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酪農経営診断のまとめ 平成11年

家族労働力1人当たり所得階層間比較

 調査25事例のデータを,家族労働力1人当たり年間所得で450万円以上を上位階層,200万円〜450万円を中位階層,200万円未満を下位階層として組み替え集計した。
それぞれの階層に属する農家戸数は,上位階層が3事例,中位階層が7事例,下位階層が15事例である。また,上位層はすべてフリーストールシステムの経営であった。
労働力1人当たり所得階層間で経営内容を比較した結果を整理すると以下のとおりである。
 その内容は下表のとおりで,上位階層は経産牛1頭当たり産乳量(8,911s)や繁殖成績(平均分娩間隔13.8カ月)を見ると最も良く,乳成分(平均乳脂率3.71%,無脂固形分率分率8.72%)の関係で乳価が90.93円と低くなっていることと,堆肥などの副産物販売がないため,売上高が831千円と3階層の真ん中に位置しているが,売上原価が647千円と最も低く抑えられているため,売上総利益が184千円,営業利益が99千円と最も高くなっている。また,経産牛1頭当り借入金残高が592.5千円高く,支払利息も18千円と中間に位置してはいるものの,経産牛更新率が16.7%と低いことから経産牛処分損が16千円と少ないために,事業外費用は46千円と最も低く,経産牛1頭当り経常利益が115千円と高くなった。経産牛1頭当たり経常所得は同労働所得が低いため162千円と中間になっているが,労働生産性が高く,労働力1人当たり経産牛飼養頭数が37.4頭と多いことから,労働力1人当り経常所得は6,320千円と中間層の2,979千円と比べて2倍以上高くなっている。
 一方,最下位層は上位層とは逆に,経産牛1頭当たり産乳量が7,886sと最も低く,また繁殖成績も平均分娩間隔が14.1カ月と最も悪く,したがって売上高も772千円と最も低く,さらに売上原価も712千円と高いことから,売上総利益も60千円と低く,営業利益ではマイナス50千円になっている。また,事業外費用と事業外収益との差が18千円と最も大きく,その結果,経産牛1頭当り経常所得が67千円と低くなった。さらに労働力1人当り飼養頭数が16頭と少ないため,労働力1人当りの経常所得も1,945千円と低くなっている。

労働力1人当たり所得階層別比較
単位

全体平均

<200万円 200〜450万円 450万円<
売上高
経産牛1頭当たり  
  生乳販売収入

766,649

731,499

823,245

810,340

子牛育成牛販売収入

25,652

28,904

20,773

20,778

その他

13,708

11,876

23,511

0

806,009

772,279

867,528

831,118

期首飼養牛評価額

92,212

87,393

101,304

95,091

生産費用 経産牛1頭当たり  
  購入飼料費

403,554

414,660

369,274

428,012

敷料費

6,287

4,785

4,305

18,421

労働費

128,114

145,654

123,550

51,064

  うち雇用労賃

10,072

10,721

11,132

4,356

減価償却費

109,759

97,439

127,966

128,880

当期生産費用合計

800,122

823,512

782,729

723,753

期中経産牛振替額

93,195

93,824

94,052

88,054

期末飼養牛評価額

98,613

105,245

90,631

84,080

売上原価

700,525

711,836

699,351

646,710

売上総利益

105,484

60,442

168,177

184,408

経産牛1頭当たり一般管理費

102,889

110,929

93,035

85,684

営業利益

2,595

-50,487

75,143

98,725

 〃 事業外収益

40,511

37,218

38,474

61,731

 〃 事業外費用

51,486

55,228

45,942

45,711

うち支払利息

18,526

23,048

9,175

17,735

うち経産牛処分損

27,899

28,675

31,252

16,195

 〃 経常利益

-8,380

-68,498

67,675

114,745

 〃 経常所得

110,576

67,146

181,578

162,056

当期経常所得

4,856,233

1,945,218

6,302,106

16,037,608

労働力員数

2.67

2.88

2.22

2.70

飼頭養数 経産牛

48.3

44.5

34.7

98.9

育成牛

21.7

20.0

16.1

43.1

生乳生産量

412.1

368.4

305.4

879.4

家族労働力1人当り経常所得

1,949,774

595,075

2,979,463

6,320,664

所得率

13.4

8.7

21.0

19.5

農家総所得に対する酪農部門割合

83.9

76.8

90.9

95.5

100kg当り(家族労賃含む)

8,146

8,666

7,514

7,022

100kg当り(家族労賃除く)

6,671

6,908

6,238

6,497

〃総原価(家族労賃含む)

9,529

10,283

8,652

7,806

〃総原価(家族労賃除く)

8,054

8,525

7,375

7,282

労働力1人当経産牛飼養頭数

18.5

16.0

15.9

37.4

経産牛1頭飼養管理労働時間
時間

132.7

150.7

131.3

58.2

経産牛1頭当たり産乳量
s

8,265

7,886

8,798

8,911

平均乳脂率

3.83

3.78

3.97

3.71

平均無脂固形分率

8.69

8.65

8.76

8.72

平均乳価

92.66

92.66

93.42

90.93

初生子牛販売価格

29,741

28,151

33,743

27,824

平均分娩間隔
カ月

14.1

14.1

14.0

13.8

経産牛更新率

26.1

27.1

28.1

16.7

経産牛1頭当り飼料生産延べ面積

12.3

9.4

22.1

4.0

飼料TDN自給率

9.99

8.18

19.93

 
購入飼料TDN単価

75.67

75.11

77.74

 
乳飼比(育成牛その他含む)

53.0

56.9

44.9

52.8

経産牛1頭当り資金借入残高

483,183

566,309

258,174

592,575

経産牛1頭当借入償還負担額

62,714

69,149

45,682

70,276

自己資本比率

44.5

33.6

69.7

40.3