄養の点ではかなりの差異が認められました。つまり北部ではしまりは良ろしいが,発育の点で劣り,南部は一般に発育栄養が優れているという事は歴然たる傾向の様に見受けました。
更に細部に亘って批評しますと,牡として一般に美点として挙げられるものは品位に富み,体各部の均称を得,特に中躯の状態は極めて良好でありました。ついで発育,栄養,乳器は大体に於て昨年に比し向上しつつあるものと認められました。尚調教技術は今回に限らず,全国に誇り得る特技であり,今後共一層の御精進を願いたいと思います。然し欠点としてあげられる点を指摘しますならば,今尚肩付の状態及それに関連した肢勢(前肢の立ち及び飛節の状態等)はもっとも目立つ点であり,牡の生命として重量なる上体を支える肢蹄への関心はゆるがせの出来ない重要な点であります。尚顔の品位に欠げるものが少からず見受けられましたが之は,牡として著しく品位を傷けるものであり今後種牡の選択上極めて重要な事と思います。更に蹄の管理,それに伴う歩様の香しくないものがありますことは一般的欠陥として挙げうる点と存じます。
牝に於て美点として挙げ得る点は発育,体積,均称共によろしく,中躯特に背腰の充実した点は牡の場合と同様特色ある美点を確保しているものと思います。然し欠点として認めざるを得ないのは牝の牝らしい品位に欠げるものが多くあり,尚通有的欠陥としての肩付の状態は牡と同様思わしくないと思います。今一歩皮膚と被毛及それに密接なる関係を持つ乳徴には更に一段と改良を要し調教馴馳には少なくとも,牡に追従する程度にまで関心を持っていただきたいと存じます。
1等賞に擬せられました牡18号と6号とを比較した場合に,お互に兄たり難く弟なり難いに係らず18号を1等首席に挙げました所以は,輪郭鮮明,種畜としての品位,緊りに優れ,体格部の均称を得ており,若干体積に欠げる点はありますが之を6号に比べた時,牡相と資質及び乳徴の点で稍々優れているものと認めた結果に基づくものであります。牝の1等賞の26号,55号,17号を比較した場合,品体と体積,均称に於て26号が55号に僅かに優れ,17号は26号に劣らない品位と資質を具えているものの稍未成熟のために体積の点に於て26号と55号に一歩を譲らなければならないものと考えた次第であります。
以上を綜合しまして今後改良上最も考えるべき事は体型を種牛として重要視すべきは勿論でありますが,それよりも特に仔出しを支配する遺伝的な系統を吟味することが改良上最も大きな問題であることを篤と御留意願いたいと考えるものであります。次で和牛としての利用の点から肉と役を考えるとき,体積,骨味は勿論,皮膚・被毛・乳徴を重点的に改良する様な種牛を選択する事が要請される重点として将来の岡山県和牛の重要なる問題と考えます。
審査の開始に当り発表しました,審査方針に基づき以上の諸点を慎重に審議した結果次の様な入賞点数を決定しました。即ち
1等賞 牡 2点
牝 3点
2等賞 牡 4点
牝 8点
3等賞 牡 8点
牝 20点
以下は4等として牡11点,牝36点合計92点を擬賞した次第であります。
和牛牡の部
1等賞
| 出品番号 | 種 類 | 名 号 | 生年月日 | 産地 | 資格 | 血統 | 出品人 | |
| 父 | 母 | |||||||
| 19 | 黒毛和種 | 大花 | 25.2.11 | 阿哲 矢神 | 高 資 | 田龍 本黒1848号 |
しんえい 予岡10637号 |
阿哲郡野馳村 沖津 連一 |
| 6 | 仝 | 第一栄 | 25.5.21 | 阿哲 草間 | 高 資 | 第3清花 本黒1326号 |
なかおか 本黒12963号 |
阿哲郡上市町 阪井 留吉 |
和牛牝の部
1等賞
| 出品番号 | 種 類 | 名 号 | 生年月日 | 産地 | 資格 | 血統 | 出品人 | |
| 父 | 母 | |||||||
| 26 | 黒毛和種 | 第3いちはる | 24.11.19 | 久米 打穴 | 登録牛 | 勝富 本黒1798号 |
いちはる 本黒6244号 |
御津郡横井村 桐山 良松 |
| 55 | 仝 | おうめ | 24.6.15 | 真庭 富原 | 高 資 | 福滝 本黒1350号 |
さかえ 本黒8410号 |
真庭郡富原村 宮田与太郎 |
| 17 | 仝 | しばた | 25.5.25 | 阿哲 刑部 | 登 資 | 大茶 本黒1045号 |
しげる1 予岡2816号 |
阿哲郡刑部町 柴田 勲 |