| ホーム > 岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和30年3月号 > スエーデンの人工授精 |
家畜の人工授精は1936年にコーレ・ベークストレーム博士によってにスエーデンに紹介された。同氏はその翌年,精液の採取,稀釈,貯蔵及び人工授精等のいろいろな技術を試験するために研究を行った。これ等の研究によってデンマークで行われた実験と同様に,間もなく自然交配と同様の受胎率が得られることがわかった。
この人工授精の方法が,又牛の改良上,新しい将来性を見出したのでスエーデンにおける人工授精は発展し始めた。そして最初から厳格な協同基礎の上に組織された。この運動に非常な関心を示した地方では設立委員会が組織され,地方組合が設立された。農民間に多少共自発的な運動でこの様に発展した人工授精は彼等自身の組合を組織化し経費負担の準備もされた。しかし乍らこの線に副った発展は予想されていたとおり地方の組合は牛の密度の多い地方に最初発展して他の地域を残すと言う不利な傾向があった。
1942-43年に最初の組合が設立されてからは人工授精は少しずつ増加して行った。しかし乍らここ数年乳牛の頭数や牛乳生産量が減少したり,牛乳生産者も他の農業事業に転業したか,乳牛の頭数を減らしだしたので,牛乳の生産も足踏状態になった。このような状態にも拘らずこの人工受精は「第1表」に示しているように段々と普及して行った。
1953年には全スエーデンに人工授精の要求が著増していることが注目された。この運動が新に,そして急激に広がって進行していることを示してる。
(第1表)スエーデンに於ける増加状況
| 年 | 組 合 数 | 組 合 員 数 | 人工授精頭数 | 総種付頭数に対する 人工授精頭数比率 |
| 頭 | % | |||
| 1943 | 3 | - | 2,086 | 0.1 |
| 1944 | 10 | - | 4,322 | 0.2 |
| 1945 | 11 | 1,479 | 29,071 | 1.6 |
| 1946 | 16 | 4,347 | 67,326 | 3.7 |
| 1947 | 19 | 7,878 | 110,762 | 6.1 |
| 1948 | 23 | 13,770 | 171,552 | 10 |
| 1949 | 27 | 18,145 | 201,910 | 12.1 |
| 1950 | 27 | 22,120 | 262,069 | 15.8 |
| 1951 | 27 | 25,971 | 296,909 | 18.5 |
| 1952 | 28 | 31,066 | 336,179 | 21.7 |
それぞれの組合で管理委員を選挙し,この委員が組合運営の責任をまかされている。管理委員の機能は又雄牛の選定,職員の雇用及び監督を行う。
人工授精職員は各組において中央,支所及び種雄牛飼育所を通じて獣医長の責任で精液を寄せ集め,管理,準備及び組合の野外の仕事を行う。現在活動している人工授精職員の構成は25人の獣医長,71人の獣医師,12人の獣医助手と84人の家畜人工授精師である。
地方の獣医師は人工授精活動のための重要な幾多の問題を解決し得るが,その他の問題は別個の研究所で処置される。
王立獣医大学の産科学及び生殖疾病学部では,組合へ販売のため提供され若雄牛の精液の品質と生産機能障害のあるような雄牛の精液を定期的に調査している。
又同部では胎児弧菌(Vibrio fetus)(牛の伝染性流産の原因菌)に関連した診断方法の改良を行うために実験を行っており,同時にこの病気の伝播とその重要性を意味づけるために野外の研究も行っておる。
地方の獣医師の協力の下に同学部はこの方法の活動のためにその他の興味ある生産問題をも研究をしている。
ウプサラ大学の動物学科は地方組合の協力のもとに稀釈精液の改良と精液の受胎能力の判断をもっと的確に発見出来る方法を見出そうとして,基礎精液の生理学の研究をしている。
人工授精の効用の殆んど全部が牛の改良実践程度如何によるので,品種改良に重点的に集中的であるべきである。この事実を認めて委員会はwiadに品種改良研究所を設立してこの道の活動のため一般的興味のある品種改良の研究をしている。そして記録を取扱う速度を増すと共に,正確さを増すため,この研究所では精密な事務整理機械(国際ビジネスマシン)を備えている。
組合から同研究所へ提出される処置証明書の写に基づいて数種の研究が行われている。このようにして各種雄牛の受胎率や野外の仕事の能率が規則正しく登録され,そして母系の解剖学的,生理学的の障害の頻度を研究することができる。
同じ資料から種雄牛はその仔の雌牛の性機能に関して種雄牛も遺伝試験を受けている。地方の獣医師によって指導された野外試験からの資料も処置証明書に登録され,そして統計的に分析される。ウイアードの他の農場で研究されている研究や実験動物の共同の働きによって幾多の品種改良方法が研究されている。相互淘沙の選定を応用した雑種交配で見込ある結果に達したので今後殆んどの研究はこのようなものか,これに類似した研究に進むだろう。
帝室農業委員会,飼育協会,郡農業会,指導委員会は一つの委員会を結成していて,スエーデンの斯界の遺伝を研究している。委員会の計画によると,種雄牛全部の第二世雌牛の登録されたものは,自動的に305日の搾乳期記録によって子孫の後代検定が行われる。試験の正確を期すために305日記録に達する前に群から離れる雌牛のために期待量が計算される。
最初の搾乳期間中のFCMの平均収量は対応群平均と母親の同じ搾乳期間中の平均出乳量とその対応群平均と比較される。搾乳の進むに従って収量がどの様に変化するかと言う重要な問題を研究するため,第2,第3番乳汁分泌の平均収量を計算して対応群と比較する。現在では第3番目の人工授精では証明された種雄牛を使用する。前にも延べたように最初に人工授精に使う種雄牛は仔の雌牛の性機能によってしらべる。
スエーデンの野外試験は他の多くの国に反して人工授精ばかりでなく,不妊症の手当や妊娠診断を含めた性衛生の取締を行っている。これによって報告の来ないのは妊娠率は計算できないが,直腸検査による妊娠診断法の結果が届いたその結果でなされている。
野外試験の性質上最初は獣医師しか用いられなかったが,後にはだんだんと定まった仕事は特別に訓練された人工授精師に受けつがれた。それによって獣医師等はもっと適当な問題に集中できることになる。
スエーデンにおける人工授精の発展は他の諸外国における発展とは競争することはできないが,汎国家的運動にまで発達している。
過冷凍精液の応用完成は次の段階の急激な発展をもたらすことは明白である。人工授精は近い将来スエーデンの酪農産業にもっと重要な役割を演ずることを期待することができる。人工授精は過冷凍精液の使用とあいまって家畜の改良に新しい可能性のある方向を示した。しかしこれらの技術は彼等自身よりすぐれた動物を創造できるものでもなく,又遺伝の一般原則を変えたものでもない。
人工授精及び過冷凍精液の利点は用意周到な計画繁殖のみによって十分開拓される。畜牛の実際的な重要さの特質の大部分は自然における量である。それ故多数の遺伝因子の相互作用にたより,環境にもとづいて顕型が制限される。
結果としてすぐれた繁殖方法の進捗は発生学の最も特殊な環境の一つとなっている。
かくて家畜改良の問題に発生学原理を有効に応用するためには単に一般発生学の広い知識が必要なだけでなく新しい複雑な統計技術の経験が必要である。このためこの様な状態の事柄によって人工授精に関連した最も重大な問題は繁殖政策の改善である。(三村技師訳)