| ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和27年6月号 > 私の体験した飼料作物の栽培と其の有利性 |
飼料高の今日,酪農経営を合理化してこれを安定せしめることは最も必要な事である。これには先ず日々の支出面の大部分を占める飼料費の低減を期することが必要である。
(第1表)
購入飼料 30%
自給飼料 29%
自個労賃 14.5%
牛消却 14%
その他 10%
診療種付 2.5%
この第1表は昭和25年12月より昨年11月末日までの乳牛に対する支出を調査したものであるが,支出の約60%が飼料費であり,30%が購入飼料費である。この飼料費を節約するためには我々は先ず身近にある野草の改良と其の利用法の改善に努めて,家畜の維持飼料は勿論,生産飼料の一部もこれらの草でまかない得る様にするのと同時に,農場の副産物や未利用資源を無駄なく活用することである。そして更に一歩を進めて飼料作物の集約的な栽培が必要である。即ち輪作,間作,混作等により同一の耕地から最多量の収穫を得る様にしなければならない。野草の改良,農場副産物や利用については時間の都合上省かせて頂き,皆様の御参考に供し又御批判を頂きたいと思います。
飼料作物の混作,輪作,間作を私は第2表のとおりに実施し,現在,燕麦,ザードウイツケンの混播したものと,その間にカブラを間作したものと2方法を実施して居ります。
その栽培法は第3表のとおりで,反当養分収量の増収を目的とし,必ず荳科の植物を混作することにして居ります。反収に於て第2回の青刈大豆と玉蜀黍との混作が減じて居るのは,昨年夏は炎天続きのためと思われ,又一般に玉蜀黍と大豆の混作に於て,大豆の発育の悪いと言うのは大豆の播種量が不足であることと玉蜀黍の株間を7,8寸にするより,間作すると言うことである。
(第2表)
| カブラ間作 | |||||||||||
| 燕麦ザード混 | 燕麦ザード混 | ||||||||||
| 第2回トウモロコシ大豆混 | |||||||||||
| 第1回トウモロコシ大豆混 | |||||||||||
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
(第3表)飼料作物栽培一覧表
| 飼料名 | 播種期 | 播種量 | 収穫期 | 生育日数 | 反収 | 摘要 | |
| 青刈大豆 | 混 作 | 月 日 | 6 升 | 月 日 | 日 | 660貫 | 厩 肥 300 |
| 玉 蜀 黍 | 4.17 | 3 升 | 7.2 | 76 | 960 | 牛 尿 117 | |
| 計 1,620 | |||||||
| 青刈大豆 | 混 作 | 7.1 | 6 升 | 9.8 | 70 | 230 | 厩 肥 100 |
| 玉 蜀 黍 | 3 升 | 550 | 牛 尿 120 | ||||
| 計 780 | |||||||
| 燕 麦 | 混 作 | 9.11 | 3 升 | 第1回 | 53 | 200 | 厩 肥 200 |
| ザ ー ド | 2 升 | 11.4 | 20 | 牛 尿 150 | |||
| 計 220 | |||||||
| 蕪菁間作 | 9.11 | 3 合 | 12.5 | 85 | 680 | 牛 尿 100 | |
| 中 耕 1回 | |||||||
| 間 引 2回 | |||||||
| 計 | 3,300 | ||||||
第2,第3表の様に大豆と玉蜀黍を混作する事によって,大豆の根留菌が空中窒素を固定してこれを玉蜀黍が吸収して成育する為に肥料が少くてすむばかりではなく,収穫物の飼料価値を高める利点がある。
又他の畑に於て混作した場合と玉蜀黍だけを栽培した場合の収量及び飼料価値について比較したものを参考に申し上げますと第4表のとおりである。
(第4表)
| 飼料名 | 播種月日 | 収穫月日 | 反収 | 固形物 | 可消化 粗蛋白質 |
澱粉価 | |
| 玉 蜀 黍 | 混 作 | 6.17 | 8.12 | 玉蜀黍 840貫 | 173,400 | 15,480 | 94,320 |
| 大 豆 | 大 豆 300 | ||||||
| 計 1,140 | |||||||
| 玉蜀黍単作 | 〃 | 〃 | 1,160 | 198,360 | 8,120 | 84,680 | |
収量は大差がないが飼料価値に於て如何に混作が有利かおわかりのことと思う。
(第5表)飼料価値表
(養分計算の基礎参考までに)
| 飼料名 | 固 形 物 | 可消化粗蛋白質 | 澱粉価 |
| 青刈玉蜀黍 | 17.2 | 0.7 | 7.3 |
| 青刈大豆 | 23 | 3.2 | 11 |
| 青刈燕麦 | 23.2 | 1.4 | 10 |
| ザードウィッケン | 20 | 3 | 9.5 |
| カブ | 10.9 | 1 | 6.6 |
第3表の反収=青刈玉蜀黍1,510貫,大豆890貫,燕麦200貫,ザード20貫,カブ80貫の飼料価値及び米麦作と飼料作物1反歩の収量を比較すると第6表のとおりである。
(第6表)
| 飼料名 | 収量 | 固形物 | 可消化粗蛋白質 | 澱粉価 |
| 青刈玉蜀黍 | 1,510貫 | 259,720 | 10,570 | 110,230 |
| 青刈大豆 | 890 | 204,700 | 28,480 | 97,900 |
| 青刈燕麦 | 200 | 48,400 | 2,800 | 20,000 |
| ザードウィッケン | 20 | 4,000 | 1,200 | 3,800 |
| カブ | 680 | 74,120 | 6,800 | 44,880 |
| 合 計 | 3,300 | 588,940 | 54,650 | 274,910 |
| 米 | 2石6斗 | |||
| 麦 | 2石4斗 |
又現在体重120貫,乳1斗,脂肪率3.25%の乳牛には可消化粗蛋白質と澱粉価の必要量は第7表のとおりである。
(第7表)
| 固形物 | 可消化粗蛋白質 | 澱粉価 | |
| 維持飼料 | 1.9−1.6 | 60匁 | 576匁 |
| 生産飼料 | 210−225 | 1,150 | |
| 計 | 270−315 | 1,726 |
すると前記の飼料によって1日1斗生産のものは160日−170日飼育することが出来,牛乳16石を生産することができることになる。1日6升生産のものは220日間飼育することができ,牛乳13石を生産することになる。第6表の生産物を金に換算すれば第8表のとおりである。
(第8表)米麦作及び飼料作の現金収入比較
| 生産物 | 収量 | 単価 | 価格 | |
| 水田作 | 米 | 2石6斗 | 7,300円 | 18,980円 |
| 麦 | 2石4斗 | 4,375 | 10,500 | |
| 計 | ― | ― | 29,480 | |
| 飼料作 | 牛乳 | 1日1斗生産のもの 16石 | 4,600 | 73,600 |
| 1日6升生産のもの 13石 | 〃 | 59,800 |
このように水田作では米麦で29,480円の収入であるに対し,飼料を作って乳を搾った場合は1日1斗生産のものは73,600円,6升生産のものでも59,800円で,しかも飼料作物の期間が7ヶ月少々にしてこれだけの収入である。問題なく飼料を作って乳を搾った方が得策である。しかも飼料作物を栽培するのは米作よりも容易である。乳牛を飼育するのは連日の労力を要するが其の収入は之を補って余りある。
次に飼料作物栽培に要した費用を挙ぐれば第9表のとおりである。
(第9表)
| 数量 | 単価 | 価格 | |
| 厩肥 | 600貫 | 5円 | 3,000円 |
| 牛尿 | 487貫 | 3 | 1,461 |
| 種子玉蜀黍 | 6升 | 90 | 540 |
| 大豆 | 1斗2升 | 95 | 1,140 |
| 燕麦 | 4升 | 75 | 300 |
| ザード | 2升 | 250 | 500 |
| 自個労賃 | 158時間 | 10時間 250 | 3,950 |
| 牛馬労賃 | 11時間 | 10時間 300 | 330 |
| 合計 | ― | ― | 11,291 |
次に米作の場合の蛋白質,脂肪の生産量と飼料作物を栽培して乳牛を飼育し,乳を搾る場合の蛋白質,脂肪の生産量を比較して見ると第10表のとおりである。
(第10表)米及び牛乳の栄養価比較(石)
| 数量 | 水分 | 蛋白質 | 脂肪 | 炭水化物 | カロリー | |
| 米 | 26 | 1,372 | 0,759 | 0,197 | 7,498 | 13,416,000 |
| 牛乳 | 16 | 69,760 | 2,800 | 3,040 | 3,840 | 2,070,000 |
| 13 | 56,680 | 2,275 | 2,470 | 3,120 | 1,681,530 |
以上の様に,米麦作が必ずしも有利でなく,飼料作物を栽培して乳牛を飼育する方が有利である。殊に我々農民の食生活に不足勝な良質の動物性蛋白質や脂肪を生産する面から見れば,飼料作物を栽培して乳牛を飼育することは,米麦作に勝るものであり,国家の食料対策としても再考を要するものと思われる。其処で養蚕経営には桑園がつきものです。これと同様に酪農経営にも飼料圃を確保してこれを高度に活用して飼料を増産し生産費を引下げると共に,牛の健康増進をはからねばならぬ。そして新鮮な牛乳を利用する事によって食生活改善が行われる理である。米麦の栽培が少し位減っても敢えて驚くに足らぬこと,否反って望ましい結果を得る事になります。一にも米二にも米の考え方を清算して,食生活の一部に牛乳及び乳製品を取入れる様にせねばならぬ。
酪農家の皆さん,講和条約が締結されました以上,近く外国の安い乳製品が入ってくる事は一応覚悟しなければなりません。お互にこの酪農経営に弾力性を持たせることこそ最も大切な事と思います。(これは去る1月15日津山市川崎公会堂において開催された,酪農研究発表会の席上,酪農4Hクラブ会員勝田郡河辺村松永仁志君の1等入選研究資料である。)