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家畜は1年間にどれだけの飼料を必要とするか

 これからの有畜経営には,あまり購入飼料に頼ることができず,主として自給飼料を建前として行わねばならないのでいままでのように家畜をとり入れてから後に,飼料の工面をするのではなしに,自己の農業経営の能力やその他の条件,例えば家族の労働力,放牧採草地,耕地の大きさ,飼料購入の難易,或いは畜産物の販売先等を充分考えた上で,果して自分の経営にはどんな家畜が最も適しているかを決めるべきである。
 又家畜を飼養するにあたっては,飼料の必要量を知り,自給飼料の年間生産計画を立て,少なくとも半年間位の飼料を用意して置かねばならない。そこで1年間に家畜が消費する飼料の量を知る必要が生じて来る。
 家畜1頭1年間の大体の必要量は第1表のとおりである。
 表は森本宏氏と齊藤道雄氏と比較表示した。森本氏は生草を生で表し,乾草換算すれば生草4sが乾燥1sに相当している。
 豚は森本氏は55s以下とし,齊藤氏は10ヵ月以下としている。又豚では体重増加量の約4倍量の乾いた飼料を与えればよいという標準もある。
 第1表から見て大ざっぱな計算で頭に入れて置く数字は牛,馬共1頭年に粗飼料3t(約800貫)要ることになる。乳牛は4t(約1,060貫)要る。濃厚飼料は和牛の場合0.4t(約100貫),馬はその1.5培から2倍,乳牛はその3倍と覚えておいてよい。
 山羊とめん羊は粗飼料,濃厚飼料とも,牛馬の10分の1と見る。しかし山羊は乳を生産するためにめん羊より濃厚飼料が余計必要である。乳牛の10分の1までは要らないが略々この見当と見るのがよいだろう。
 第1表中,齊藤道雄氏によると,和牛馬は粗飼料年3tの要求量に対し藁が3分の1,乾草類が3分の2位になる事が望ましいのである。乳牛の方は粗飼料年4t,藁が4分の1,乾草類が4分の3になる事が望ましい。即ち藁で飼うより草で飼うように全体をもって来ねばならない。藁は牛馬共に年1t(約260貫)程度に止めておく必要がある。そして出来るだけ刈草を与えるか放牧するか,サイレージを与えるかして青いものを与える程,健康のために良い。
 次に1頭羽当飼料の所要量を固形物,可消化粗蛋白,澱粉価によって表示すれば第2表のとおりである。この表はsで表しているが貫が知りたい場合は1tを266貫で換算して頂けばよい。

(第1表) 年間飼料必要量(単位s)

粗          飼          料 濃厚飼料
森本宏氏による 齊藤道雄氏による 森本宏氏による 齊藤道雄氏による
乾草とし
ての数量
適 当 な 内 訳 乾草とし
ての数量
適 当 な 内 訳 乾草とし
ての数量
適 当 な 内 訳 乾草とし
ての数量
適 当 な 内 訳
乳牛 3,600 生草 5,600 4,015 1,000 1,200 ヌカ,フスマ類 450 1,210 穀物 548
乾草 940 野乾草 1,000 穀類 450 油粕 331
サイレージ 3,800 荳科乾草 2,015 油粕類 300 331
根菜類 2,600            
和牛 2,800 生草 6,200 3,284 1,000 400 ヌカ,フスマ類 280 402 292
乾草 1,000 野乾草 1,000 穀類 120 穀物 110
サイレージ 1,000 荳科乾草 1,284        
3,200 生草 5,600 3,285 1,000 600 ヌカ,フスマ類 400 548 365
乾草 1,800 野乾草 1,000 穀類 200 穀物 183
    荳科乾草 1,285        
100 良質の生草 500 100 荳科乾草 100 700 ヌカ,フスマ類 200 803 263
穀物又はイモ類 200 穀物 131
油粕類 100 魚粕 146
澱  粉  粕 (乾) 200 澱粉質 263
めん羊 350 生草 720 365 野乾草 365 65 ヌカ,フスマ類 65 110 110
乾草 170
山羊 350 生草 720 365 野乾草 365 150 ヌカ,フスマ類 120 220 183
乾草 120 荳科乾草 73 穀類 30 穀物 37
サイレージ 200            
成兎 30 良質の生草 150 30 野乾草 15 20 ヌカ,フスマ類 5 30 22
    荳科乾草 15 穀類 15 穀物 8
成鶏 4.5 青菜 27 少 量 軟かきもの   40 穀類 10 41 穀物 17
イ  モ  類(乾) 10 油粕 7.3
ヌカ,フスマ類 10 魚粉 5.5
油粕類 6 11
魚粕 4    
少 量 良質の青菜がよい 少 量 軟かきもの   18 穀類 6 18 穀物 7
イ  モ  類(乾) 3.6 油粕 3.7
ヌカ,フスマ類 3.5 魚粉 2.1
油粕類 3.5 5.5
魚粕 1.5    
成あひる 6 青菜 36 少 量 軟かきもの   47 穀類又はイモ類(乾) 15 45 穀物 12.4
ヌカ,フスマ類 24 油粕 12.4
油粕類 5 魚粉 6.1
魚粕 3 14.1

(第2表) 家畜1頭羽当飼料所要量

区    分 平均体重 日        量 年    間    量
固形物 可消化
粗蛋白
澱粉価 固形物 可消化
粗蛋白
澱粉価
  s s s s s s s
乳 牛 種雄牛 800 14 1.04 6.72 5,110 397.6 2,452.80
成牛維持 500 10.8 0.25 2.4 3,942 91.3 876
 〃  産 乳 1s当 0.0465
仔牛 180 3.96 0.41 2.18 1,445 149.7 795.7
役 牛 種雄牛 600 11.8 0.78 5.04 4,312 284.7 1,837.60
成牛 400 7.6 0.301 2.503 2,774 109.9 913.6
仔牛 180 4.63 0.41 2.18 1,690 149.7 795.7
種雄馬 550 11 0.88 5.005 4,015 321.2 1,826.80
成馬 450 8.77 0.428 4.095 3,201 146 1,330.40
幼駒 220 5.56 0.47 2.42 2,029 171.6 883.3
80 2.32 0.31 1.69 847 113.2 616.9
めん羊 40 0.913 0.077 0.451 333 28.1 164.6
山 羊 維持 40 1.28 0.04 0.36 1,197 14.6 131.4
産乳 1s当 0.05 0.25
2.5 0.14 0.012 0.097 51 4.4 35.4
成雌 2 0.083 0.0133 0.071 30 4.9 25.9
成雌雄,雛 1 0.059 0.0065 0.0517 22 2.4 18.9
あひる 成雌 2.6 0.108 0.0145 0.076 39 5.3 27.7
雄,肉雌,雛 1.36 0.059 0.0065 0.0517 22 2.4 18.9