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農業経営の改善合利化と農村振興対策の見地から酪農熱の旺んなことはすばらしいもので喜ばしい限りである。然し中には現在の乳価高に魅力を感じて新しく乳牛を飼育する者,或は旧来の乳牛飼育者で目前の乳価高に屈服する者等がある様に推察されるが将来わが国の酪農の発展は国民の牛乳消費の普及と世界各国との競争にあることを思う時乳価高に眩感されることは洵に遺憾なことである。特に投機的なパチンコ酪農経営者になることは厳に戒むべきことである。
今一度酪農の意義を噛み直して戴きたい。それは乳価高を第一義とすることなく土地を母体としての仔牛の生産,厩肥の生産或は畜力利用が農業経営に有機的に結びついて全般的な農業生産力を高めてこそ真の酪農経営と言うことが出来るのである。
風薫る新緑の時節となって麦も一段と生育しましたが,間もなく麦秋の候が訪れて畜力利用の時期となるのでそれを前について今回は乳牛は役利用については筆者の知れる所を少し許り述べて大方の参考に供したいと思う。
農業経営合利化の一つの対策として最近乳牛の役利用が各地で行われているが,これを乳牛の運動と言う点から考えて見ても,合理的飼養管理の下に於ける年令相応の労役であるならば却って乳牛を健康に導くものである。そして次の様な場合に乳牛の役利用と言う問題が起って来る。
乳牛の役利用は我国だけでなくすでに戦前からドイツ及びその周辺の小農制の国々で行われている。この意味において乳牛の役利用は零細経営と結びついているようである。
翻って我国の様な過小農的零細農家においては,乳牛と役畜を同時に飼育することは資金の面からは勿論,飼料経済の面からも決して得策ではない。従って,零細農地帯に酪農を取り入れて発展させようとすれば乳牛の役利用が問題になって来ることは当然であり,我国の役畜の利用日数が春秋2回の農繁期にせいぜい25−30日程度であるため,この程度の労役は乳牛でも十分間に合わすことが出来る分けである。勿論乳牛の役利用はわが国の様な零細農家では特に奨励されるべきことである。そして乳牛の役利用には体高4尺5寸,体重150貫位のものが適当であると考えられている。
未経産牛に対する適度の使役は若牛の健康と発育の点からも良く将来立派な筋骨,体躯及び肢蹄を造り,ひいては長命と能力向上のために良結果をもたらすことになる。之に関連して昨秋,広島での中国連合畜産共進会の乳用牛の部の審査報告で岡山県のものは品位にとみ資質良好で乳用牛の特質をよく現わしているが肢蹄歩様が悪いと言う点を特に指摘されたが味わうべきことであろうと思われる。
即ち本県では一部を除き北海道,東北等と異なって充分な放牧運動を持つことは地勢的に不可能であり,育成期間中自由な放牧運動を行って筋骨,肢蹄を鍛練することは出来ないので育成牛の運動鍛練と言う点からも適度に調教使役することは当を得たことである。
元来畜産終局の理想は,その用途に対する高性能のものを飼育利用することにあって乳牛はその種類の上から言っても役利用は主目的ではないのであるが,現在飼育されている乳牛のかなり多数が牛乳を搾るだけの利用では充分酪農経営を有利にするものとは言えない現状である。
而して泌乳量と酪農経済の面からは最低経済乳量は年間25石(1日平均6升8合)であり,しかも年間25−30石以上の泌乳能力のものでは労使の泌乳能力に及ぼす影響も大きいので,25−30石以上の乳牛は労役に用いて泌乳量を減ずるよりは寧ろ搾乳専門にした方がよく,これ以下の能力の乳牛では牛乳生産,厩肥の生産に加うるに労役の利用によって乳牛の経済価値の向上を図らなければならない。勿論仔牛の頃から充分調整使役してあるものは相当に力量もあり使役による乳量の減少も少ないので仔牛の頃より調教することが肝要である。
乳牛の役用能力についてはすでに種々の試験結果が発表されているが,前京都大学教授,羽部博士が昭和21年に兵庫県氷上郡吉見村で10頭の乳牛を用いて牽引能力の検定をした試験成績によれば和牛と乳牛の仕事の能率を比較すると100対66.8で大体乳牛は和牛の6−7割の仕事をすることが出来るし,又乳牛の牽引力は体重500sの牛で50sを引く力があり,その率は体重10%(和牛15%)換言すれば乳牛は体重の10%前後,和牛は体重の15%前後の牽引力があると報じている。
従って乳牛は軽い土質,砂質地帯では役利用に適しているが,重粘土質では無理な場合が多い分けである。又農事作業について考察すれば耕起作業,車の牽引作業では和牛の7割弱の能力であるが,水田代掻,中耕除草のような牽引抵抗の軽い作業では和牛に対して遜色なく充分農事作業を課すことが出来る。
又四国農試,土地利用部の試験によると,
乳牛の役用能力は和牛に比較してやや低く育成牛7割8分〜8割7分,泌乳牛はこれより低く約6割7分の能力を持っていると報じている。この様に乳牛と言っても年令的差異によって役用能力が違い,若い育成牛では殆んど和牛の9割近くまでその役力を発揮させることが出来る上に,保健衛生上或は将来良い乳牛に仕立てるためにもぜひ畜力利用することが望ましい。ところが泌乳牛となれば,本質的にやや無理がいくことは当然であって特に我が国の農繁期のように短期間に仕事に急ぐ場合(麦刈から田植)ややもすると作業進度に重点がおかれて過重な労働を強いる場合が起り却って過労に陥って不幸な結果を招くことになるから泌乳牛の能力は和牛の7割足らずと言うことを銘記して無理のないように使役しなければならない。
乳牛の役利用上最も注意しなければならないことは,乳牛はあくまでも乳牛であって,産乳,産脂という本来の役目を持っていると言うことである。ところが労役に利用すれば,乳量は多少なりとも減少し,乳成分に変化をきたすことは明かであるので役利用が如何程に乳量,乳質に影響するかと言うことについて正しい理解を持たなければならない。
この関係について畜産試験場(千葉)では昭和14年と同15年の2年に亘って乳牛の使役が牛体及び泌乳量,乳質にどのような影響があるかを2回試験している。
第1回は8月盛夏の候(昭和14年8月14日−28日)に泌乳最盛期を過ぎたホルスタイン種2頭を用いて試験期間15日間を5日宛3期に分け,第2期を労役期として毎日2時間(午前10時−正午)宛道路上を重量60s,牽引抵抗15sの橇を引かせて牛体に及ぼす影響と乳量,乳質に及ぼす影響について調査した。5日間の仕事量は562,500q(約0.26馬力)(平均速度毎秒1.04m)であり,試験期間中は労役期に於ても特別に増飼をしなかった。
又第2回試験は春5月(昭15年5月15日−29日)に前回同様な乳牛で同様な方法で試験したが試験結果は「第1表」「第2表」の通りである。尚第2回試験期間中午前10時の気温は16−21度Cであった。
(第1表)牛体に及ぼす影響(畜試)
| 区別 | 体 重 (s) |
体 温 | 呼 吸 | 脈 拍 | 血 圧 (mm) |
赤 血 球 沈降速度 |
赤血球数 (万) |
白血球数 | 血色素 (mg) |
|
| 試験区分 | 期間 | |||||||||
| 第1回 試 験 (夏季) |
第1期 | 549.8 (100.0) |
38.7 | 47 | 63 | 130 | 18 | 823 | 9,975 | 10.5 |
| 第2期 (労役直後) |
515.8 (93.8) |
40.9 | 100 | 140 | 198 | 14 | 860 | 9,350 | 11.8 | |
| 第3期 | 524.2 (95.3) |
39.1 | 82 | 83 | 145 | 18 | 783 | 9,085 | 10.5 | |
| 第2回 試 験 (春季) |
第1期 | 510.6 (100.0) |
38.8 | 27 | 67 | 146 | 12 | 640 | 8,528 | 8.6 |
| 第2期 (労役直後) |
502.2 (98.4) |
39.6 | 77 | 86 | 182 | 15 | 727 | 8,890 | 9.1 | |
| 第3期 | 513.9 (100.6) |
38.7 | 34 | 68 | 149 | 14 | 682 | 9,010 | 9 | |
(第2表)乳量乳質に及ぼす影響
| 区 別 | 乳 量 (s) |
脂 肪 率 (%) |
脂 肪 量 (s) |
|||||||
| 試験区分 | 期 間 | A 号 | B 号 | 平 均 | A 号 | B 号 | 平 均 | A 号 | B 号 | 平 均 |
| 第1回 試 験 (夏季) |
第1期 | 11.3 | 16.6 | 14 | 3.53 | 3.23 | 3.38 | 0.38 | 0.54 | 0.46 |
| 第2期 (労役期) |
9.8 (86.7) |
11.5 (69.3) |
10.7 (76.4) |
4.26 (121.5 |
4.92 (152.3) |
4.61 (136.4) |
0.42 (110.5) |
0.55 (101.9) |
0.49 (106.5) |
|
| 第3期 | 10.1 (89.4) |
13.6 (81.9) |
11.9 (85.0) |
4.24 (120.1) |
4.28 (132.5) |
4.26 (126.0) |
0.43 (113.2) |
0.58 (107.4) |
0.51 (110.9) |
|
| 第2回 試 験 (春季) |
第1期 | 19.9 | 18.1 | 19 | 2.81 | 3.19 | 3 | 0.56 | 0.58 | 0.57 |
| 第2期 (労役期) |
19.6 (98.5) |
16.7 (92.3) |
18.2 (95.5) |
3.01 (107.1) |
3.27 (102.5) |
3.14 (104.7) |
0.56 (100.0) |
0.55 (94.8) |
0.56 (97.4) |
|
| 第3期 | 20.1 (101) |
18.4 (101.7) |
19.3 (101.3) |
3 (106.8) |
3.09 (96.9) |
3.05 (101.5) |
0.6 (107.1) |
0.57 (98.3) |
0.59 (102.6) |
|
備考 ( )内の数字は第1期を100とした指数を示す。
即ち第1回の夏季の試験では供試牛2頭共に労役期に入って疲労の為に漸次採食不良となり青刈玉蜀黍,乾草を残食し,疲労の甚だしい時は濃厚飼料も残食した。その結果牛体の疲労は第3期末になっても回復せず数字的にも完全とは行かなかった。泌乳量は労役期になって76.4%に減少し,しかも第3期の間に容易に回復せず第1期乳量に対して85.0%の回復であった。脂肪率は労役期に著しく高くなったため脂肪量は却って106.5%に増加した。
次に盛夏の候を避けて春5月に行った第2回の試験では採食状態,疲労の程度,外観,健康,乳量等について前回程著しい影響を認めなかった。即ち牛体に及ぼす疲労度は前回よりも軽く,第3期末には全く回復し,泌乳量は労役期には95.5%に減少したが前回に比較してその減少率は著しく低く第3期には乳量は全く回復した。脂肪率は労役期に若干高くなったが前回程でなく,ために脂肪量は97.4%に僅かに減少した。
又この試験の第1,第3両期平均5日間に対する労役期の総乳量,総脂量の低下量,増加量を一括して示すと第3表の通りである。
「第3表」の成績から第1第3両期の平均に対して労役期の数値は第1回試験では対照期に対する労役期の乳量の減少率は17.5%で1日平均,乳量は2.26s(役1升2合)減少し脂肪量は4g増加し,第2回試験では乳量の減少率は5.1%で1日平均,乳量0.98s(約5合)脂肪量22g減少した結果となった。この場合使役するために特別に増飼をしなかったのであるから,或程度増飼をすると乳量,乳脂量の減少は当然低くなる分けである。又本試験結果より乳牛は暑熱時の労役の影響は概して大きいことを特に熟知して戴きたい。
これ等の試験結果から乳牛を軽い使役(砂質地帯の耕起作業代掻,麦畑の中耕除草等)に利用しても産乳,産脂能力に著しい悪影響はなく却って体躯が緊実し肢蹄歩様が良好となって乳牛本来の使命である産乳,産脂にも将来好結果をもたらすことになる。
(第3表)労役の乳量,乳質に及ぼす影響
| 試験区分 | 第 1 回 試 験 | 第 2 回 試 験 | ||
| 期 間 | 乳 量 (kg) |
乳 脂 量 (kg) |
乳 量 (kg) |
乳 脂 量 (kg) |
| 第1期 | 69.6 | 2.3 | ― | ― |
| 第3期 | 59.05 | 2.52 | ― | ― |
| 第1期・第 2 期平均 | 64.33 | 2.41 | 95.63 | 2.89 |
| (労 役 期) | 53.05 | 2.43 | 90.75 | 2.78 |
| 増減 | -11.28 (−17.5) |
0.02 (−0.8 ) |
-4.88 (−5.1 ) |
-0.11 (−3.8 ) |
| 1日平均の増減量 | -2.26 | 0.004 | -0.98 | -0.022 |
備考 一.乳量,脂肪量は5日間量である。
二.( )は対照期の平均に対する労役期の増減の%である。
乳牛を役利用すれば乳量は1−2割減少するが,この減量は使役の方法,増飼量,或は使役時の環境等に支配されて一定ではない。
今乳牛を役利用する場合の注意事項を述べると次のようである。
乳牛を役利用する際,よく調教されたものほど或は使役の経歴を多くもつほど乳量の影響は少なくてすむものであるから仔牛の時代に十分調教しておかなければならない。
鼻環又は鼻木を通すのは生後10−12ヶ月の間に行いこの時期には本格的な調教には入らないが調教の準備をしておくことが必要である。即ち夕方の牽引運動をする時に牛に号令して前進や停止位のことを予め教えておいた方がよい。
そして生後1年目頃から本格的調教を始め,静止,前進,停止,後退,方向転換,挙肢等の動作を教え込み,次いで装鞍,丸太の輓引,軽車の輓引及び耕起作業を段々に仕込んで肢蹄を強固に,体躯を緊実させて行くのが最もよい。成牛になって急に調教,使役することは困難である。
蹄は牛体をささえる土台とも言うべきもので,役利用に際しては,蹄の良否は仕事の能率及び牛体への影響からも重大な役目をもっている。馬の削蹄の大切なことは誰でも知っているが,牛の方は馬よりもその影響が少ない関係が相当のびた蹄のものでもそのまま平気で使役させているのをよく見受けるが,いくら牛は蹄が2つに分かれているからと言っても,蹄が伸びていると歩きにくく,ふんばりもきかないことには変りはなく,力が出ないのは当然である。
普通削蹄は年3−4回少くとも春秋2回は是非実施して貰いたい。但し使役の直前にあまり蹄をきりすぎると,労役によって蹄を痛めるから切りすぎないようにし,出来れば使役の2週間位前に削蹄をすませておくことが望ましい。
乳牛を役に利用する年令は満1才から3−3.5才までの未経産仔牛時代を主とし,初産後は乳房の関係もあるから適宜に使役することが望ましい。
乳量の点では年25−30石以上の泌乳能力の牛は労役の影響も大であるから余り労役に用いず,それ以下のものを用いるようにし,又産前1ヵ月の休養期と産後30−60日間の泌乳最盛期には労役に用いない方がよい。
乳牛を役利用する場合,乳量の減少をより少なくするためには合利的使役方法によると共に,適当に増飼をしなければならない。労役に対する増飼量をケルネルの飼養標準を用いて算出すると「第4表」のようになる。
即ち発育,維持産乳飼料の他に1日2−3時間の経役では体重1,000sについて麩0.5sを増飼し,又1日4−5時間の中役では同じく大麦0.72sと大豆粕0.08sを,1日6−8時間の重役では同じく小麦0.8sと大豆粕0.2sを増飼してやればよい。
増飼の時間は使役当日からの給与ではあまり効果がなく,役利用する3−5日前から給与し,使役終了後も5日間位は増飼を続けた方がよい。
(第4表)労役に対する増飼量(体重100s当り)
| 使役時間 (時間) |
乾 物 量 (s) |
可 消 化 粗蛋白質 (s) |
可 消 化 全栄養分 (s) |
与える濃 厚飼料の 体重に対 する割合 (%) |
給与濃厚飼料の養分含量 | 実 際 給 与 量 | ||
| 可 消 化 粗蛋白質 (%) |
可 消 化 全栄養分 (%) |
|||||||
| 軽役 | 2月3日 | 0.5 | 0.06 | 0.32 | 0.5 | 12 | 64 | 麩 0.5s 大 麦 0.72〃 大豆粕 0.08〃 小 麦 0.8〃 大豆粕 0.2〃 |
| 中役 | 4月5日 | 0.8 | 0.1 | 0.56 | 0.8 | 12.5 | 70 | |
| 重役 | 6月8日 | 1 | 0.15 | 0.78 | 1 | 15 | 78 | |
牛の使役にあたってはどんなに忙しい時でも,牛に反芻をさせる時間を与えてやることが大切である。折角大切な牛を反芻のために休息を与えないで使役して食べたものが第1胃に停滞して,食滞や鼓張症を起して台なしにすることがあるから注意を要する。牛は食後平均して30分−1時間経つと反芻を始め,約30分継続するから食後1時間−1時間半の休み時間を与えることが望ましい。
次に使役の前後には水を十分飲ませることが必要でこれは体内の水分代謝の円滑をはかるためでもある。又塩の給与も大切で労役時には牛は汗ビッショリになって働いて居り,汗とは端的に言って塩と水であるから牛を疲労から救うためには是非塩を与えなければならない。即ち労役のために1日食塩30−40gを増給してやるとよい。
水田の代掻等をさせると乳房が泥水でよごれ,乳頭が荒れることがあるから,豚脂,ワセリン等の油脂類を乳頭部に塗布しておくとよい。
乳牛は暑熱に対する抵抗力が弱いので麦跡耕起及び水田事業(荒代,代掻等)には注意して使役しなければならない。暑熱の乳量脂肪量に対する影響については「第3表」を参照して戴きたい。即ち同じ労役で5月の乳量減少率5.1%に対して8月は17.5%の減少率によっても十分知ることが出来る。
5−6月の農繁期における気温を考えて見ると,朝夕は11−25度,日中は25−30度位であって,日中使役するとなれば相当高温下に役利用することになり牛体及び乳量に相当な影響を及ぼすことになる。
実際に5−6月に使役する際は日中の暑い時はさけて朝夕の涼しい時(11−25度)に使う様にし,しかし1日の作業時間を2−3回に分割して連続して使役に用いないようにすることが最も肝要である。即ち朝夕の涼しい時に2回(午前2−3時間,午後2−3時間)に使役することが役利用上の常識であってほしい。
乳牛は妊娠末期には休養が大切であるし,また泌乳は分娩後30−60日が最盛期であるから,この時期が農繁期に当らないように妊娠,分娩を考えて人工授精しなければならない。
即ち乳牛の役利用については種付時期を考慮して毎年4,5月頃に種付を行い1−2月に分娩させれば産前,産後の休養も十分であり,春の農作業にも支障がない。
以上乳牛の役利用について概説したのであるが,乳牛はあくまで乳の生産が使命であって決して役畜化してはならない。乳牛役利用の根本理念は,役利用する場合に泌乳への影響を最少限度にくいとめて余力を役に廻すという点にある。従って役利用に際しては上述のような諸注意の下に,正しい理解と合利的使役方法により大いに利用されることを切望して本項を終る。