| ホーム >岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和30年7月号 > 第2回講習の回顧 |
昭和29年度は本県の酪農振興上正に画期的な年であった。即ち挙県一致の努力によって集約酪農地区として指定を受け,この作州地区に待望の「ジャージー」種を迎え,本県酪農振興計画実施の第1年度に入ったのである。「ジャージー」種の受入については導入農家の技術的指導講習,畜舎,厩肥舎の新築改造,乾草の調製,エンシレージの準備,牧野の造成等一連の準備に忙殺されたが導入農家は皆熱心に準備を進めかくして10月末第1回の導入牛を迎えてから数次に亘って導入を完了し,爾来今日まで概ね順調に進行して来ていることは洵に慶ばしいことである。
酪農の振興は本県施政の最も重要な事項であり,その実現に凡ゆる努力が払われている。酪農振興の具体的方策は種々あろうが,事業発展の基礎をなすものは人であり,酪農の熱意を有し,技術に長じ推進力のある若人が多数に輩出してこそ将来の発展を期し得られるものである。か様な見地から当所においては,毎年酪農青年の教育を行っているが,昭和29年4月から昭和30年3月迄の1ヵ年間における第2回講習の状況をここに回顧し,将来の改善に資すると共に関係各位の御指導を仰ぎたいと思う。
本年度の講習生として入所した者は別表に揚げる通りであるが,幸い途中において1名の事故も無く入所した者が全部揃って卒業したことは慶ばしいことであった。
講習生を出身地別に見ると次のとおりである。
| 出 身 地 | 人 員 |
| 玉野市 | 1名 |
| 吉備郡 | 1 |
| 総社市 | 2 |
| 高梁市 | 1 |
| 津山市 | 3 |
| 真庭郡 | 5 |
| 勝田郡 | 2 |
| 英田郡 | 3 |
| 久米郡 | 8 |
| 山口県 | 3 |
| 島根県 | 1 |
| 計 | 30 |
即ち県内26名,県外4名となって居り,県外講習生が或る程度入所することは,県内出身の講習生を励ます上からも望ましいことであると思う。
次にこれを年令別(数え年)に見ると次のとおりである。
| 年 令 | 人 員 |
| 18才 | 1名 |
| 19 | 7 |
| 20 | 8 |
| 21 | 10 |
| 23 | 2 |
| 25 | 1 |
| 28 | 1 |
| 計 | 30 |
即ち19才から21才という青年が大部分を占め青気発溂として積極性に富む者多く,将来のために頼もしい限りである。
次に出身校別に見ると次の様になっている。
| 出 身 校 | 人 員 |
| 農業高校 | 22名 |
| 旧制農学校 | 1 |
| 三徳塾 | 1 |
| 中央開拓講習所 | 1 |
| 工業高校 | 1 |
| 商業高校 | 1 |
| 高校中退 | 1 |
| 青校中退 | 1 |
| 中学 | 1 |
| 計 | 30 |
即ち高等学校出身が大半を占めている。この年度の入所時期は恰も酪農業界が最も好況の時ではあり,集約酪農の指定等で活気を呈して居り,一般の酪農に対する意欲が最も旺んな時であったので,従って入所希望者が多く,収容上梢無理ではあったが,30名入所させた次第であった。
昭和29年4月当所講堂において入所式を挙行した。
入所式の翌日は終日実習とし,10日から学科講習には入った。学科は酪農関係を主とし,一般畜産,飼料作物,農事その他農村中堅青年として修めておかねばならぬ学科等34科目について行った。この内酪農,畜産,飼料等については主として当所職員が担当し,その他の学科については県庁畜産課,農業改良課,農業試験場,岡山大学,北部酪農等の方々及び実際酪農経営者の方を煩わした。この1ヵ年間に行った学科講習の状況は次のとおりである。
| 学 科 | 時 間 | 学 科 | 時 間 |
| 乳牛 | 77 | 獣医学大意 | 24 |
| 品種飼養 | 57 | 酪農経営 | 9 |
| 管理 | 8 | 畜力利用 | 9 |
| 審査登録 | 12 | 畜産法規 | 14 |
| 畜産 | 114 | 農業簿記 | 8 |
| 総論 | 6 | 農業経営 | 12 |
| 和牛 | 51 | 土壌肥料 | 20 |
| 馬 | 6 | 土壌肥料 | 14 |
| 緬羊 | 9 | 厩肥 | 6 |
| 山羊 | 6 | 普通作物 | 4 |
| 豚 | 12 | 農機具 | 8 |
| 鶏 | 24 | 農畜産加工 | 24 |
| 自給飼料 | 42.5 | 肉加工 | 8 |
| 飼料作物 | 34.5 | 農産加工 | 16 |
| 飼料木 | 8 | 病虫害 | 8 |
| 飼料 | 43.5 | 果樹 | 10 |
| 牛乳,乳製品 | 55 | 農業土木 | 4 |
| 牛乳 | 39 | 農業気象 | 10 |
| 乳製品 | 16 | 課外 | 33 |
| 生理衛生 | 47 | 特別講習 | 72 |
| 改良蕃殖 | 10 | 人工授精講習 | 70 |
| 人工授精 | 48 | 計 | 776 |
学科は当所職員担当のものについては午前8時半から正午迄,所外講師担当のものについては午前10時から正午迄行った。而して概ね講師の口述を筆記したが,1部については教科書を用い又必要により適当の参考書を購入せしめて勉強させた。将来は出来得ればなるべく適当な教科書を用いる方が好都合と思う。学科講習の時間は出来る丈最初の計画に合わせるべく努力したが,講師の都合その他で相当変更になったことはやむを得なかった。
酪農及び畜産は技術であり,再三実地に当って練習を積むことが必要であり,将来自家経営者として又指導者として立つ場合実地の経験に富むことが必須の条件であるので,実地講習には特に力を入れ朝の食前作業及び午後は各畜舎に配属して実習を行わしめた。実習は講習生を10名宛3班に分ち乳牛及び人工授精,和牛及び中小家畜,飼料作物について10日間宛巡回せしめた。本来ならば乳牛及び人工授精関係における実習を今一層多くとりたかったのであるが,当所における酪農関係施設が未だ規模が小さいのでやむを得なかったのであるが,又考え様によっては和牛,中小家畜及び圃場に関する知識,技術の習得も農家としては極めて重要な事項であるので,講習生が卒業してから畜産経営上の広い知識を保持することからすれば,寧ろ好結果を齎すのではないかと思っている。昭和30年度においてはかねてから懸案の酪農及び人工授精施設の相当な拡充を是非実現させていただきたいと思う。
朝始業のサイレンと共に場員講習生一同高原の澄み切った空気の中に各受持の場所について家畜に朝餉をやり,又青々とした圃場に鍬を取ることは洵に愉快であり,これで青草がすくすくと伸び美味しい草を腹一杯食べて沢山乳を出して呉れることを思いつつ仕事をすることは何物にもかえ難い楽みである。
既定の学科の外に適当の日取に講師に御来場を願って特定の科目について課外講義を行った。その状況は次のとおりである。
| 年 月 日 | 科 目 | 講 師 |
| 昭和29年6月19日 | 畜産行政 | 惣津畜産課長 |
| 7月10日 | 立体農業 | 久宗 壮氏 |
| 8月23日 | 自給飼料 | 吉岡隆二氏 |
| 8月31日 | 酪農全般 (第 1 回) |
奥山酪農協会長 |
| 11月1日 | 農業 | 鋳方農業試験場長 |
| 11月25日 | 修養講話 | 壺井岡山教会牧師 |
| 12月10日 | 酪農経営 | 永友岡大農学部長 |
| 12月21日 | 時事問題 | 小山津山朝日記者 |
| 昭和30年2月3日 | 経済事情 | 小坂田中銀支店長 |
| 2月25日 | 酪農全般 (第 2 回) |
奥山酪農協会長 |
この外期間内に県その他の主催にかかる講習会,共進会等が開催されたので次のとおり講習生を出席させて受講又は視察せしめた。
| 年 月 日 | 会 名 | 講 師 | 場 所 |
| 昭和29年6月15日 | 乳牛登録講習会 | ホルスタイン登録協会 加藤技師 | 当 所 |
| 7月26日 | ジャージー種講習会 | 県及び当所職員 | 当 所 |
| 7月30日 7月31日 |
蕃殖障害講習会 | 県職員 | 当 所 |
| 9月8日 | ジャージー講習会 | 岡大 小松教授 川瀬勇氏 |
津山市 |
| 9月17日 | 畜産共進会 | 苫田郡加茂町 | |
| 9月25日 | 乳牛共進会 | 勝田郡勝間田町 | |
| 9月29日 | 畜産共進会 | 真庭郡富原町 | |
| 10月7日 同 8日 |
県畜産共進会 | 津山市 | |
| 昭和30年1月7日 | 酪農講演会 | 岡大 小松教授 | 津山市 |
| 1月26日 | 青年酪農研究発表会 | 津山市 |
なおこの外酪農工場における牛乳取扱及び加工実習を行った。
将来酪農を志す青年にとって人口授精の技術を修得しておくことは自家経営を行うと指導者となる場合とを問わず極めて必要なことであるので講習生に対し農林省の指定する人工授精講習及び修業試験を行った。その状況は次のとおりである。
| 月 日 | 午 前 | 午 後 | ||
| 科 目 | 所要時間 | 科 目 | 所要時間 | |
| 昭和30年2月8日 | 畜産行政 | 2時間 | 飼養管理 | 3時間 |
| 2.9 | 蕃殖生理 | 3 | 蕃殖生理 | 4 |
| 2.1 | 精虫生理 | 3 | 種付の理論 | 4 |
| 2.11 | 関係法規 | 3 | 精液精虫検査法実習 | 5 |
| 2.12 | 胎生遺伝概論 | 3 | 人工授精 | 4 |
| 2.13 | 人工授精 | 4 | 人工授精 | 4 |
| 2.14 | 器具機械 | 2 | 生殖器解剖 | 5 |
| 2.15 | 生殖器解剖実習 | 2 | 家畜改良と登録 | 2 |
| 消毒 | 2 | |||
| 2.16 | 発情鑑定実習 | 3 | 人工授精実習 | 4 |
| 2.17 | 人工授精実習 | 4 | 同 | 4 |
而して修業試験を次のとおり行った。
2月21日 学科
2月22日 実地
全期間を前期(4月~9月)と後期(10月~3月)に分ち夫々の終りにおいてその期間内に講習した学科について試験を行い講習生の習得状況を考査すると共に将来の講習上の資料とした。
学科及び実地講習は3月10日をもって終了しその後,後期試験を行って3月23日県庁,市役所,北部酪農,各講師臨席の下に卒業式を挙行した。入所した全員が揃って元気で社会に巣立つことは何より嬉しいことであった。その内2名は入所中成績優秀であったので所長から表彰された。
英田郡作東町 本城宏道
高梁市宇治町 野口光朗
人工授精師試験は29名合格し,知事から夫々合格証が授与された。
蛍の光窓の雪
文読む月日重ねつつ
の歌と共に1ヵ年間指導した若人達と分れることは感慨無量である。
講習生は入所以来当所の暁牧寮に合宿させ,自治により共同生活をなさしめた。この共同生活の経験はこれから社会に出る青年にとっては極めて必要なことで,舎監指導の下に1ヵ年概ね順調に寮の運営が出来たことは慶ばしいことであって,この間の体験が将来役立つことが多いと思っている。
この1ヵ年間の講習の大要は以上のとおりであるが,この間講師の方々には本務御多忙の中に再三御越しを願って御講義を煩わし,御蔭をもって概ね所定の講習を遂行することが出来たことは感銘背く能わざるところで厚く御礼申上げる次第である。又県庁初め関係の場所には色々と格別の御援助をいただいて深く感謝致したい。次に講習生諸君には未だ施設の充分でない当所で不便を意に介せず,熱心に勉強して貰ったことは感謝に堪えない。元気で巣立って行った青年達はここで覚えた酪農の知識,技術をもってやがて大いに働いて呉れることと信じている。これらの人が原動力となって本県の酪農が健実な発展をして行く様になれば,当所の使命も果せる訳である。
現在は酪農業界の最も不況な秋である。こういう時にこそ大いに頑張ってほんとに地についた酪農を行うべきである。決して一時的好況を望んではならない。これから毎年当所からは相当数の卒業生が出ることと思うが,これらの人々が当所を中心に相互に手を繋いで酪農の発展に努めたい。
終りに関係者の方々の此上共の御支援を御願い致したい。
(表)昭和29年度卒業生名簿
| 住 所 | 氏 名 | 住 所 | 氏 名 |
| 玉野市東高崎 | 高木基憲 | 英田郡東粟倉村 | 井上国夫 |
| 吉備郡日近村 | 布下耕二 | 英田郡作東町 | 本城宏道 |
| 総社市小原 | 森脇清忠 | 英田郡作東町 | 片山武範 |
| 総社市富原 | 岡本敏夫 | 久米郡久米町 | 磯山正紀 |
| 高梁市本郷 | 野口光朗 | 久米郡久米町 | 池田 肇 |
| 津山市戸島 | 立垣陽良 | 苫田郡鏡野町 | 矢内康敬 |
| 津山市綾部 | 豊田道弘 | 久米郡久米町 | 岸川修久 |
| 津山市押入 | 光井 武 | 久米郡久米南 | 三船徹二 |
| 真庭郡二川村 | 川崎 宏 | 久米郡中央町 | 治部治徳 |
| 真庭郡勝山町 | 山田 正 | 久米郡柵原町 | 直原良介 |
| 真庭郡落合町 | 山田博利 | 久米郡久米町 | 神田康政 |
| 真庭郡八束村 | 美甘兼武 | 山口県佐波郡島地村 | 藤井 昭 |
| 真庭郡湯原町 | 高瀬直嘉 | 山口県玖珂郡由宇村 | 川本安昭 |
| 勝田郡勝北町 | 山本忠乙 | 山口県玖珂郡由宇村 | 山脇元春 |
| 勝田郡奈義町 | 福永孝雄 | 島根県仁多郡亀嵩村 | 佐藤恒雄 |