| ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和30年4月号 > 仔緬羊の飼育 |
緬羊の分娩も殆んど終り仔緬羊の育成時期となった。仔緬羊は生れてから約3,4ヵ月間は母乳と飼料で飼育されるのであるが此の期間が仔緬羊の発育極めて迅速な時期であり尚乾草から青草に移り,青草を喰う様になると一段と発育も顕著となるものであるから分娩直後より管理に留意し満足な発育が出来る様に飼育者は注意しなければならない。先ず仔緬羊の発育に大きな影響を与えるものは母体であり母体の栄養状態によって仔羊の最も必要とする乳量が左右され,この泌乳量の多寡が仔緬羊の発育に大きな差をつけるもので母体の栄養状態が良くなれば泌乳旺盛となり仔羊に喜んで哺乳する様になり,これは仔羊の発育をぐんぐん増進させる結果となるもので反面母体の栄養不良な場合には泌乳量も僅かとなり哺乳を嫌う様になるもので,これは仔羊の発育を遅れさすものである。母緬羊は妊娠,分娩更に哺乳と相続き栄養を消失しているものであるから,これを維持し,且つ必要量の泌乳をさせる様飼料も平素より増加し良質の飼料を充分摂らせるべきで,例えば1日当上等乾草2s,穀類200g,糠類200g,大豆粕100g,根菜800g,を与えればよい。根菜類は特に泌乳量を増加させる効果があり泌乳中の緬羊には好適した飼料である。仔緬羊は生後2週間もたつと柔い乾草,濃厚飼料等を舐める様に喰い始め,この頃から少量の濃厚飼料,乾草を給与し,次第に慣らす様にしなければならない。仔緬羊は消化能力充分でなく飼料の粗悪は直に消化器に故障を招き易いもので下痢は仔羊にとって最も恐しく,この成長の最も旺盛な時期に一旦下痢を起すと以後取返しのつかない程の発育不良となる事が屡々あるので最も注意しなければならない。従って最初は消化し易く,又蛋白質に富んだものを選ばなければならない。即ち,飼料としては上等の青刈大豆等荳科の乾草を細切し,さらに濃厚飼料として,砕麦,玉蜀黍,大豆粕を混じて与えるのが適している。今,その一例を示すと
| 生後月数 | 大麦 | 米糠 | 麩 | 玉蜀黍 | 生後月数 | 大豆粕 | 青草 | 乾草 |
| 1ヵ月以内 | 20g | 10g | 40g | 5g | 1ヵ月以内 | 5g | − | 50g |
| 2ヵ月以内 | 30 | 15 | 50 | 10 | 2ヵ月以内 | 10 | − | 150 |
| 3ヵ月以内 | 40 | 20 | 60 | 15 | 3ヵ月以内 | 15 | 1 | − |
| 4ヵ月以内 | 60 | 20 | 65 | 30 | 4ヵ月以内 | 20 | 1.5 | − |
で飼料量は仔緬羊の大小,強弱等によって多少変更しなければならない。舎内で仔緬羊に飼料を与える場合には舎の隅に仔羊柵を設けて仔緬羊のみ通れる様にして親に邪魔をされなく静かに喰わせる事が必要である。尚粗飼料は出来る限り早く青草に切り替える様にするのがよいが急激に乾草から青草に変化するのは危険であります。徐々に馴らし後日は青草の生えている放牧地,運動場に出来得る限り出して母緬羊と共に柔い栄養分の多い青草を自由に喰べさせながら日光浴をさせ運動をよくさせば栄養,健康を大いに増進させるものである。生れてから4ヵ月間の哺乳期間中に親,仔共に完全な飼育管理によれば仔緬羊の発育は大体,生時3.5sのものが,1ヵ月7.3s,2ヵ月8.8s,3ヵ月14.5s,4ヵ月20.5s位の発育率を示すもので離乳後の発育にも大きな影響をもつものである。