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図24に診断農家の成雌牛1頭当たり売上高及び家族労働費を除いた生産原価(以下、生産原価(労賃除)とする。)の推移を示した。
売上高は平成5年度(234千円)に大きく減少した後、徐々に増加しており、平成10年度(246千円)は前年度に比べて33千円減少したが、その後再び増加傾向を示し、平成12年度は前年度に比べて22千円増加の281千円となっている。このような売上高の推移はそのほとんどを占める子牛販売収入の増減によるものであり、これには子牛販売価格の影響が大きく、Uの4で示した診断農家の子牛販売価格の推移(図17)とほぼ同調していることから伺い知れる。ただし、繁殖成績の向上に努め、成雌牛1頭当たり子牛販売頭数を増加させることも、売上高の向上につながることを忘れてはならない。
図25に診断農家の成雌牛1頭当たり売上高の分布を示した。200千円以上250千円未満及び250以上300千円未満の階層がそれぞれ6事例(31.6%)で最も多かった。平成12年度は前年度5事例もあった200千円未満の階層の事例はなく、逆に前年度になかった350千円以上の階層が2事例あり、高い階層に集中している。
ここで、売上高が350千円以上の診断農家(2事例)を見ると、成雌牛1頭当たり子牛販売頭数がそれぞれ、1.22、1.02と高くなっている。一方は2組の双子の出産(販売)があり恵まれたところもあるが、もう一方は、地域との連携によるET産子の哺育育成に取り組むことで販売頭数を増加させており、今後のあり方として期待される。
家族労働費は生産原価の高低に及ぼす影響が大きいが、家族労働費の算出は各農家の自己申告による労働時間をもとに行っていることから、やや精度に欠けるため、ここでは家族労働費を除いた生産原価について見ることにする。
生産原価(労賃除)は平成5年度(99千円)に減価償却費及びもと畜購入費の減少により大きく減少したが、その後は120千円から150千円の間で推移しており、平成12年度は142千円となっている。
図26に診断農家の成雌牛1頭当たり生産原価(労賃除)の分布を示した。100千円以上150千円未満の階層が8事例(42.1%)で最も多かったが、最大は244千円、最小は−9千円とその差は253千円もあり、経営間の差が極めて大きかった。なお、生産原価(労賃除)が最小の事例は、自家保留牛を評価する手法上の問題で期中飼養牛振替額が大きかったためである。
ここで、生産原価(労賃除)が200千円以上の診断農家を見ると、減価償却費又は飼料費が高くなっており、牛舎の新設又は大型機械の導入又は哺育育成頭数の増大等が大きく影響している。
図27に診断農家の成雌牛1頭当たり経常所得の推移を示した。経常所得は100千円前後で乱高下を示しており、平成12年度は前年度に比べて31千円増加の104千円となっている。
図28に診断農家の成雌牛1頭当たり経常所得の分布を示した。経常所得は100〜150千円の階層が7事例(36.8%)と最も多かった。前年度は経常所得がマイナス(0円未満)になっている経営が3事例(13.0%)あったが、12年度は全くなく、経営の底上げが成されている。なお、経常所得が200千円以上の2事例は、生産原価(労賃除)が50千円以下の2事例であった。