既刊の紹介肉用牛繁殖経営診断のまとめ平成13年

肉用牛繁殖経営診断のまとめ 平成13年

V 成雌牛飼養頭数規模別比較

 調査19事例のデータのうち、成雌牛1頭当たり経常所得が最高値と最低値の2事例を除外した17事例を、成雌牛飼養頭数規模で10頭未満、10頭以上20頭未満及び20頭以上の3つの階層(以下、順に小規模階層、中規模階層、大規模階層とする)に分けて集計したものが表1、表2及び表3である。
 また、参考に先進事例の集計結果を掲載した(表4,表5及び表6)。
 各階層に属する農家戸数は小規模階層が6事例、中規模階層が8事例及び大規模階層が3事例であり、下記の項目について比較した。

1.経営規模

 成雌牛の飼養頭数は小規模階層が7.8頭、中規模階層が13.3頭、大規模階層が30.0頭となっており、小規模階層と中規模階層では1.7倍、中規模階層と大規模階層では2.3倍、小規模階層と大規模階層では3.8倍の開きがあった。
 労働力員数は小規模階層が0.7人、中規模階層が1.1人、大規模階層が1.2人で、中規模階層は小規模階層の1.6倍、大規模階層は中規模階層の1.1倍、大規模階層は小規模階層の1.7倍となっているが、飼養頭数の開きと比べると差は小さい。

2.収益性

 成雌牛1頭当たり経常所得は小規模階層が108千円、中規模階層が100千円、大規模階層が89千円で、規模が大きい層ほど小さくなっており、これは前年度と同様な結果であった。なお、大規模階層が最小となったのは、売上高が小さかったことが影響している。
一方、家族労働力1人当たり経常所得は大規模階層が2,473千円と最大で、以下小規模階層の1,548千円、中規模階層の1,416千円となっている。大規模階層が最大となったのは、家族労働力1人当たり成雌牛飼養頭数が24.4頭と、小規模階層の10.9頭に比べて2.24倍、中規模階層の12.5頭に比べて1.95倍の労働効率となっているためである。
 経常所得総額は、小規模階層が833千円、中規模階層が1,346千円、大規模階層が2,793千円で、規模が大きい層ほど高くなっており、小規模階層と大規模階層では3.4倍の開きがあった。

3.生産技術

 分娩間隔は小規模階層が13.7ヵ月、中規模階層が12.9ヵ月、大規模階層が12.4月で、規模が小さい層ほど分娩間隔が長くなっている。例年規模が大きい層ほど分娩間隔が長くなっており、規模拡大に伴うデメリットと思われていたが、平成12年度は全く逆の結果で、大規模階層の努力が伺える。
 一方、販売子牛1頭当たりの出荷成績を見ると、日齢体重は雌子牛、去勢子牛ともに小規模階層の成績が最もよく、以下中規模階層、大規模階層の順になっている。また、生体単価も雌子牛、去勢子牛ともに小規模階層が最も高くなっており、出荷成績は規模の小さい層ほど優れた結果となった。これは前年度と同様な結果であり、まだまだ大規模階層では、子牛1頭1頭に対する十分な管理ができていないのが現状と思われる。

4.生産費用

 成雌牛1頭当たり購入飼料費は小規模階層が63千円、中規模階層が81千円、大規模階層が77千円で、中規模階層が最も大きくなっている。これは前年度と同様な結果であったが、先進事例では中規模階層が最小となっていることから、診断農家の特徴とも考えられ、成雌牛1頭当たり作付け延べ面積も中規模階層が15.5aで最小となっている等、規模拡大に伴う十分な対応ができていないのではなかろうか。
成雌牛1頭当たり当期生産費用の合計は小規模階層が349千円、中規模階層が305千円、大規模階層が236千円で、規模が大きい層ほど小さくなっており、このことは先進事例でも同様な結果となっている。大規模階層が最小となったのは、成雌牛1頭当たり総労働時間が83.5時間と最小で、家族労働費が低く抑えられていることが大きく影響している。また、大規模階層及び中規模階層は、スケールメリットによる減価償却費の低減も当期生産費用が小さくなっている要因である。