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 採草地の草類はススキが代表的な草種で,長草型といわれています。
 わが国の草類の構成は禾本科がその8割を占め,蛋白質を多く含むマメ科が少く,平均草量は反当で優良地300−500貫以上,中等地200−300貫,不良地100貫以下です。
 野草は牧草に比べて飼料価値が劣るといわれていますが,次に牧草に劣らない優良採草適種を生育分布別に2・3種ずつあげて参考にいたしましょう。もちろんこれらはその一部です。
 野草の中には,家畜に対して有毒な草も多く,家畜は普通有毒草を識別して採食しますが,採草したものを与えますと往々中毒を起すことがありますからこの点よく注意して与えて下さい。
 採草適期を決める方法には2通りあります。成長指数法は各種草類の生育過程別に数回毎年刈り採って後年の生産量とし増減を測定し,草地の荒廃しない時期をきめる方法です。
 わが国では大迫氏が関東北部に於ける採草適期を次の通り決定しています。
 ススキ 8月中旬−9月中旬(乾草)
 チガヤ 5月中旬−5月下旬
 トダシバ 7月下旬−9月中旬(乾草)
 いま一つは,分析法又は総合法といわれるもので,前者が専ら後年の草生維持に重点を置いているのに対し,飼料として最も経済的に活用し得る時期を生産量・栄養価・草生維持など総合的に決定する方法です。
 三井氏はこの方法によって,ススキについて5カ年間の実験で関東北部においては,7月中旬−8月上旬に採草(乾草)適期を示しています。
| 種類 | 禾 本 科 | マ メ 科 | ||||||||
| 分布別 区分 | 種 類 | 多年生 2年生 1年生別 | 生草 乾草 向 | 総合 判定 | 摘 要 | 種 類 | 多年生 2年生 1年生別 | 生草 乾草 向 | 総合 判定 | 摘 要 | 
| 高燥地 開割地 | チガヤ | 多 | 生・乾 | 上 | 生草反当 800s 600−1,200s 1,200s | ヌスビトハギ | 多 | 生 | 優 | |
| トダシバ | 多 | 生・乾 | 中 | カスマグサ | 2 | 生・乾 | 上 | 混作向 | ||
| ススキ | 多 | 乾 | 中 | コマツナギ | 多 | 生 | 中 | 生草反当 800s | ||
| 湿潤地 | セトガヤ | 多 | 生 | 優 | ||||||
| 庇陰地 | イチゴツナギ | 多 | 生 | 上 | 冬青 | クズ | 多 | 生・乾 | 優 | 2,000−2,500s | 
| 半庇陰地 | トボシガラ | 1 | 生 | 上 | 6月完熟 生草反当800s | |||||
| 山岳地 | カモジグサ | 1 | 生・乾 | 優 | 7月完熟 乾草反当630s | ヤマハギ | 多 | 生・乾 | 優 | 生草反当1,200s | 
| 海辺地 | ハマムギ | 多 | 生・乾 | 優 | 生草反当 600−900s | ハマエンドウ | 2 | 生 | 中 | |
| 畦畔 道路敷地 | イヌムギ | 1月2日 | 生・乾 | 中 | 冬青 乾草 400s | レンゲソウ | 2 | 生・乾 | 優 | 生草反当4,000s | 
 草はその生長の程度によって成分に差があり,早期に過ぎると水分・蛋白質・無機分に富むが,刈採る場合に量が貯らず,乾草にも水分過多のため,良好でなく,翌年からの草生量がへるのです。
 しかし,また採草期の遅延は諸養分が既に植物の根に降り,茎葉に粗繊維が多くなり,飼料としての価値がへります。
 わが国における乾草採草地は概ね1回刈を主としておりますが,青草は生草繁茂期間中随時家畜に与える関係から,青草採草地にあっては,年に数回刈採りを行うことがあります。採草回数の多いことは草生に害があるのは当然で,大迫氏は年1回刈の初年目の草生10%に対し,2回刈の方は62%を示したことを6年間の成績で示しています。2回刈以上の採草をするときは第1回刈取の開始期と2回以後の適期刈取りに留意しなければなりません。
 片山氏は3回刈についての時期と,1年1回刈との収量,養分を次のように報告しています。
| 区 分 | 刈 取 期 | 反当乾草収量 (s) | 可消化蛋白質(反当) s | 澱 粉 価(反当) s | |
| 3回刈 | 1 番 刈 | 6月19日 | 87.8 | 1.49 | 28.13 | 
| 2 番 刈 | 7月29日 | 67.5 | 1.1 | 14.7 | |
| 3 番 刈 | 9月18日 | 35.1 | 0.44 | 8.98 | |
| 計 | 190.4 | 3.03 | 51.81 | ||
| 1回刈 | 夏 刈 | 133 | 0.63 | 32.77 | |
| 秋 刈 | 104 | 0.51 | 42.35 | ||
草を地際から刈取った場合,草の再生力に要する貯蔵養分の浪費と土壌水分の蒸発が過度になり且つ寒地では冬季草根が寒害をうけ易くなるので年々草生が衰退するのです。即ち,草量と澱粉価とにつき三井氏は地際から刈取るものでは,採草量が初年目100%の生産量に対し85%,73%,75%と年々減少し,一寸刈では85%,82%,72%,2寸刈では87%,83%,93%となっています。3寸刈では104%,116%,119%とだんだん増えています。なおこれを4年目,澱粉価に換算しますと10坪当り地際刈1.56s,1寸刈1.39s,2寸刈1.55s,3寸刈1.72sであったと報告しています。従って採草する場合は2寸前後残して刈取るのがよいでしょう。
 採草地を無計画に使用することは,草生のよいところだけをだんだん後退し,不良,不喰草が繁茂するようになってしまいます。
 採草地を利用するときは
1 採草地は面積が許せば,青草,乾草採草両地に区別すること。
2 輪換採草の実施を行うこと。
(イ)採草地を数区に分け,季節的に,春期,夏期,秋期とそれぞれ毎年これを適宜に転換して草生の保護をはかる。
(ロ)採草地を数区に分って,草生の最も衰退した区を待期区として晩秋結実落下まで採草を待って刈取り,さらに翌年は別の荒廃区でこれを実施し転換して行く。
(ハ)採草地を数区に分け,隔年ごとに使用する。
3 採草地内数カ所に刈取を行わない小区画を設けて自然播種をはかる。
4 放牧地は家畜のため表土が踏みかためられ,従って根張りが浅くよく張っておりますが,採草地は土壌が膨軟であるため根は比較的深いが根張りがよくない。
5 共同利用採草地は共同管理の関係から管理が悪く,ややもすると濫穫におちいる。
6 採草地には採草した草を運ばんとする道路が整備されることが労力の上から最も必要である。
7 採草後に注意すべきことは,生草として運ばん後給与する場合は,1カ所に堆積することなく草架に架けるか,拡げる等空気との接触面を広くし,新鮮な内に家畜に与える。
8 採草した後の採草地には,不良草,小灌木等刈残しがあるので,手入刈を行ってこれらのものを刈払うような注意が望ましい。
以上のことがらをよく守って上手な採草をしていただきたいと思います。